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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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元禄浪漫紀行(1)~(11)

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第七話 江戸の朝ごはん





俺たちはお米が炊けるまで、お茶を飲んでいた。その間に俺は、気になっていたことをおかねさんに聞くことにした。

元禄と言えば、井原西鶴や松尾芭蕉が活躍した年号だった気がする。少なくとも、学校ではそう習ったような…。

「あの、おかねさん、井原西鶴と、松尾芭蕉って知ってますか…?」

もしかしたら一般の人は知らないかもしれないと思ったので、俺の口調はちょっと控えめになった。すると、おかねさんは嬉しそうな顔になって、こう話し出す。

「ああ、知ってるよ。「好色一代男」を書いた人だろ?井原西鶴って。あたしも読んだけど、おもしろいもんだねえ。ああいうのならいいさ。お武家様の話もいいけどね。松尾芭蕉は、えーっと、あたしもこの間初めて聞いたんだけど…」

そう言ってからおかねさんはちょっと考え込んで下を向く。

「松尾芭蕉は…そうそう!元々はお武家に近い家だったそうけど、今では句を詠む人さね。ついこの間も…えーっと、更科…「更科紀行」さ!そんな本が出たんだって、貸本屋が言ってたよ」

貸本屋?貸本屋は確か…家に本を持ってきてくれて、レンタル料…みたいなものを払うと、本を貸してくれる人だったかな?ちょっとあやふやだ。まあいいか。

「「おくのほそ道」は?」

「なんだいそりゃ。それも本の名かい?」

「あ、いえ。なんでもないです…」

もしかしたら俺は、「おくのほそ道」が出る前に来てしまったのかもしれないな。そう思ってその場はごまかした。

「でもさ、お前さん、火の起こし方は知らないのに、本のことは知ってるなんて、変な話だねえ。字は読めるのかい?」

「あ、はい、読み書きはできます」

俺がそう答えると、おかねさんはぱちっと両手を打つ。

「まあ!すごいねえ!じゃあ手内職に写し物なんてできるんじゃないかねえ」

「写し物ってなんですか?」

「知らないのかい?はじめに書かれたものを渡されてね、それを紙に書き写すのさ。そうするとねえ…いくらかはわからないけど、小銭稼ぎくらいにはなるよ」

「へえ、そうなんですね」

そういえば江戸時代には、貧しい武士たちが内職をして、家計をやりくりしていたこともあったと聞いた。「おかみさんが手内職をして」なんて文句を本で読んだこともあったな。

「まあ、今は家の仕事もままならないけど、そのうちにあたしがどっかから写し物の仕事を探してきてやるから、おやんなね。ね、そうおしよ」

「そうですね。わかりました。お願いします」

「決まりだね」

俺は下男として世話になるのだし、少しでもお金も稼いで、おかねさんに助けてもらった恩返しをしたかった。そのやりようがこんなに早く見つかったのは、嬉しいことだ。

「あ、いい匂いがしてきた。お米が炊けるようだよ。薪を入れなけりゃね」

「あ、はい!」