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荏田みつぎ
荏田みつぎ
novelistID. 48090
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天界での展開 (3)

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「へ~~ぇ、そうなんですか。人は、見かけに因らないというか・・ そんなに優秀な方が、何故、自分の好きな人に『好きだ』と素直に言えないのでしょうか。俺は、小学校の頃に、学問は、社会に出て生きて行く様になったら、どんな時にでも必ず役立つから、一生懸命に頑張れと言われた覚えが有ります。俺は、その言葉を信じて一生懸命に学校に通ったのですが、いくら覚えようとしても漢字が書けず・読めずでして、おまけに算数もからっきし駄目で、クラスのみんなからバカ、バカと言われ続けていました。だけど、学校を卒業して土木人足として働き始めると、石積みも穴掘りも誰よりも早く頑丈なものを造れました。そこで、俺は思ったんです、学校で頑張ったお陰で誰よりも仕事が出来る様になった。センセの話は、嘘じゃなかったんだとね。しかしですね、賢い生徒ばかり学んでいる学校始まって以来の秀才が社会へ出て、好きな人に『好きだ』の一言さえ言えないでモジモジしているって、どういう事でしょうか?」
「・・一二三院四五六居士とか言いましたね、あなた。それはね、あなたが、素直に人の言う事を聞いて、その通りに頑張ったお陰です。あなたは、偉い。」
「そうなんですか? 俺は、バカじゃなかったのですか?」
「そうです。世の中には、様々な人が居ます。あなたの様に、ただひとつの事に打ち込んで、例え漢字など書けなくても立派に生きて行ける人。また、力が必要な仕事などには向かないけれど、漢字や語学に堪能で、しかも、あらゆる分野の知識が豊富で、それらを生かして世の為に働く人。どちらも甲乙付け難い立派な人だと言えるでしょうね。ただ、人を好きになって、その人に『好きです』と、平気で伝えられるかどうかは、これまで学んできた学問には関係のない事かも知れません。」
「そうなんですか・・ そうなんですって、秘書さん。此処はひとつ、人生経験豊富な俺がアドバイスしてやるから、な~んにも心配する事などありゃしないぞ。」
「こ、これ・・」
「ところで、俺の袖はとっくに手元に在るだろうな、秘書さん・・」
「あ、久しぶりに教授にお会い出来た嬉しさのあまり、つい忘れていました。それに・・私は、高い処が苦手でして・・」
「しょうがないなぁ・・ じゃあ、俺が、ちょいと木に登って取って来るから・・」
「・・」
「・・・」
「・・」
「ほらよ。取って来たぞ。早速姉ちゃんちに行こうか、秘書さん。主倍津阿センセ、また会いましょう。」
「はいはい、楽しみにしていますよ。では、気を付けて・・」


願う良縁 期せずの縁?


「閻魔殿秘書室第一秘書の純真様、あの白壁の塀で囲ってあるのが、私の家です。」
「なんと、大層ご立派な・・ お父様は、さぞかし重要な職に就かれていたのでは・・?」
「父は、天界総務庁の副庁官を最後に退職致しました。」
「それは、それは・・ 総務庁といえば、如来・菩薩・明王・天部・垂迹の各仏の統括、キリスト教各聖人の統括、イスラム教指導者の統括などに加え、天界・人間界・地獄界の統括という非常に重要なこの大宇宙の要とも云える役所。そこの副庁官とは、なかなかの要職を経験されたのですね。」
「在任中の父は、仕事の内容など殆ど話しませんでしたので・・」
「ごもっともな話です。全ての世の中枢機関ですから、そうそう容易く口に出来る事などありませんでしょうから。私の同期にも、総務庁に奉職している者が居りますが、たまに会っても雑談程度の話しか致しません。」
「あら、同期の方が、父の在籍していた処に・・」
「はい。別の役所に勤める者の話では、なかなかの切れ者で、今の長官様にも気に入られているとか・・」
「そうですか・・ あ、着きましたよ、さあ、中へどうぞ・・」

「お母さま、只今戻りました。」
「お帰りなさい。それで、急ぎの御用に少しは役立ちましたか・・ あら、これは、閻魔殿秘書室第一秘書の純真様、わざわざ娘を送り届けて下さいましたのですか。お忙しいでしょうに、ありがとうございます。」
「いえ、私の方こそ、清廉さまのお手を煩わせる様なお願いを致しまして・・ おかげで大事なく、事を納められました。」
「それは、良うございました。娘で役立つ事が有りましたら、いつでもご用命下さい。まあ、玄関先では落ち着いた話も出来ませんし、主人も少々気にしておりましたので・・あら? ・・その・・あなた方の後ろに立ち尽くしているのは・・まさかとは思いますが・・」
「はい、お母さま、これに居りますのは、死人でございます。これには、色々と事情がありまして・・」
「そうなの・・? まあ、兎も角お上がり下さい。そこの死人・・さん、あなたもついでにお上がりなさい。」
「はい、それでは、ついでに遠慮なく・・」
「・・・」

「あなた、清廉が戻って参りました。閻魔殿秘書室第一秘書の純真様が、わざわざ送って下さったそうですよ。」
「何? 閻魔殿の・・? それは・・すぐにお通ししなさい。・・・これは、これは・・お初にお目にかかります。清廉の父の清直と申します。ようこそお越し下さいました。」
「前触れもなく、突然の訪問をお許しください。また、先程は、急な事とはいえ清廉さまのお力添えを頂きまして、お礼の申し上げ様もございません・・」
「なんの・・、閻魔殿といえば、元来、閻魔様を始め、天界でも最も優秀な官僚が配属される部署。その部署からの御用命を承るなど、うちの娘などで役立ちましたかな?」
「それは、もう・・完璧なお仕事でございました。実は・・お父様が、嘗て天界総務庁にお勤めであったと窺いましたので申し上げるのですが、斯く斯く然然でありまして、緊急の事態でもあり、清廉さまにご無理を承知の上でお願い致した次第で・・」
「そうでしたか・・ それで・・、そこの者が、今、話された死人ですか?」
「はい、左様で・・」
「そうですか・・」
「清直様、何か・・?」
「いや・・、閻魔様が、審判の順を変えてまで、この死人を呼ばれたのは何故かなと・・ふと思ったものですから。まあ、お忙しい職ですから、時には閻魔様も変わり者の審判で気分転換でも図ろうとなされたのでしょう。・・それよりも、折角面識が出来たのですから、今日は、うちで夕食など食べて、娘ともゆっくり話してくつろいで下さい。閻魔殿の秘書室長には、私から連絡しておきますので・・」
「有り難いお言葉ですが、秘書室長も『急ぎ、一二三院四五六居士を閻魔様の面前に』という事ですので、いずれまた、機会がありましたなら・・」
作品名:天界での展開 (3) 作家名:荏田みつぎ