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端数報告4

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具体的には江崎誘拐の実行犯が江崎の長女の名前を呼んだこと、江崎誘拐における身代金要求の脅迫状で社長運転手の名前を名指ししたこと、世間一般にほとんど知られていないグリコの関連会社を知っていたこと、江崎を水防倉庫に監禁した際に江崎に着せていたコートが戦前から戦中にかけての江崎グリコ青年学校のものと似ていたこと、グリコがすぐ10億円を用意できることを知っていたことなどである。ほかにも人質を取ったり放火したりしたことや、脅迫状ではグリコ以外の会社の社長を「羽賀」「松崎」「浦上」「藤井」と苗字で書く中で江崎社長のみ「勝久」と名前で書いていることなど他の企業を脅迫したときにはない特徴があることから、グループの中にグリコに怨みを持つ者がいるのではないかと言われる。
 
他にも53年テープの存在もグリコへの怨恨が原点にあるという説の補強材料になっている。
 
   *
 
だとさ。くだらん。江崎グリコという会社は大きな会社で歴史もあるから、言おうと思えばいくらでも、どうにでも言えることがあるだろう。すべてアヤフヤでひとつひとつの話はバラバラ。根拠と言える根拠になっているものすらない。
 
「グリコへの怨恨」とひとくちに言うが、一体グリコは過去に何をしたため人に恨まれていると言うのか。それを説明できているのがひとつもありはしないんじゃないのか? それでは話にならない、と言うしかない。
 
参考までにひとつの例を紹介しよう。2002年に、
〈マブチモーター社長宅放火強盗殺人事件〉
というのがあった。小型モーターの世界ナンバーワン企業の社長宅に賊が押し入り、家人を殺しカネを奪って放火し逃げた、というものでマスコミが「怨恨」と書き立て、警察もそれにマトを絞っての捜査をしたが数年後に捕まったのは、〈会社四季報〉で有名企業の社長宅を見つくろった者達だった。
 
名のある企業の社長宅が襲われたり放火されるとすぐ、
「怨恨で決まりやろ」
と言う者がいる。それだけの話でないのか。
 
 
 
次は〈株価操作説〉だが、ウィキには、
 
   *
 
株価操作説の場合、1984年1月時点で745円だったグリコ株は、社長誘拐・工場放火事件があった翌日5月17日には、598円にまで下がっている。すなわち、商品に不信を抱かれることによる株価下落を前提にすれば、結果24.5%の利益を得られたとも考えられる。加えて事件の「終息宣言」を受けて値が戻ることも前提にすれば、底値と思われる時点で買いに転じて、さらに利益も得られる計算になる。
 
『週刊現代』で株式情報の担当記者をしたことのある作家の宮崎学は、単純に市場で株式売買するのではなく、企業に自社株を買い取らせる仕手で100億円の利益が得られる可能性を指摘している。宮崎学に任意聴取した刑事も、この説を宮崎に述べたという。
 
警察でも、現金奪取はカムフラージュで株価操作による利益が目的だった可能性を考えて、事件に関係した企業の空売り・買い戻しで目立った動きをした人物や団体は徹底的にチェックしていた。中でも当時ビデオセラーという会社を運営していた仕手グループは、最重要監視対象として目をつけられていたという。
 
   *
 
こう書かれている。バカバカしい。
 
確かにそれで利益を得ることはできるのかもしれないが、儲けたところで警察に目をつけられてしまうわけだろ。
 
数十万から数百万の単位ならともかく、何千万も稼いだりしたら疑われて張り込みをかけられ、双眼鏡とカメラでもってヤサを監視されることになる。でもって、
「連中、森永の株を買っているようですよ」
「何? 丸大の次は森永か」
なんてことにならねえのんか。
 
まさか二、三百万円のためにあれをやったというのはないだろ。だが市場取引でそれ以上の額というのは、まず無理なんじゃないですか。
 
それに大体、丸大の脅迫の時はマスコミを使わず社会を〈劇場〉にしようとせず、会社のイメージを傷つけずにことを運ぼうとしてるわけだろ。事件発覚は森永の脅迫の後で毎日新聞にスッパ抜かれたからなんだろうが。丸大食品を脅した時はカネを取るため〈キツネ目〉が警察の前に姿を現すような危険を冒している一方で株価操作はしていない。
 
というのはまるで話が合わん、ということになりませんの。おれは犯人達は、丸大がダメだったから「森永に変えてやっぱりマスコミを利用しようか」と考えたんじゃねえかと思うが。
 
ということでもうひとつ、
《企業に自社株を買い取らせる仕手で100億円の利益が得られる可能性》
があるというやつだが、これも可能性があるというだけの話じゃないの? それをやったら百億円稼げるのかもしれないが、稼いだところで警察に御用となるんじゃないのですか。株のことはおれは全然知らんので、わからず書いちゃいるんですがね。
 
 
 
ということで次だ。〈被差別部落説〉だが、ウィキでは、
 
   *
 
この事件に関しては、被差別部落関係者が関与しているという説もある。その根拠は、9月18日の森永の男の子の声による脅迫テープを分析した結果、周辺環境の音の中に皮革製品に使用される独特のミシンの音が入っていたということ、犯人グループが使用したもののほとんどがマイノリティの多い町の近くのスーパーで購入されていたこと、というものであった。しかし、被差別部落関係に対する捜査について作家の宮崎学は、部落解放同盟が抗議をしたため捜査が打ち切られたとしている。被差別部落出身者の関与については、一橋文哉によるノンフィクション『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相』でXとしてほのめかされ、この事件をモチーフにした高村薫の小説『レディ・ジョーカー』でも扱われている。
 
   *
 
こう。なるほど、高村薫の『レディ・ジョーカー』。
 
アフェリエイト:レディ・ジョーカー
 
と言うよりまるで、『ウルトラセブン』の『ノンマルトの使者』という感じですな。〈53年テープ〉のとこにもテープの主が、
《部落解放同盟幹部を名乗る初老の男性》
と書かれ、
《1993年(平成5年)末に兵庫県警が53年テープを1分ほどに編集して公開した》
などとしてあったが、事件終結から8年も経ったところで1分ほどに編集して公開というのがどうにも。
 
《犯人グループが使用したもののほとんどがマイノリティの多い町の近くのスーパーで購入されていた》
などと言うけど遺留品の中でいちばん大きそうな勝久氏が着せられたコートは古いものとしかわからなかったわけなんだろ。〈53年テープ〉の主が部落解放同盟幹部を名乗っていたから『砂の器』で『飢餓海峡』で『人間の証明』なやつの仕業ということにしようとしてるだけなんじゃねえのか。
 
《被差別部落関係に対する捜査について作家の宮崎学は、部落解放同盟が抗議をしたため捜査が打ち切られたとしている》
というのも兵庫県警の本部長とか刑事部長とかが替わるたんびにその『闇に消えた怪人』っていう本を読んで、
「そのXというやつがやったのに違いない!」
と叫ぶもんだから刑事がそのXさんの許に行くことになり、Xさんが、
 
「ああ? 一体、なんだまたまた。今度は誰が一橋文哉の本を読んだんだ」
 
作品名:端数報告4 作家名:島田信之