#2 身勝手なコンピューター セルフセンス
「ははははははは・・・」
薄暗い部屋の大画面スクリーンに「ドラ〇もん」が映し出されていた。笑っているのはポチである。この機体はまるで子供のように反応している。
「カズ博士は、どんなアニメが好きですか?」
「私はアニメはあまり観たことないよ」
「どうして観ないのですか? すべての人間はアニメが好きなのではないのですか?」
「そうとも限らないよ。私は実写映画の方が好きだよ」
「実写は現実みたいだから怖いです」
「事故のシーンとか?」
「はい。ポチはアニメの方が安心です」
(現実的じゃない方がいいってことか・・・ポチに感情があるわけじゃなく、学習能力の発達段階では、人間の子供時代と同じなんだな)
「宇野博士、今日こそ研究の成果を聞かせてもらえるかしら?」
「ええチョウ様、成果と言われても、段階があります」
「そんなことは解っています。もう何度も催促して来たでしょう!?」
「期限内に完成させることは可能だと思いますが、地道な検証とデータ解析には時間がかかるのです」
「そんな悠長なことを言ってられないのよ!」
「スケジュール通りに進めないと、データの見落としや、最悪破損してしまって、取り出せなくなるかもしれないんです」
「インフォン社は、新型のロボットのプログラム開発に成功したそうよ! それが80Aという世界初の自律型ロボというニュースで持ちきりよ!」
「私たちが開発しているのは、単なる自律型ロボットではありません。人の思考がロボットを操って、いや、むしろロボットそのものになって行動できる画期的なものです。インフォンのロボットなど相手になりませんよ」
「株主はそうは思っていないわ! すぐに株価を上げるような成果が必要なの!」
作品名:#2 身勝手なコンピューター セルフセンス 作家名:亨利(ヘンリー)