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プトレマイオス・マリッジ・トラベル

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 ホテル・ヴァルゴで一夜を過ごし、私たちはリーブラの港へ向かう。
 リーブラの港は二つに分かれている。片側は観光事業に関する船、片方は商業に関する船が出入りしている。私が不思議に思っていると男が笑って答える。胸元のネームプレートにはハクラビという言葉が刻まれている。
「何事もバランスが重要なのです」
 果たしてそうかしらと私は考える。彼も不思議そうな顔をしている。ああ、私たちは疑問を共有している。私の心に安堵が生まれる。
「港を案内しましょう」
 ハクラビの声と共に二人の女が現れ、彼を連れ去ってしまった。光のような速さに私は何もできず、ただ彼の去っていく背中を見送ることしかできなかった。
「彼を、どこに……」
「ご安心ください、これはあなたのためなのです」
「やめて! これはわたしのためなんかじゃない!」
 彼の後を追うべく走り出した私をハクラビが引き止めた。腕を握られる強い力を私は振り払えない。
「あなたは彼を愛していない。彼もあなたを愛してなどいない」
「うそを言わないで!」
「本当です。あなたが目を逸らしているだけ」
「うそよ!」
 私はやっと腕を払う。彼の元へ駆ける。側の女二人が溶けるように消えていく。彼の胸に飛び込む。
「どこにもいかないで、私の側にいて!」
 彼が私を抱きしめる。そうだ、私にはこれだけだ。私には彼しかいないのだ。私は彼を愛している。彼も私を愛してくれている。
 本当に?
「どこにもいかないよ。僕は君を愛している」
「そう……そうよね、きっとそう。本当に愛してくれている。私も愛してるわ。あなたを愛してる」
 私はうわ言のようになんども呟く。ハクラビの姿はいつの間にか消えている。
 天秤のような港はゆらゆらと両皿を揺らせている。