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倫五さんの「ほんのちょこっと街ある記」20/青森、弘前、秋田

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しかしせっかくの弘前なのですが、次の秋田行き特急「つがる2号」は9時50分発、滞在時間は1時間ほどしかありません。

それでも弘前城が駅から近ければ、お城だけでも見たいとの甘い考えを持っていましたが、結構遠かったのですぐに諦めました。私としてはこの地域で人口17万人と聞くと、何となく寄ってみる必要があるのでは…と思うのは自分のサガでしょう。

街そのものは、駅周辺に限って言うと人口の割には小振りの印象で、さしたる特徴も無いおとなしい街並みに見えました。弘前にいる時間が限定されていて、何だか歩く意欲もあまり出なかったので早めに駅に戻って、疲れてもいないのに休憩することに。

そんなことで、弘前市には寄ったうちには入らずに、一応「駅を降りて街に出てみた」だけのレベルでおしまいです。

駅に戻って、エスカレータを上った2階のコンコースにはポツリポツリと数人がいたくらいで駅員の姿も見えません。端っこに5坪くらいの売店があり、秋田駅までの電車の中で飲もうと思って地元の日本酒を購入する時、何とICカードが使えました。

交通機関を利用する時には使用できなかった「交通系ICカード」でしたが、売店では使えたのです。店番の女性に「電車の運賃には使えないのに…」と聞いてみると、「システム導入に費用がかかるからでしょうかねえ。」

なるほどそうかも知れません、全国的に見かけるキヨスクのお店としては、あって当たり前のシステムだったから使えたのでしょう。

店を出る時、ふと駅の通路に飾ってある「弘前ねぷた(ねぶた)」のミニチュア版が目に留まり、弘前にもあるんだ…とネットで検索。
すると「七夕の時期の夏祭り」として青森県全域の市町村でそれぞれ行われており、更に東北〜関東にかけても存在していました。

名称も「ねぶた」「ねぷた」「佞武多」とさまざまで、弘前市は「ねぷた」と呼び、最もポピュラーな青森市より数が数倍も多いとのこと。マスコミに取り上げられるのは青森市のお祭りがほとんどなので、てっきり青森市オンリーかと思っていたのは私だけではないでしょう。

そんなことを調べているうちに「つがる2号」がホームに入って来ましたが、乗り込む客は数人しかいない状況でした。



◆秋田市(人口 約31万人)

その路線は奥羽本線、その昔は利用者も多かったと思われる複線で、もちろん新幹線は通っていません。3時間に1本の運行だというのに私が乗った時は1両に数人の客しか乗っておらず、月曜日だったとは言え絶対的に乗客不足ですね。

弘前駅から秋田駅まで特急で約2時間、途中の停車駅はすべて通過したので乗客数は変わらなかったでしょう。車窓からの景色も変化は乏しく、180mlの日本酒をもう1本仕入れておけば良かったと思うほど久しぶりにヒマな時間でした。

車窓の景色も殆ど変化もないので、仕方なく五木寛之著「大河の一滴」の単行本を読みながら30分ほど過ごすうち、列車のアナウンスが秋田駅に近いことを知らせてくれ、一人ぼっちの状態がやっと終わって秋田駅に到着です。

電車から降りて見えた秋田市の街の景色は「結構賑やかな街並み」に見えました。駅の構内は多くも少なくもない人出、改札を出たコンコースでは1,5mほどのでっかい「なまはげ」のお面が2個並んでお出迎えです。

その秋田駅は割と近代的なイメージで、駅の2階から幅広い屋根付き通路が駅前広場を跨いで長さ70〜80m位先まで通じています。
通路の途中から駅前バスセンターなどに降りる階段が3〜4本ほど下がっていて、それにも屋根が付いているのは降雪対策かも知れません。

秋田駅周辺を見た時、そこそこ賑やかな街があるのに、あの列車の乗客の少なさは何だったのか全く信じられない気持ちでした。ただ、令和2年10月時点では新型コロナウイルス感染の懸念が高かった頃でもあり、その影響があったかと思われます。

東北地方では(もちろん仙台市は別として)秋田市が最も都会的な雰囲気があり、駅前広場の芝生などは街の形に余裕を感じさせました。
駅前からの大通りを歩いてみましたが、右側にはいきなり幅50〜60mはありそうなお濠が300mほども続いています。

秋田城とはあまり聞かないので何だろうと思ったら「千秋公園、久保田城跡」となっていて、昔は城郭と言うより城柵だったようです。さらに歩くと一部ではありましたがやたら広い道路があって、全国の他の都市を思い出しても人口40万人前後の都市に匹敵するように見えます。

人口約31万人と言えば盛岡市とほぼ同じですが、街中を歩いた限りでは私の眼には秋田市の方が少し都会的に思えたのは確かです。
それまで私が持っていた東北地方の街のイメージは、何となく曇り空が多くノンビリした街並み…でしたが、それは間違いでした。

私が見た限りでは、近代的で明るいスマートさを持ち合わせたような秋田市の市街地は、私の先入観を覆しました。短い距離ではありましたが、中心街には大都市のような片側5車線もあるような広い道路が存在したのはインパクトがありました。

それでも、月曜日だったためか街を歩く人は少なめで「器に比べての活気がやや不足」したのは仕方ないことでしょうか。
秋田と言えば「竿灯まつり」がつとに有名ですが、しかし青森ねぶたのように展示するようなものでもないようで、やっぱり地味のようです。

秋田駅から2kmほど離れた県庁や市役所の建物を見に行きましたが、逆に言えば他に見てみようかと思う素材が無かったとも言えます。丁度新しい首相に交代する時期で、9階建ての商工会議所の建物側面に「祝、菅内閣総理大臣…」の垂れ幕が懸かっていたのはご愛嬌。

ネットの中では全国の色々なランキングがありますが、「住み続けたい都道府県ランキング2020」で残念ながら最下位となったのが秋田県です。「住んでみたい」ではなく「住み続けたい」のアンケートですから、これは地元住民の声と思って良いのでしょうか。

まあ、こんなランキングは信用出来るとは決して思いませんが、例え一人よがりの記事だとしてもあながち間違っているとも思えないから不思議です。
東北6県で見ると、15位/宮城県、21位/岩手県、26位/福島県、38位/青森県、40位/山形県、そして47位/秋田県。

確かにそう言われれば、秋田県は冬期の厳しさや産業の希薄さなどから感じられる寂寞な部分が少なからずあるような印象です。(佐賀県も45位と低空飛行なので、他人ごとではありませんが…)

それでも日本の国民に「全国で思い出す県の名前は何ですか?」と尋ねてみると、秋田県は佐賀県などよりずっと早く出てくると思います。
秋田市はそれなりに存在感があるのに、やはり弘前から秋田まで特急に乗った時の寂寥感はどうしようもない現実でした。

そうは言っても私にとって秋田市に行った甲斐があったのは確かで、80%ほどは内心満足して秋田駅バスセンターから秋田空港へ向かいました。
他のローカル空港と同様に秋田空港から福岡空港へのJALの直行便は無く、羽田空港を経由、羽田で約40分の待ち合わせで福岡行きの便を利用しました。