火曜日の幻想譚 Ⅲ
247.君に逢いに行こう
眠れなくて深夜に起きだした。真っ先に思い出すのは、君の顔。
コップに水を汲んで、喉へと流し込みながらカーテンをチラッとめくる。今夜は満天の星空、気候もそんなに悪くない。
ここ最近ご無沙汰だし、ちょっと急だけど君に逢いに行こう。
僕は物音を立てないようにして、君との逢瀬の準備をし始めた。服装を着替えて、君へのプレゼントを用意して。そして、深夜にそっと家の扉を開ける。ひんやりした、心地よい風がドアの間から玄関へとすり抜けた。
用意した荷物をトランクに詰め、車を発進させる。誰もいない道路と反比例するかのように、きらびやかに輝く天上の星々。それほどまでにまばゆいのに、ちっとも明るくないこの地上。
車は高速へと進み、長い距離をひた走る。君に逢えるのは、夜更け過ぎになりそうだ。
僕が逢いに来たら、君はどんな顔をするだろう。多分、「あの時」のままの顔でいてくれるよね。
それともすっかり腐乱したぐちゃぐちゃの顔で、僕を出迎えてくれるかな。誰も来ない山奥の廃屋で、めった刺しにされた体で。そんな事を考えていたら、トランクから激しい音がした。プレゼントの間男のやつ、薬が切れて暴れだしたのかな。
もうすぐ愛しいあいつと一緒にさせてやるから、もう少し待ってなよ。