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プトレマイオス・マリッジ・トラベル

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 船旅は続いている。私たちはカプリコルヌスの港へ引き寄せられる。廃港になったこの港には、誰一人として立ち寄らない。冷たく激しい風が吹きすさぶ中、私たちは閉門された入り口の前で話をする。
「どうしたんだい? なんだか落ち着きがないようだけど」
 彼の言葉に私は一層ゆらぐ。自分の足で心を保てなくなる。私は思ってもいないことを次から次へと吐き出してしまう。
「あなたは私のことを愛してくれていないんだわ」
「まさか」
「本当よ」
「どうして」
「私にはわかるもの」
「なぜ」
「この目で見えている」
「僕には見えないな」
「だってあなたはあなただもの。生物は自分だけを確認できないのよ」
「そう言われてみれば、そうだね」
「私には見える。あなたの心が遠くにあるのが見える」
「仮にそうだとして、僕はどうすればいいのかな」
「認めるの……」
 私はどうすればいいかわからなくなる。涙が溢れてしまう。嫌な女。旅に出る前、どこかの小説にも同じような女がいた。私は思い出す。私は小説の女になっている。
「私のことをもっと愛して!」
 同じ言葉と同じ表情。私は嫌な女になる。私は別の何かになる。
「私のことをもっと欲して!」
 彼は私を見て笑う。
「僕は十分に君を愛しているし、欲しているよ」
「不安なの、とても、不安なの!」
「うん。そう、きっと、多分。君に僕の心は伝わっていないんだね」
「あなたがわからない。あなたに愛してもらっているか、私はわからない」
 私の涙は強い風に乗って遠くへ飛び去ってしまう。
 私はもう泣いていない。
 私はもう、女じゃない。
 それでも私は手をひかれ、彼と共に船に乗る。