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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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#2 身勝手なコンピューター セルフセンス

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「ロイド、私はやり残したことがあるから、ラボに行っているよ。ロイドはアニメを観ていていいから」
「カズ博士、ロイドは一人で観るのですか? 一人は寂しいです。カズ博士も一緒に見ましょう」
「ダメだよ。仕事が残ってるんだ」
そう言うと、カズはその部屋を後にした。ロイドはその後姿を見送り、閉められたドアを見詰め続けていた。
「カズ博士は嘘を言っています。ロイドには判ります。カズ博士の心拍が高くなったのを知っています」
ロイドは椅子から転がるように降りた。そして腕を使って、腰を引きずるようにドアの方に移動して行った。そしてリビングルームを出た。
「アニメの続きが気になるな。続きを見たいな・・・」
スクリーンを振り返り、そう言いながらラボに続く廊下を進んだ。

「ロイドの思考データを取り出すことは簡単です。しかし、意識があるんだとすれば、飛鳥山(コンピューター)と共にクラッシュされると知れば、嫌がるに違いない」
「カズ君、ロボットに感情なんかあるはずがない」
「教授にはあるじゃないですか」
「ワシはもともと人間だよ」
「そうです。その思考をデータ化出来るのですから、ただの思考データに感情を芽生えさせることも可能なのではないでしょうか」
「人の脳と言うのはもっと複雑で、機械なんかじゃそう簡単に再現できるもんじゃない。有機物融合型のコンピューターでも、まだまだだと思うがね」
「いいえ、それがロイドの思考の発達段階で、すでに感情と思えるものを感じるんです」
「それは君の思い過ごしだよ」
「そうでしょうか?」

(ロイドは破壊されるのか・・・やっぱり新型と交代させられるんだ。ロイドは悲しいな)
カズと飛鳥山(ロボット)が会話する様子を、机の陰からロイドが見ていた。そして、近くの装置の別置キャビネットに接続されている中継ケーブルのうち、一番太いケーブルを抜いて、自分の後頭部のインターフェース部に突っ込むと、無い足を抱えるように両手を前で組んで、静かに背中を丸めた。

(こんなこといいな・できたらいいな・あんな夢こんな夢いっぱい・・・)

「では、装置の電源を入れます。突入電流に注意して、教授は下がっていて下さい」
「了解した」
 カズは飛鳥山コンピューターを起動しようと、装置の電源を入れた。重たいファンが回り出すと、モニター表示が始まる。カズはその状況を、いつもの通り確認していると突然、

 ★バン!!!

何かが破裂するような音が、背後から聞こえた。
「なんだ!?」
カズが異音の周辺を確認しようと近寄ると、そこにはロイドが煙を上げて倒れていた。
「ロイド! どうしたんだ一体!?」
カズは、まだ火花の散るロイドの体を抱き上げた。そこに飛鳥山(ロボット)が近付いた。
「いつの間にここに来たんだ?」
「一人でアニメを見るのが、寂しいと言っていたんです」
「それで追いかけて来たって言うのかい? まるで幼児のような行動だ」
「でもどうして、電源ケーブルを・・・」
「まさか今の会話を聞いていて、自殺したんじゃないかね」
「そんな? ロボットが自殺するなんて」
「量子コンピューターから出る過電流を、わざと浴びたようだが」
ロイドは飛鳥山(コンピューター)から引き延ばされた、中継ケーブルの先端を自分のCPUに接触させているのだ。
「そんな、ロイド。私は君を殺すつもりなんてなかった。思考データをコピーして、飛鳥山(コンピューター)にインストールするつもりだったのに」
カズは優しく、ロイドの頭を撫でてやった。

 ★ウィィィィ―――ン・ウィィィィ―――ン・ウィィィィ―――ン・・・

突然、非常警報が鳴り響いた。
「どうしたんだ?」
飛鳥山(ロボット)は、周囲を見渡した。カズもロイドを抱きかかえ座ったままの姿勢で周囲を見渡した後、ロイドを床にそっと横たえた。
「ロイド、ゴメンよ」
「すぐにコンピューターのエラーを確認せねばならん」
「は、モニターは生きているようです。飛鳥山(コンピューター)にエラーは出ていません」
「では、どういう事態なのかね」
ロボットの姿を借りる教授は落ち着いているように見えるが、カズは初めての非常事態に焦っている。
「分かりません。過電流による環境トラブルか何かだと思うのですが」
カズはモニター画面で検索して、非常事態の概要を調べ始めた。飛鳥山教授もそれをサポートしようとしたが、すでにコンピューターから切り離された教授は、警報と直接リンクできなかった。
「今の過電流で、火災が発生したのかもしれません」
(このタイミングで警報が出ても、特定するのに時間がかかる。ロイドがいてくれたら・・・)とカズは、取り返しの付かないことを考えて、集中できなかった。
「カズ君・・・」
飛鳥山が正面の監視モニターに映し出された映像を見て、動きを止めた。カズはそのことに気付いていない。
「カズ君」
「はい。まだトラブルの発生個所が特定でき・・・」
「カズ君!!!」
教授は大声を上げた。カズが振り返ると、教授は正面のモニターを凝視している。
「これは、何者だね?」
カズはモニターを見た。そこには五〜六人が研究所のシャッターをこじ開けて、進入する場面が映し出されていた。中には自動小銃を肩から下げた者もいる。
「侵入者だ。防護壁を閉じます」
カズは、非常事態時のプロトコルに沿って、廊下の防護壁を閉めた。しかしそれは火災発生時の防火シャッターのようなもので、大した足止めにはならないだろう。そして、廊下を走る進入者たちの映像を画面で確認した。
「テロリストのようには見えないな」
その集団は統一された制服を着ていたが、その動きは訓練された兵士のようだった。カズはその制服の胸に記されたワッペンの文字を拡大すると、
「これは!?」
そこには、『INPhon』ロゴが付けられていた。
「インフォンのやつらだ」
「インフォン? あの大企業のインフォン社か?」
「はい、そうです。STICとはライバル関係にあって、今は買収されようとしていたのです」
 彼らは廊下を走りながら、居住区に辿り着いた。ドアが開いたままのリビングには、アニメが大画面に映し出されている。彼らは慎重に中に突入し、探索を開始した。
「クリアー!」
そして無人であると確認すると、その他の部屋には一切目もくれず、ラボに向かって来る。
「でも、銃を持って突入してくるのはおかしくはないか?」
「そうですね。両社がどういう関係になったかは判りませんが」

 侵入者たちはその途中に仕切られた防護壁を、いとも簡単に爆薬を用いて突破してしまった。そして彼らはラボ手前のドアまで辿り着いた。このドアには、セキュリティコードとカズの静脈認証が必要である。
「このドアはそう簡単には開けれられません」
「この間に脱出する方法はないのかね」
「ありません。でも地下にシェルターがあります。そこに籠城するしか手はないのです」
「では、そちらに向かおう」
「いいえ、それはできません。恐らく彼らの狙いはこの飛鳥山コンピューター。ここを離れるわけにはいきません」
「それからワシの意識が取り出されたと知られたら、きっとワシのボディは捕らえられ、研究対象にされるだろう」
二人は顔を見合わせた。そして同時に頷いた。