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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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320.サイレン



 知人と議論をする。お互い白熱し、僕らはお互い一歩も引かない。

 そのとき、ふいに聞こえてくる救急車のサイレン。

 友人はニヤニヤしながら言った。

「ほら、迎えに来たぞ」


 うん、分かってる。さっき僕が自分で呼んだからね。

 担架で運ばれていく僕を見つめる、友人の表情ときたら!

 あの顔を見るためだけでも、頭がおかしくなる価値があったってもんだ。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔