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火曜日の幻想譚 Ⅲ

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248.ナインボールと人生



 ビリヤードにナインボールというゲームがあるだろう。

 ざっくりと言えば、1番から9番までの球を順番に落としていくゲームだ。キスショット次第ではいきなり9番も落とせるが、今それは置いておこう。
 本題はこれからだ。ナインボールとは、人生そのものではないだろうか。やっているとつくづくそう思うんだ。

 なぜかって? 人間は最初、生まれ落ちたときはみんな同じ赤ん坊だ。ビリヤードも最初は全く同じ配置。でも、ブレイクショット一発でどんなふうにも変わってしまう。人生とそっくりだとは思わないか。
 それだけじゃない。球の一つ一つは、それぞれ人生の目標だ。志望校だったり、一流企業だったり、意中の人だったり。そいつを落とすためには、どうやったって手球を動かさなくちゃならない。ジッとしているだけで、それらが転がり込んでくるなんてことはありゃしないんだ。そして、人はそれらを手に入れるために手練手管を尽くしていく。直接がんばったり、いろんな策を講じたり……。こちらも同様に、いろいろと計算をするんだ。球の当たる角度を計算し、突く強さを加減して。

 ここからが重要だ。このナインボールというゲーム、9番を落としたほうが勝ちだということだ。すなわち、1番から8番を落としても、9番を相手に落とされれば負けなのだ。これこそ人生そのものだろう。どんなに成功し栄耀栄華を極めても、最後、高転びに転ぶ例は山というほどある。まさに人の一生を体現していると言っても、過言ではないのではないだろうか。


 実はビリヤードにハマる前にハマっていた麻雀でも同じことを思ったのだが、まあそれは一時の気の迷いだった、ということだろう。


作品名:火曜日の幻想譚 Ⅲ 作家名:六色塔