倫五さんの「ほんのちょこっと街ある記」18/鳥取、松江、出雲
そんなことを思いながら1時間30分ほど砂の上を歩いてみたのですが、その砂はほとんどが日本海からの風に吹かれて集まったようです。加えて陸地から流れてくる砂もあり、砂質は一般的な海水浴場の砂浜と同質のように思えました。
砂丘の入口付近から見て馬の背のように小高くなっている場所に行ってみると、少なくとも私にとって登るのに一苦労。高さも数10mあったでしょうか、草スキーならぬ砂スキーも出来るくらいの傾斜で、さもありなん…です。
ところで砂丘の端っこで、観光客を背に乗せたラクダが5?6頭、引き手と一緒に1周100mくらいを歩いています。利用料金はどのくらいでしょうか、観光客が20人ほど順番待ちをしていたので結構な稼ぎになっていたでしょうね。
砂丘では結構歩いたイメージがあったので万歩計を見ると7千歩ほどになっていました。あの砂地を数千歩も歩いた訳で、満足感は確かにありました。
訪れた時期が9月だったので、もう少し人出があっても良さそうですが、砂丘博物館以外は思ったより人出は少なかった感じです。交通手段も限られているようで、砂丘を除けば他に立ち寄ってみようと思う場所も思い付かないのは現地にとっては少し惜しいですね。
ところで、鳥取県としては日本で人口が少ないことを逆に自慢しても良いと思います。
「人口が一番少ない県 → 鳥取!都会の雑踏に飽きたら鳥取へどうぞ!」をアピールしましょう。
その時の行き先が何と言っても砂丘です。少々の交通の不便さはかえって旅情の糧になります。そんなことを考えながら、お土産屋さんの駐車場からそのまま松江市へ向かうために、また国道9号線に戻って車を走らせました。
鳥取砂丘は確かに日本では広い砂地で、大山や三朝温泉などは思い出さなくても、鳥取県観光の目玉として砂丘の存在は大きいと思います。
やはり鳥取県の財産として維持してもらい「鳥取=砂丘」のイメージをより強調したいですね。実は全国にも鳥取砂丘クラスの規模の大きい砂丘は10ヶ所ほどもあるらしいのですが、他とは比較出来ないほど有名なのですから。
◆松江市(人口 約20.5万人)
今回の山陰行きのメインは、やっぱりずっと気になっていた松江市です。
人口こそ20万人そこそこですが、ネームバリューはもちろん魅力的な風情もあると思っていたので、街の規模に関係なく早く経験してみたい街でした。
特に宍道湖の夕陽や松江城周辺の遊覧船などは出色でしょう。
近くには出雲大社(いずもおおやしろ)もあり、ヤマタノオロチや因幡の白ウサギ伝説など、神話の里のような日本古来の場所でもあるのです。
鳥取市を後にして1時間ほど、国道9号線沿いの日本海を見ながらお昼頃に到着した松江市、有名な宍道湖ばかりでなく隣り合わせで「中海」があります。地図を見ないで通りかかると、中海はつい宍道湖と勘違いしそうな広さがありました。
まずは松江城周辺にナビを設定、割と都会的な一部立体交差の道路を経由して松江城のお堀周辺へ。その途中に「出雲そば」の看板もチラホラ見えて、何となく名物かも…と思わせます。
松江城のお堀を回遊する観光遊覧船乗り場が数ヶ所、その中でお土産も置いてあるような木造2階建ての施設があったので、その付近の市営駐車場に車を停めました。
そこで堀割の一部が見える2階のレストランで昼食です。
その建物のそばの乗り場から、期待感を胸に待望の「松江城堀川めぐり遊覧船」に乗船です。柳川のどんこ船と違って船外機付きの船で定員は10?12名ほど、頭上に鉄製パイプに支えられたビニール製の幌が付いています。
乗船すると間もなく、船頭さんから「全3.7kmのコースのうち、16ヶ所の橋の下を通過して、そのうち4?5ヶ所は幌を下げて通過するので協力をよろしく頼みます…」とのお願いがありました。
実際に橋の下を通過するときは船頭さんが電動で幌を下げるので、乗客は強制的に背をかがめて橋を通過するのですが、これが結構きつかったかも。
松江城が見え隠れする堀割の風情の中、松江市街地(城下)を一周50分ほどで周遊するのは確かに非日常的です。途中3ヶ所の乗船場のどこで乗降しても良く、チケットさえあれば他の遊覧船にも再乗船出来るのは良いシステムですね。
さて、私にとって宍道湖の夕陽と並ぶ目玉としていた観光遊覧船も2時間ほど経験したので、何となく満足して予約していたホテルへ向かいました。
途中の松江市内の景観・規模は人口に見合った街並みで、市街地が川沿い(水辺)にある分、街にしっとりした風情があります。
さて、前日の鳥取市では結構グレードの高いホテルだったので、松江市でも同レベルのホテルをネットで予約したつもりでした。良さそうなホテルの名称でもあり、予約時は写真の見た目も良くてGotoトラベル利用でリーズナブルに泊まれると思っていました。
しかし、着いてみてビックリ!考えられないほどの質素なホテルで、フロントなどは安宿の受付…のイメージじゃないですか。値段も安くはなかったので、どう考えてもネットに騙された→と言うか、私が失敗した例として残るほどのショックでした。
他に宍道湖畔のリゾート風ホテルが数軒もあったのに、何故か「室内に温泉バスタブあり…」の謳い文句に惑わされました。まあしかし自分のミスなので、少なくとも食事だけは「きちんとしたお店で摂らないと」妻に顔向け出来ません。
ホテルに着いたのが午後4時頃、幸いその日は雲が多いものの30?40%くらいは晴れ間が見えていました。そうです、言わずと知れた「宍道湖の夕景」は良くも悪くも天候次第、もしかしたら人生たった1回のチャンスかも知れないのです。
そんな中で、日没までには2時間近くあったので、少し市内の街並みを散策しながら30分ほど歩いて松江駅へ。そろそろ夕方だったこともあり、駅前付近は何となく賑やかさがあって「街の雰囲気」がありました。
松江駅は人口に対しても丁度良さそうなサイズで、鳥取駅も同様でしたが割と小奇麗でスマートさが感じられます。今回の山陰行きは車利用なので、鉄道の運行状況はよく分かりませんが、乗降客はそんなに頻繁ではなかったようです。
松江駅から宍道湖畔まで徒歩10分ほどの距離、陽が陰ってきそうな時間まで駅構内で地元のお酒などを頂きました。地元産のお漬物などを肴に、妻と一緒に立ち呑みで地酒をお猪口に分けて数種類ほど楽しむうちに、そろそろ日没が気になって来ました。
はたして希望通りにうまく宍道湖の夕景を見ることが出来るのでしょうか。駅前で見上げた空を見る限り、60%ほどの曇天のようにも感じられて一瞬「あら、無理かな?」
それでも少し早足で宍道湖畔へ歩くうちに、何となく夕陽のイメージが西の空に広がっていました。歩いて行くうちに目の前にはもう半分くらいの夕焼け、それも調整したかのように横になびく雲と雲の間にはオレンジ色の太陽です。
作品名:倫五さんの「ほんのちょこっと街ある記」18/鳥取、松江、出雲 作家名:上野忠司