火曜日の幻想譚 Ⅲ
311.紹介
「なあ、相談があるんだ」
「あら、珍しい。何よ?」
「あのさ、俺の友人に一人、独り身のやつがいて。結婚相手を探してるんだよ」
「ふーん、そうなんだ」
「だからさ、いい子、そいつに紹介してあげてくれないかな」
「いいけど、その人、何の仕事してるの?」
「商社だね。一流企業だよ」
「あら、すごいじゃない」
「顔も、あのイケメンの芸能人に似てるよ」
「へえ、本当に? 身長は?」
「180はあるんじゃないかな」
「なにそれ。当たりじゃない。あたしが立候補したいぐらいだわ」
「まあ、最悪、君でもいいから。女の子に声かけといて」
「何、その言い方。でも取りあえず、分かったわ。あっ、そうだ」
「ん?」
「聞いてなかったけど、その人、性関係に問題があるんじゃない?」
「…………」
「どうやら当たりみたいね。で、同性愛? ロリコン? サディスト? ものによるけど、一流企業勤務なら許容できるって子もいるかもね」
「うーん、それがねぇ」
「何よ、そんなきっついやつなの?」
「彼ね、人柱マニアなんだ」
「ひと、ばしら?」
「そう、人柱にされる女性に興奮するらしくてさ。最近、海難事故が多いから、それを鎮めるための人柱をこっそり募集していて、それに手を挙げてほしいんだって」
「…………」
「だから、結婚したあと、みんなのために人柱になってもらって。そうしたら、また結婚相手募集するみたい」
「え、じゃあ、独身って……」
「今は配偶者がいないってだけで、バツ14。みんな人柱になったよ」