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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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愛しの幽霊さま(1)〜(5)

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「ねえねえ雪乃。最近帰りはいつも一人で早く帰っちゃうし、もしかして彼氏とかできた?」

「えっ…」

急に前の席に友だちの舞依が座って、出し抜けにそんなことを言ってきた。それも、けっこう大きな声で。

私はもちろん時彦さんのことを思い出した。でも、彼氏じゃないし!

「でっ、できてないよ!全然!」

すると舞依はにやにや笑いながら私を指さして、くるりくるりと指を回した。

「あやしー。隠してないだろうなー?」

「隠してない!何も隠してないよ!」

私は慌てて両手を振った。

「でも好きな人はいるもんねー」

「まあ…って!いないってそんなの!」

私は、不意に舞依が言ったことに、思わず素直に答えてしまった。

「あー、やっぱり好きな人はいるんだ。へへ、どんな人なの?」

舞依はほとんど騙し討ちとも言える方法で聞き出したことを、さらに掘り下げようとする。

「もう!いないってば!」

「だってさっき「まあ」って言ったじゃん。ねえねえどんな人?どこのクラス?」

そこで私ははっと正気に返る。

時彦さんって、そういえば「幽霊」、よね…。それを好きになったなんて言ったらきっと心配されるし、それに、叶うはずがないのも、私だってわかってる…。

「どしたの?うまくいきそうにないの?彼女いる人とか?」

私がちょっと落ち込んでたことに舞依は気づいたのか、なぐさめるように声を掛けてくれた。

「ん、なんでもない。ほんとに、いないから…」

私のただならぬ雰囲気に舞依は何かを察したのか、「わかった。なんかあったら言ってね」と言ってくれた。



叶うはずないって、わかってる。ちゃんとわかってるから、大丈夫。