端数報告4
また2次会で、私が同級生の女性とカウンターに並んで話していたら、突然異臭が。そう、このあと対談に登場する時間測定世界記録男が近づいてきたのだ! 彼は私と彼女の間にニュッと頭を突っ込み、私に後頭部を見せて機関銃のように口説き始めたのであった。
画像:空想科学論争!表紙
という経済産業省の学者の話を紹介したが、これもまぎれもなくナードだ。
柳田理科雄が女と話しているところにいきなり割り込み機関銃のように口説き始めたというけれど、その話の内容は、実験物理学であろう。ねえキミ、実験物理学者の数値に対する執念が凄まじいのは知ってる? まあ知らないだろな。電荷を帯びた物体の間に働く電気力の大きさは、重力と同様に距離の2乗に反比例するんだ。クローンの法則と呼ばれる基本法則だが、本当にピッタリ2乗なのかという問題に、数多くの学者たちが取り組んできた。第1号は、ほかならぬクローン自身だ。自分で作った法則を、自分で疑ってどうする!?というのは日常的な感覚であって……。
なんてなことをベラベラとまくしたてて自分では、これでこの子は自分を好きになるに違いないと思ってる。
「こ、この人は、クローンの法則なんてものに詳しいの? すごいわ!」
と思ってくれると思い込んでる。そしてもちろん、このとき彼は、目の前にいる女は処女と信じて疑っていない。
もしも違うなどと知ったら、
「キミという女には貞操観念というものがないのか!」
と、そもそも相手の名も知らんのに怒鳴りつける。そういう人間をナードといい、それが大半を占めているのが学者の世界なのだという。
ユナボマー事件の犯人、セオドア・カジンスキーももちろんナードだ。IQは知能を測る物差しとして優れたものではないと言い、勉強ができることは頭がいいことに必ずしもならない。ウィー・ウィル、ウィー・ウィル、ロック・ユー。この歌の作詞作曲はブライアン・メイということだが、その事実を本人を目の前にして初めて知った人がいれば――って、おれも映画『ボヘミアン・ラプソディー』を見てこないだ初めて知ったわけだが、
「え? あれをあなたが?」
と誰もが尊敬の眼(まなこ)でもって見るだろう。
でも〈フェルマーの定理〉とか〈クローンの法則〉だとか言われても何がなんだかわからない。「それをやったのは自分だ」と言われたとしても、
「はあ」
としか返事の返しようがない。人と話しているところにいきなり頭を突っ込んでこられ、
「人類は現在、時間を1兆分の1秒まで計ることができるんだけど、それはこのボクが達成したことなんだよ。世界最先端」
なんて言うやつは気味悪いだけだ。おまけになんかこの男、アタシのことを処女と思い込んでいるらしいのが見てわかる……。
というような状況は、女だったらかなりイヤな状況でしょう。
エリート意識に凝り固まっているけれど、世の中に認められてない人間は厄介な人間になりがちだ。自分がやった仕事の話を普通の人間にしてみても相手にとって退屈なだけ、というのがわからない人間がナードなのであり、「この女はこれだけ話してどうしてオレがすごいことがわからないんだ」と不満を募らせる。「芸能人やスポーツ選手なんかよりオレの方が偉いんだ」と不満を募らせる。
新聞も読まないあたしでも、と歌って25年ほど前に流行ったのはマイ・リトル・ラバーのなんとかって曲だが、同じ頃にエリート意識をこじらせた人間が集まり世に毒ガスを撒いたのがオウムという宗教だった。新聞を読まない人間でも、テレビを見たり街を歩けば時のムードというものはわかる。テレビの中では学者先生が学術用語を並べ立てて「波が来る波が来る」とドヤ顔で言い、女子アナなんかが「ああ、すごいわ、この先生。尊敬しちゃう」という顔をしてウンウンと首を頷かせ聞いている。見たとこまるで男を知らない処女という感じである。
その一方で街は落ち着き払っていて、マスクを着けて歩きながらもほとんどの人は、
「どうもなんだか、話の全部が消防署の方から来た者だと言うやつに消火器を売りつけられているみたいだ」
という顔してる。
「だからワタシはコロナワクチンを接種します」「ハイ、ワタシもコロナワクチンを接種します」
とテレビは言うが、ああいうのは見る者に、
「そのワクチンは射たなくていいし、射たない方がいい」
と言うのと同じだということが、勉強ができるやつほどわからんのかな。
というような顔してる。それが街を歩くとわかるが、そのまたまた一方で、図書館まで行くと働いている全員が、『マンハント:謎のなんだっけユナボマー』に出てきた図書館員と同じで勉強はできそうだけど頭はカラッポとわかる顔だ。オウム教徒が麻原彰晃を信じるようにコロナを信じて疑ってない。おれは棚から一冊の本を取って借りてみた。
カール・ジンマー著『ウイルス・プラネット』(飛鳥新社)というものだが、スキャンして見せよう。
画像:ウイルス・プラネット34−35ページ
画像:ウイルス・プラネット表紙
こんなことが書いてあった。インフルエンザで毎年25から50万。アメリカで3万6千人が死んでる、か。なるほど。おれはこれまでに、このブログで毎年百万人ぐらい普通に風邪で死んでんじゃねえのかと再三書いてきたけど、これが実際の数字か。
おれが思ってたより少ない。だがともかく、これが求めていた情報と言える。25から50万ってのは、ウイルスのタチが悪い年に50万。そうでない年に25万てことだろう。〈世界〉というのはアフリカなどの第三世界も含むのか、といった疑問も感じなくないが、ともかくも、例年の数字を知ることが重要なのだ。それがわからなきゃ何もわからん。おれはずっとそう書いてきた。
コロナの死者数が多いか少ないか、例年との比較で見なければわからない。おれはずっとそう書いてきた。だがテレビは決して言わない。〈旧型肺炎〉で年に何人が死んでいたかを決して言わない。
だからこれまでゼロだったのが、急に10万・20万と人が死に出したような報道になる。月に5万が死んでいたのが10万になったと言うならそれは倍で、まあ大変なことかもしれぬが本当に〈禍〉と呼ぶほどのものなのか疑ってみる必要があるはずなのだが。
そういう報道は一切されない。だからテレビを見てもムードしかわからない。このウイルスは新型です。ザクとは違うのです、ザクとは。感染が拡大すると波が来るのです。すぐそこにまで迫っています。わかりますよね。わかりますよね。
それはムードで物を言ってる。ムードだけで物を言ってる。だから消火器を売るやつが、消火器を備えなければならないのです、ワタシはアナタの安全と安心のために言ってるのです、わかりますよね、わかりますよね、と言うのと同じように聞こえる。