小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

#2 身勝手なコンピューター セルフセンス

INDEX|2ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 

 飛鳥山コンピューターとは、日本の大学教授が開発したとされる世界初の「有機量子コンピューター」である。しかし、その産みの親とされる飛鳥山教授は行方不明で、その研究は当時の教え子、宇野睦美(うの むつみ)によって引き継がれ、世界に発表された。その睦美こそ、宇野和の母親である。


 カズは椅子から立ち上がり、研究室の中央ラボに向かった。周囲は静かである。物音ひとつしない。この研究所には、カズ以外は誰もいないからだ。つまり彼は、たった一人で、STICの社運を賭けた秘密の研究を行っているのである。
 当然外部との接触はもとより、通信さえも一切遮断されており、役員のうち最高権限を持つチョウにしか、連絡を取ることは許されていなかった。

 それでも中央ラボのドアには常に2重ロックがかかっており、前回ドアをロックした際に設定したコードの再入力に加え、指の静脈認証によって開錠される。
「ええっと、パスコードは何だったっけな~?」
ラボのドアを前にして、カズはそう呟いた。
 そのコードは毎回違う数列が必要で、変更できるのは静脈認証の利く、カズただ一人だけである。そして、
「ヒトヨヒトヨニヒトゴロシ(141421564)・・・っと」
その数字を思い出しながら入力して、そのあと
「えいっ」っとばかりに、右手の人差し指をモニター画面の中央に押し付けた。
「俺しかいないのに、毎回面倒だな」
どうやら、カズはひとり言を言う癖がついてしまったようだ。

 ラボに入るとそこには、1機の人型ロボットが作業している。これはSTICが開発した量産機であるが、カズはそれに改良を加え、自律して動くようにプログラミングしていた。しかし、この機体の知能は8歳児程度で、すぐに作業を投げ出してしまう困りものでもあった。