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端数報告4

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しない。関係なんかしない。コロナは〈人類虐殺キャンペーン〉をしてるわけではないのだから、一千万枚の応募ハガキのどれ一枚としてキャンペーン事務局の住所は書いていないのだ。だからコロナには届かぬし、コロナは人がそんなことしているのを知りもしない。誰かさんがまったくバカげた思い違いでデタラメなことをしているのだが、その誰かさんがwhoなので、「世界保健機関ともあろうものが間違いをするわけがない」と勉強のできる人間が考え信じて疑わないので累計数が上がることで必ず〈波〉が来るということになる。
 
一億人が死んでくれるということになる。ウイルスとは別にこういう、
 
画像:ヤマト復活編2 実写ヤマト2
 
もんではないということがわかっているつもりでいてもわかってない。世界中のインテリゲンチャがみんなそうなってるわけだ。WHOが完全に狂っちゃっていることに気づく者がいないから。でも「累計が○千万人になりました」なんて言ってもそれが明らかにかさました数で、コロナの変異の確率に何も関係しないだろうと言うしかないならテレビで学者が言うことは全部間違いと言うしかあるまい。
 
画像:トランク
 
正しいのはこのトランクを当てたおれの考え方だと。マゼランが地球が丸いと実証してから20年後にコペルニクスが地球の方が太陽のまわりをまわっていると唱えた。その100年後にガリレオがコペルニクスの言ったことが正しいと唱えた。
 
当時のインテリはその主張に激昂したが、今では誰でも地動説が正しいと知ってる。
 
そしておれがコペルニクスでガリレオだ。間違ってたらトランクはここにないのだからガリレオなのだ。ガリレオ〜、ガリレオ〜。いずれおれの地動説が正しいとわかる時が来て、マスクや密を避けるだなんてことにほとんど効果はなく、やらなくってもたいして変わらなかっただろうという話になる時が来る。本気で信じていた人間は恐怖支配者なのだったと。
 
自分の心が恐怖に支配されているから他人を脅しつけていた。フィリピンにいる〈ビジランテ〉とか呼ばれる私兵と何も変わらんやつらだったと。
 
そんな話になる時が来る。実はたいした死者数でもないものを大げさに述べ立て、老人を楯にした。しかし誰もマスクなんかしなくても老人や抵抗力が弱い者が死ぬ数に大きな違いがなかったとなれば一切が無意味なのだ。
 
そんな話になる時が来る。悪性の風邪がはやって例年よりも多くの死者が出ること自体は地震や火山噴火によって人が死ぬのと同じだから、マスクによって減らせるわけじゃなかったとなってしまったらダメなのだ。
 
それがわかる日が来るよ。いずれね――と、そんなところで前回に、朝日新聞の日曜刊に週ごとの検査人数と陽性率が載ってるという話をしたがその続きだ。去年7月と11月で、東京の妖精の割合が6.5パーで同じだった。
 
でもって再三、おれはここで、去年の春にテレビで一度、
「おとといは6パーセント。きのうは7パーセント。一日で1パーセントの増加です! これが10パーセントになったときに〈波〉が来るのですが、あと3パーセントしかない。このままでは今日に8パー。あした9パー。あさってに〈波〉が! 〈波〉があ――っ!!」
とわめくやつがいたのを見た話をしてきた。細かいことはおぼろげだが確かにそんなふうに言ったんだよと。
 
うん。前回にもしたが、出した後でこれについて、「待てよ」とおれは思ったんだ。あのときあいつはああ言ったが、1パーセントの上下なんか起きて当然の誤差の範囲内だろう。つまり月曜に6パーセント。
 
火曜日に7パーセント。水曜日にも7パーセント。
 
だが木曜に6パーになり、金曜にまた7パーになり、土曜日にまた6パーセント。
 
週平均6.5パー。あのとききっと本当は、そんなだったに違いない。去年はずっとそうやって、一日ごとでは6と7とを行ったり来たりしてたのかな。
 
と思ったわけである。8・9・10月のデータについてはまったく見てもいなかったんだが、ハテどうなっているんだろうか。
 
「そうね。割合を見なければ、本当のことがわからないわ。それがすべて。でもあの重たい本をめくれば一目瞭然なのよ」
「シンプルだな」
「愛ってシンプルなものよ。さあ行って。自分の眼で確かめるの」
 
というわけでまたカメラを持って図書館に行き、縮刷版をトイレの中に持ち込んだ。8・9・10月のそれぞれ月末分を見ると、
 
画像:8 9 10月のデータ
 
こうだ。8月が3.5パー。
 
「え――っ!」
と思った。なんだよなんだよこの数字は! 拡大どころか前月から大幅下落しとるやんけ! でもって9月に3.7。10月末に4.0か。
 
ううむ。しかし前回おれは、検査人数は7月に日に4000人、8月に4500、9月に5000、10月に5500といった具合に増やしていたんだろうかと書いた。
 
書いたが、どうやらこれを見るに、そんなわけでもなかったようだな。妖精の数が減ったり横這いしているときは変えずそのままいくけれど、増えるとより大きな数を出そうとして検査態勢を上げるのか。
 
「感染爆発」と言うために。そういうこともキッチリと週ごと・月ごとに見ていくとわかる。イカサマをやってた証拠が見る見る積み重なっていくねえ。
 
が、それよりも8月の分だ。8月の末と言ったら死者・重症者の一時的増加で、
「第2波です! 第2波にこれは間違いありません!」
とわめいてた頃やんか。
 
あのとき実は妖精の数は、増えるどころか減っていた。テレビのニュースじゃ感染爆発の結果ということになってたはずだが、それが嘘なのはこの数字を見れば一目瞭然だ。これはどういうことなのか。
 
って、もちろんまあやっぱり、おれが再三書いてきたことが正しかったんじゃないのかね。去年の夏は7月が雨降り続きだったのが8月になって特に後半がやたらに暑く、夜になっても気温が下がらない日々が2週間も続いたのだ。憶えてますか。そして〈第2波〉と呼ばれるものはそれとピッタリ重なっている。
 
熱帯夜になった翌日テレビが患者の大量発生を叫び、9月になって終わった翌日、
「死者・重症者の数がいきなり元の数字に戻りました。不思議です。不思議と言うよりありません」
と言ったのだ。おれは初日から、
 
「いや。ゆうべはもんのすごく暑かったから、きっとクーラーをガンガンにかけてハダカで寝ていたようなやつらが風邪を発症させただけだろ」
 
と考えてたのでテレビの中で「ウイルスは一体何を企んでいるのでしょう」と言ってるやつらをただ「バカ」とだけ思って見てたという話をここで再三書いてきた。
 
妖精の数が減ってた以上、おれのこの考えがやはり妥当とする以外にないんでねえの。そしてこのころ、3.5にまで減少してた理由だが、それも暑さのせいではないかな。
 
暑さと言うより日照りじゃないか。カンカン照りの陽射しによって日光消毒されるため、屋外での感染が広まりにくい状況にあった。それで妖精の割合がこんなにまで小さくなってた。
 
作品名:端数報告4 作家名:島田信之