#2 身勝手なコンピューター セルフセンス
「では、あと1か月時間をください、チョウ様」
「・・・やはり、あなたは期待外れだったようね」
「私を解雇しても、研究は成し遂げられませんよ。飛鳥山(コンピューター)を理解しているのは、私と母だけなのですから」
「何も解っちゃいないようね。あなたを解雇するのは私じゃない。インフォン社よ」
「インフォンが? どういう意味ですか?」
「我がSTICは、インフォン社に買収されてしまうのよ。奴らの狙いは、飛鳥山(コンピューター)なのよ!」
「・・・・・・。」
「ようやく意味が分かった様ね。なら、すぐに発表できる成果を見せなさい!」
「・・・いや、この研究所の所在は極秘ですよね。誰にも知られちゃいない」
「ええ、一部の役員しか知らないわ。でも今となっては、インフォンに靡いて、秘密を漏らす者がいるかも知れない」
「解りました」
カズにとって予想外のことだった。カズは自分の仕事を急がなくてはいけないと思った。
STICがカズに指示したミッションは、飛鳥山(コンピューター)から、飛鳥山データを解析し、それが人の思考である証拠をつかんで、かつ人の思考をデータ化して保存する方法を解明することだったが、それはもう秘密裏に完了していた。では今、何をしようとしているのか、それはあくまで個人的なことだった。しかしその個人とはカズだけではなく、飛鳥山教授のことでもある。
飛鳥山教授の記憶を、安全に量子コンピューターから取り出すことが出来るかというものである。それは飛鳥山教授たってのお願いで、カズはその見返りに、ここで飛鳥山の量子コンピュータ理論を学ばせてもらっていた。
作品名:#2 身勝手なコンピューター セルフセンス 作家名:亨利(ヘンリー)