端数報告4
――と、ここで話は『エリア88』になるのだが、あのマンガにはゲイリー・マックバーンの若い頃の話の中に、
画像:エリア88第7巻190ページ
画像:エリア88第7巻191ページ
アフェリエイト:エリア887
こんな人物が出てくる。これだ。この人がシノさんだ。その呪われた〈スーパーカブ〉は〈スコープドッグ〉であると同時にゲイリー・マックバーンの〈フィッシュベッド〉。小熊という子が毎月得ている奨学金と生活費はマックバーンの遺産なのだ。ミリアムは死んではおらずアガサと名を変え、〈犯罪予防局〉という組織に密かに送られていた。人間を人間として見ることのない非情な組織。恐怖によって社会を管理・支配しながら口では「安心・安全」と言う。すべては皆様の安心のためです。そして安全のためなのです。ワタクシ達はそのために努力を重ねているのです。
という。それがスターリンやポル・ポトや、毛沢東や金日成がやったと同じ恐怖支配者の手口であり今の〈コロナの禍〉とやらで厚労省とマスコミと政治家どもが使っている手口と同じものである。恐怖支配にいったん成功した者達は、どこまでもそれを続けて甘い汁を吸い続けようとする。
結果、社会がズタズタになっても決して気にかけることがない。手洗いだのマスクだの密を避けろだなんていうのは全部なんの効果もないおまじないなのは百も承知だ。老人を楯にとって民衆を脅し、従え、従わないのなら、と恫喝による政治を行う。口先だけ「皆様の安全のため」と言いながら。
コロナウイルスを利用すればそれができる。それだけだ。それが権力者というものであり、セオドア・カジンスキーの哲学である。人間愛というものはない。おれが書いた『コート・イン・ジ・アクト』の第1話のように、殺人を未然阻止する特殊部隊の隊員ながらに、
画像:お見舞いに行くの
なんて言ったりする者はいない。
それが映画『マイノリティ・リポート』の〈殺人予知システム〉である。実にくだらん。どうしようもない。だがミリアムはアガサと名を変え、これに組み込まれてしまった。
――が、ゲイリー・マックバーンは、神崎に撃たれる前にそれを知った。そこで最後の賭けに出た。〈フィッシュベッド〉の心臓にある、
画像:テムレイの回路
こんな感じの回路を外してシノさんに送る。〈殺人予知システム〉なんてどうせすぐ破綻して終わるに決まっているのだから、娘はどこか秘密の場所に行くことになるだろう。たぶん、日本の山梨県北杜市あたりだ。そこでシノさんは〈スーパーカブ〉に父親の回路を組み込んで待つ。
運命はきっとバイクに乗れる歳になるとき娘をシノさんの店に行かせる。そこでシノさんは父親の〈フィッシュベッド〉を娘に売るのだ。一万円で。
けれどこいつを渡すのは修羅の道を歩ますことになるかもしれぬ。この子をキリコ・キュービーにしてしまうことになるかもしれぬ。イザとなるとためらったところで、
「なんで一万円なんですか」
聞かれて咄嗟に、
「人を死なせてる。三人」
と応えてしまったが、そんなバイクがきれいな新車同様品であるはずがない。
そこで後から修正した噂を流して礼子が聞くことになった。そうと知らないミリアムはカブを使うバイトを始め、非力な手でボルトを回して自分でオイルの交換を果たした。
勝った。娘は〈フィッシュベッド〉で己の人生を開き始めた。ゲイリー・マックバーンは最後の賭けに勝ったのだ。
代わりにやっぱりキリコ・キュービーになっちゃったけど――という、そんなところがおれが見る『スーパーカブ』のお話である。おれにとってはそういう話なのだからおれにとってはそういう話なのであって、これを読んで、
「違うと思う」
と言う人がいたとしても別に気にせん。それではまた。