#2 身勝手なコンピューター セルフセンス
侵入者たちはその途中に仕切られた防護壁を、いとも簡単に爆薬を用いて突破してしまった。そして彼らはラボ手前のドアまで辿り着いた。このドアには、セキュリティコードとカズの静脈認証が必要である。
「このドアはそう簡単には開けれられません」
「この間に脱出する方法はないのかね」
「ありません。でも地下にシェルターがあります。そこに籠城するしか手はないのです」
「では、そちらに向かおう」
「いいえ、それはできません。恐らく彼らの狙いはこの飛鳥山コンピューター。ここを離れるわけにはいきません」
「それからわしの意識が取り出されたと知られたら、きっとわしのボディは捕らえられ、研究対象にされるだろう」
二人は顔を見合わせた。そして同時に頷いた。
「飛鳥山(コンピューター)を破壊するしかありません」
「そのようだな」
教授の思考が取り出されたコンピューターは、もはやカズたちにとっては用済みだった。急いシャットダウンさせ、再起動の際の突入電流を飛鳥山(コンピューター)にループさせて基盤を焼き切り、データそのものを消去するしかない。
「急ぎましょう、再起動には時間がかかります」
飛鳥山(ロボット)はすぐに、飛鳥山(コンピューター)のシャットダウンシーケンスを開始した。
その頃、侵入者たちは、ラボ入口のパスコードモニターに何やら、解析機のような器具を取り付けた。
「例えコードが解ったとしても、私の静脈認証がないと、ロックは解除されませんから、ドアを破壊するしか手はないでしょう」
その時、飛鳥山(ロボット)が動きを止めた。
「では、ポチはどうやって、ラボの扉を開けたんだろうか」
作品名:#2 身勝手なコンピューター セルフセンス 作家名:亨利(ヘンリー)