火曜日の幻想譚 Ⅲ
347.手がかり
「やーい、おまえの母ちゃん、出ーべーそっ」
「…………」
「やーい、やーい。悔しかったらなんか言ってみろー」
「僕の……」
「ん? なんだ? はっきり言えよ」
「僕の、母ちゃんを、知っているのか?」
「……は?」
「僕を生んですぐにどこかに行ってしまった、生き別れの母ちゃんを知っているんだな!」
「え、えっ?」
「出べそなのか? てことは腹を見たんだな? どこで見た? プールか? 海水浴場か?」
「いや、あの……」
「へそ以外に特徴はなかったか? 髪形は? 顔つきは? 体つきは? 身長、体重は?!」
「……あの、ごめん。俺、用事、思い出したから、帰るわ」
「待てよ! もっと母ちゃんの情報を教えてくれ! 出べそ以外の手がかりをくれよ! おい、行くな! 待てってば!」