小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
荏田みつぎ
荏田みつぎ
novelistID. 48090
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

天界での展開 (3)

INDEX|5ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

「背に腹は代えられないと言うじゃないか。もしもだよ、誰か他の男が、猛烈にあの姉ちゃんに言い寄ってだな、姉ちゃんもその彼の押しに負けそうになったらどうする? あんた、それでも指をくわえて黙って見てるのか。そして、仕方ない と諦めるのか。そんなのは、本当に好きとは言えない。あんたの方が、姉ちゃんを幸せに出来ると思ったら、決まり事など気にしないで、この際、裸で駆け回れよ。そうすりゃ、あの姉ちゃんも、『秘書さんは、決まりを破ってまで私の事を・・』と、感激すること間違いなしだぞ。」
「そうでしょうか・・」
「そうだよ。」
「・・・」
「何を躊躇しているんだ。裸になれ。妙なプライドやエリート意識など捨て去って、裸になれ。」
「な~んだ、そっちの方の裸ですか・・、安心しました。」
「・・って、あんた、実のところ、実際の裸に自信がないのか? 俺など、筋肉隆々として自身たっぷりだぞ。時に応じて、他にも隆々とする処もある。」
「・・・」
「済まん、落ち込んだか? やっぱり、あんた、色々と自身がないんだな。まあ、気にするな。人には、それぞれ良いところと、それほどでもないところがある。あんたは、誰にも負けない頭脳を持っているんだから。せめて、そこだけは、自身を持ちなさい。」
「今更、慰めても遅いですよ・・というか、ちっとも慰められているという気になれない・・ あ、閻魔殿に着きましたよ。・・もう、タイミング悪く最悪のコンディションの時に着くんだもの・・」
「何を拗ねてるんだ。元気を出しなよ。」
「落ち込ませたのは、あなたでしょう・・ これでは、どちらが審判を受ける身なのか分からない・・」

「秘書室長様、少々手間取りましたが、一二三院四五六居士の破れた袖を繕い、戻って参りました。」
「少々どころではないぞ、純真第一秘書。閻魔様は、審判業務を続けられながらも、何度となくこの死人の名を口にされておりますぞ。」
「誠に申し訳ございません。清廉女史に繕わせに参る道々、様々な出来事に遭遇致しまして、天界大学院の主倍津阿教授や清廉女史の御尊父様、清直様のお手を煩わせる事態も発生致し、もう散々でございました。」
「何? あのお二方の・・?」
「はい、主倍津阿教授の方は、幸いにも私が大学院時代にお世話になっておりましたので、何とか穏便に事が運んだのですが、実は、清廉女史のお宅で斯く斯く然然でありまして・・」
「な、な、何とっ! その様な事態を、この死人が、またもや引き起こしたと言うのか!」
「はい。もう、当事者の桃花は泣きじゃくりますし、この事態は、如何に決まりとはいえど、桃花に取りましては、あまりにも悲惨。私、一命を賭しましても彼女を救済いたさねばと・・」
「う~~ん・・・・ 弱り目に祟り目とは、当にこの事じゃ・・」
「だから、俺に異存はないから。あの姉ちゃんの家でも、そう言ったんだけど。」
「その様に簡単に済む事態ではない! 一介の死人と、三宝荒神様配下の者とが、その様な不始末の結果で夫婦に成るなど前代未聞じゃ! 許されざるべき事じゃ!」
「だけど、天界の決まりだろ? あんた等、法を作っておいて、それを時と場合で解釈を捻じ曲げようと言うのかい? それこそ、許されざるべき事じゃ だろ?」
「・・」
「・・・」
「まあ心配するなよ。あの若い姉ちゃんとの件は、俺の口から閻魔さんに報告するから。」
「どの口で、その様にいとも簡単に言えるのじゃ。」
「この口 だけど。」
「お前の口を指差してどうする! まったくもって、忌々しい・・」
「まあまあ、秘書室長様。この者は、一筋縄では行かぬバカ。お怒りはご尤もですが、あまり怒りが嵩じますと日頃気にしておられる血圧に悪うございます。」
「おっ、忘れておった・・ 急に動悸と目眩が・・これ! 誰か、私の机から抗高血圧剤と鎮静剤を持って来てくれ。尚、水も忘れぬ様に。」
「あ、そこの小走りで去っていく姉ちゃん、俺にも冷たい水を一杯だけ。」
「これっ! お前の所為で薬を飲まねばならぬ羽目に陥ったというのに、場所柄をも弁えず不届き極まりない・・ う、う~・・・・」
「あっ! 秘書室長様! ・・・しっかりなされませ! 秘書室長様ぁ~・・・ 救急車だ! 誰か、救急車の手配を! ・・秘書室長様、気を確かに・・秘書室長様・・」
「そんなに身体を揺すっては駄目だ。血管が切れるぞ。」
「しゅん・・し~・・ あ、あ、ぁぉのころは・・たろもす・・・・」
「えっ? 何と仰ったのですか? 秘書室長様・・・!」
「だから・・身体を揺すっては駄目だと言ってるだろ。『純真、後の事は頼むぞ』と言ってるんだ。」
「そうなのですか? 秘書室長様、その様に気弱な言葉を吐かないで下さい・・」
「救急車が、参りました!」
「・・」
「・・・」
「・・・・」
「・・此処でも救急車は、ピ~ポ~ピ~ポ~と鳴らすんだな。人間界とまったく一緒だ・・」
「当り前です。人間界の多くは、この天界を真似ているのですから・・・というか、あなた、この緊急事態時に、運ばれた秘書室長様を気遣わず、救急車の緊急走行時の警報音に関心を持つとは、一体どういう神経なのですか。」
「そう言われると、そうだな・・ あんた、どう思う?」
「▼□★◎▲・・ 取り敢えず、病で搬送された秘書室長様の事は、医師に任せて御快復をお祈りするだけです。・・・一二三院四五六居士、それでは、只今より私が、あなたを閻魔様の御前に連れて行きます。くれぐれも失礼のない様に。」
「はい、はい。承知致しました。」
「はい は、一回で!」
「は~い。」
「・・・・・」


閻魔と 地蔵


「死人番号JH-183742、俗名、権田権蔵。戒名、一二三院四五六居士を連れて参りました。私は、第一秘書の純真です。本来であれば、秘書室長様が同道すべきでありますが、秘書室長様、のっぴきならぬ事情の為、私が同道致しました。」
「承知致しました。秘書室長、もしくは第二秘書までの同道であれば、規則に沿っておりますので問題はありません。え~と、JH-183742が死人番号で、・・権田権蔵・・そして、戒名が一二三院四五六居士ですね・・ はい、確かに審判申請書に記載通りの番号及び俗・戒名です。只今、審判を受けている死人の審判が終わり次第、審判室へ入って頂きます。暫くの間、壁際の椅子に座ってお控え下さい。・・しかし、この死人、少々面倒な死人ではございませんか?」
「当たらずとも遠からずの感がありますが、どうして、その様な事を訊くのですか?」
「長年この職をやっておりますと、死人番号を見ただけでおおよその性格が当てられる様になるのです。この死人の場合、183742で嫌味な死人とも読めますので・・」
「なるほど・・、当に的を得ておりますね。」
「やはり、そうでしたか。いや~、私、今日は特に勘が冴えておりましてな。この死人番号と、その死人の人相から、扱い難い審判対象ではないかと思った次第です。」
「そうなのか? あんた、凄いなぁ・・その冴えた勘で、ひとつ俺の今後の運勢を言い当ててくれないか?」
「閻魔殿秘書室第一秘書の純真様、この死人の願いを聞き届けても宜しゅうございますか?」
作品名:天界での展開 (3) 作家名:荏田みつぎ