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堕楽した快落

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自由な精神と飛び越えられない意思と愛

「死にたい、と、思ったことは、ありますか」
何故か、あまりよく認識できない部屋の中で、ただ白と肌色が目の前にあり、それが私に話しかけた。境界線が曖昧で、部屋と人とが融合しているかのようで、その肌色が、人であると色合いから理解できたが、依然、俯瞰した所で、姿形は、空間という水に溶けた水性の油のように、肌色が宙に浮浪しているように見えた。
考えるふりをして、上を向いてみた。三半規管が狂っていなければ、それは上で、部屋にいるのは状況的に把握していて、きっとそれは蛍光灯なのだろう。上に成っている光る果実は、直視するには眩しく、不快な明るさが目を貫通して直接脳内を灯す。
「…。」
何かを言ったつもりだった。何を言ったのか、言った傍から記憶から抜け落ちていた。
「あの、今自分何言いましたか?いや、おかしな話なんですけど、今何言ったか覚えていなくて。」
「ええ、大変失礼な事を。どうしてそんなことを仰る。」
冷たい汗と冷える肩に、どこからか流れ過ぎる風は、薄く滑らかに、優しく私の体温を奪い去っていく。
「すみません。でも、本当に今自分が何を言ったか覚えていないんです。なんなら、今自分と会話しているものが、いえ、あなたはきっと人なんでしょうけど、それが一体何なのかも、よくわかりません。」
何かがこすれる音がした。カリカリカリ、猫が爪を研ぐような高音が。
そう言えば、何故私はここにいるのか分からない。ここがどこなのかも、目の前にいるであろう人間は誰なのかも、記憶があるような、ないような。記憶を遡ってみる映像は、私がやったのは間違いないが、その自覚と感覚はなく、映画を見ているかのように、記憶が自分の意志とは関係なく再生されたかのように。つまり、依然として、何も分かることがなかった。
当たりを見渡してみる。その不明瞭な水の中にいるかのような、モザイクと霧が横行する水生の世界で、檻が、大型犬がやっと入れそうな程の大きさの檻が、くっきり見えた。鉄格子の、少し錆びた檻の中に何かいる。相も変わらず不明瞭で、何がなんだか分からないが、それは、私に話しかけた。
「やあ、悪いんだが、ご飯を寄こしてくれないか。四日も食べてなくてペコペコなんだ。」
私に話しかけたと思わず、振り返ってしまう。まさか、病院と思しき場所に、その一室の中に、と、ここで不図気づいた。もしやこれは夢ではないかと。
ああいや、これは夢だと、そう確信した。そうとしか考えられないからだ。いつの間に寝てしまったか分からないが、夢ならば確かにこの状況は理解しやすい。
と、私が何かを言おうとした瞬間、目の前の不明瞭な肌色が、私に話しかける。
貴方は自分が何をやっているか分かりますか?
作品名:堕楽した快落 作家名:茂野柿