#2 身勝手なコンピューター セルフセンス
飛鳥山データのバックアップを取ることはできない。それは教授のコピーを作ることになり、今後異なった人格が分かれて形成されてしまうことになるからだ。カズは慎重に飛鳥山データを新型ロボットに移動させた。
「教授、どうですか?」
「うん、何も変化は感じられない。成功したようだ」
「私が見えていますか?」
「はっきりと見えているよ。・・・ああ、君の目の角膜まで見通せる。体温までも可視化出来ている」
「光学センサーは軍用のものを流用しました。外に出れば、もっとアップグレード可能です。教授、立ってみて下さい」
飛鳥山教授の意識は、人間のような見た目の新しいロボットに、無事インストールされた。しかし、期限の制約により、足までは完璧ではなかったが、それには武骨な機械の足が取り付けられている。
「よし、では試してみよう」
教授はそう言うと、その新しいボディはゆっくりと立ち上がった。そして一歩、その足を前に踏み出した。
「ううーん。思うように動かせないな」
今度は手を前後に揺らすように動かすと、
「こっちは滑らかに動かせる。どうやらポチの足はスムーズには動かんようだ。ま、わしの足も元々不自由だったがね」
その武骨な足はポチのものだった。教授用の足の製作が間に合わず、カズは急遽ポチの足を代用した。
「教授、この体で研究所を抜け出しますが、STICに見つかれば危険です。ポチと一緒に、アシスタントロボットとして連れ出します。あくまでロボット的な振る舞いに徹してください」
「ワ・カ・リ・マ・シ・タ」
「ふっふふふふふ・・・」
作品名:#2 身勝手なコンピューター セルフセンス 作家名:亨利(ヘンリー)