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端数報告4

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  充分なだけの食糧を置き、片手だけに手錠を掛けて何かに繋いで去ればいいじゃん。
 
 
という話じゃないか。そこに思い至ったならばこの著者の考えはまるでスジが通らなくなる。
 
そうは思いませんか皆さん。見せたように警察庁の元幹部という人も、
《カネを取るつもりなら〜すんなり逃がすようなことはしない》
と言っているという。でも逃がしてる、明らかに。カネを奪る気はなかったということ。おれの考えが正しくて、この著者の考えは間違いということ。その理屈にはならないでしょうか。
 
見せたようにこの本の著者は続けて、
《キツネ目の男にとって、多少なりとも計算外だったのは、江崎社長が完全なマインドコントロール下にあると高を括っていたこと》
と書き、
《予定ではあと半日、江崎社長は水防倉庫でおとなしくしているはず》
との前提で勝久氏脱出の1時間後にそうと知らずに脅迫の電話を掛けていると書く。この著者はこれを根拠に〈警察庁元幹部〉氏やおれと違って、〈キツネ目〉はこのときカネを奪る気でいたとしている。
 
この著者の言い方で言えば、
《マインドコントロール下でカネを払わせる》
考えでいたのだと。ふうん。しかしここでひとつ、これを読んでるあなたに重要なポイントがあるのを思い出してほしい。
 
あるいは、おれの〈プロレス説〉をまだ読んでないならぜんぶ読んでからここに戻ってほしい。そこに念頭に置いてほしい重要なポイントがひとつあるのだ。念頭に置いてほしいポイントなので念頭に置いてほしいのだが、何かと言えばそれは〈彼ら〉の要求が、このときは、
 
 
   【現金十億円と100キロの金塊】
 
 
だったということ。それ、本気で奪る気でいたのか? その疑問があるというのを思い出してほしいのである。
 
で、おれはこの点について、
「いや、まさか」
という考えなわけだ。これが本気ってのはないだろ。それにあらためて、〈警察庁元幹部〉氏のおっしゃる通り、本気だったとしたらあまりに監禁の仕方がおざなり過ぎる。
《徹底した監視下に置くか、殺すのが普通》
その通りですよ。だから、
《マインドコントロール下でカネを払わせる》
なんていうのはバカらしいと思うわけです。
 
この〈警察庁元幹部〉氏というのがどんな人かはわからないけど読む限りでは、おれと話が合いそうだな。さらにウィキには、
 
   *
 
(略)現金10億円は高さ9.5メートルで重量は130kg、これに加えて金塊100kgでは運搬が困難であり、合同捜査本部ではどこまで犯人グループが本気で要求していたのかいぶかる声もあった(略)社長の母や社長夫人が犯人に対して「お金なら出します」と言ったにもかかわらず「金はいらん」と犯人が答えたこと、身代金誘拐が目的なら抵抗される可能性が少ない7歳の社長長女を誘拐するほうがリスクが少ないのにわざわざ成人男性である江崎を誘拐していることなどが身代金目的の誘拐としては不可解(略)
 
   *
 
と書いてあったのも思い出してもらいたい。おれはやっぱりこのとき〈彼ら〉は、カネを奪る気はなかったと思うね。勝久氏が早く逃げたのは計算違いだったかもだが、別に気にしなかったんじゃないか。
 
あらためて〈警察庁元幹部〉氏のお言葉を文字に起こすと、
 
「かりに、人質を担保にカネを取るつもりなら、江崎社長の拉致に成功しながら、水防倉庫にひとり残し、すんなり逃がすようなことはしない。徹底した監視下に置くか、殺すのが普通です。じっとしている時間を30時間と切ったのは、わざと逃がすつもりだったということでしょう。最初から逃がすことを予定していたのだから、グリコヘの恨みで起こした事件でもない。一般的に事件というのは、難航し捜査幹部が悩むと怨恨説を採用したがる。深読みしたくなるんですね。ですから、幹部が頭を働かすと、ろくなことにならないんです」
 
か。素晴らしい。この人に拍手です。よろしければ皆さんもここ、繰り返して読んでください。
 
が、続いて、 
《警察庁元幹部のこの見解は、しかし合同捜査本部で共有されることはなかった。その後も事あるごとに怨恨説が浮上し、犯人像の絞り込みの妨げになっていくのである。》
とある。たぶん、
 
画像:四方修そんなの全然ダメや
 
こいつが、何かにつけて「怨恨」と言った。そりゃーろくなことにならんわ。
 
画像:四方修そんなばかなことあるわけない
 
うるせーんだよ。で、しばらくは何事もないが、13日が経った4月2日に第二の脅迫が来る。
 
ウィキにあった、
 
   *
 
1984年4月2日、江崎宅に差出人不明の脅迫状が届く。内容は4月8日に指定場所へ現金6000万円を持ってくるよう要求。脅迫状には塩酸入りの目薬の容器が同封されていた。4月8日に現金受け渡し指定場所に警察が張りこむも、犯人は現れなかった。
 
   *
 
これだ。おれはこれだけでは便乗犯のように思えたから「便乗犯じゃないの」と書いたが、『キツネ目』を読んで初めてわかったことに手紙には、監禁の際に勝久氏の声を録音したテープが同封されていたという。だったらそう書いといてくれよう。ウィキのまとめ人さんよう。
 
だが誤りは認めよう。それならば〈彼ら〉の仕業だ。しかし、にしても【十億プラス金100キロ】がいきなり【6千万】。誰が値切ったわけでもないのに。
 
ううむ、と考えてしまう。どう判断したもんだろな。
 
やっぱり最初の十億プラス金100キロは本気じゃなかったとあらためて思うが、ではこいつは本気なのか。
  
わかんねえな。既に裏取引でカネを得る目的にシフトしている気味はあるけどどこまでなのか、それがわからん。それにこいつは、本気としてもジャブかフェイントだったんじゃないか。
 
〈さぐり〉のための脅迫じゃないか。軽く一発パンチをくれてやってみて相手がどう出るか見ようとしたんじゃないか、という気がする。ここには見せぬがこのときの脅迫文はかなり長くて一行一行が拳骨をえぐり込むように打ってる感じ。一発、二発、三発とね。どんなものか知りたければこの本を買うか図書館で借りてください。
 
アフェリエイト:キツネ目
 
この本の著者はその手紙で〈キツネ目〉は、
《江崎家の人々の恐怖心をいっそう煽ろうとしたわけだ。》
と書いている。でもねえ、おれが読むところ、ジャブかフェイント、ボクシングの本当の試合開始直後の相手の力を探るためのパンチなんじゃないかと思うような文面なんだな。右手じゃなくて左手を出してきてる感じなんだな。
 
〈彼ら〉は敵を一発のラッキーパンチで倒せるなんてムシのいいこと考えてない。だからまずはジャブを放つ。この〈第二の脅迫〉はそれだ、と、詳細を知ってみてそんなふうに感じるのだが。
 
アフェリエイト:キツネ目
 
あらためて、そういう意味ではお勧めかもしれない本です。ウィキにある通り、
《4月8日に現金受け渡し指定場所に警察が張りこむも、犯人は現れなかった。》
わけだがしかししかし、その一方で――というあたりはかなりおもしろかったがここには書かない。で、その2日後の、
 
   *
 
作品名:端数報告4 作家名:島田信之