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フリーソウルズ Gゼロ ~さまよう絆~

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#3.遠藤監査官赴任




新幹線新神戸駅(朝)
ホームに到着する新幹線。
駅に降り立つ遠藤博之。
タクシーに乗りこみ、運転手に手帳の住所を見せる遠藤。

遠藤  「ここへやってください」



関西フラワー園芸社(朝)
会社は市街地から山ひとつ隔てた静かな環境の立地。
幌つきの軽トラックに観葉植物を積みこむ友也。
車のラジオからニュースが聞こえる。

ラジオ “‥‥銃声のような物音がしたと警察に通報があり、警官が駆けつけたところ、会社社長の佐原彰さんの自宅で、彰さんと妻の里可子さんが居間で死んでいるのを‥‥”

ニュースに聞き耳をたてる友也。

園芸社社員 「(車の反対側から)新人くん、聞こえてる?」
友也  「えっ?」
園芸社社員 「もうええわ。きょうはゴト日やから、はよ出んと遅なるで」
友也  「は、はい」

友也の携帯にメールが着信する。

送信  “ツジヤマ”
題名  “ニュース見たか?”

携帯を閉じる友也。



タクシー車内
携帯電話に繋いだイヤホンを耳に挿れる遠藤。
ワンセグテレビのニュース。
現場から原稿を読みあげるレポーター。 

ニュース “‥‥居間で死んでいるのが発見されました。佐原さんの長女優里さんも口と鼻をビニールのようなもので押さえられ、一時心肺停止状態でしたが、駆けつけた救急隊員により命は取りとめた模様です。佐原彰さんは兵庫県を中心に近畿一円に販売店を持つ宝石販売会社の社長で‥(映像が乱れる)‥。以上、佐原優里さんが運ばれたセントへレナ記念病院前からお伝えしました”

運転手 「着きましたよ。杭瀬西町三番地」
遠藤  「あ、すみません」

タクシーの窓から顔を出して町を見回す遠藤。
町工場や工事会社の合間に民家がある殺風景な住宅地。

遠藤  「運転手さん、待っていてもらっていいですか」

タクシーを降りる遠藤。
電柱の住居表示は、杭瀬西町三番地。
工場の横に、旧いアパートがある。
手帳のメモ書きに視線を落とす遠藤。
アパートの2階の一室をノックする遠藤。
しばらくすると三軒隣の部屋のドアが開いて、ヘアネットを被った中年女性が顔を出す。

中年女性 「そこ、空き家だよ」



摩耶大学 喫煙スペース
肩身が狭そうにタバコを燻らす天根と大村教授。

大村  「少子化。学生の減少で大学も補助金カットときた日にゃ」
天根  「金の問題じゃないんだよ、大村先生」
大村  「お金の問題も大事ですよ」
天根  「自由裁量がなければ、純粋な研究など望めない」
大村  「無理でしょう。今度の学長も、役人あがりですから」
天根  「大村先生は顔が広そうだ」
大村  「多数の友を持つは、ひとりの友も持たず、です」
天根  「君の知り合いで、誰かスポンサーはおらんものかな」
大村  「んん、あたってみましょう。でもあてにしないでくださいね」
天根  「ええ・・・」



兵庫県警本部
タクシーを降りる遠藤。
ビジネスバッグを手に、ロビー受付を訪ねる遠藤。
エレベーターを降りる遠藤。
永井本部長と側近が出迎える。

永井  「お待ちしておりました。遠藤監査官」
遠藤  「永井本部長、じきじきに恐縮です」
永井  「ご連絡いただければ、新神戸までお迎えにあがりましたのに」
遠藤  「恐縮です。少し立ち寄る所があったので」

二十畳くらいの広さがある副次長室に案内する永井。
部屋にはマホガニーのテーブルと書棚がある。

永井  「滞在中はこちらをお使いください」
遠藤  「恐れ入ります」
永井  「定期巡回いうやつですか」
遠藤  「ええ、まあ」
永井  「昔は、兵庫県警も裏金や流用や、いろいろありましたけど、今は法令順守。きれいなもんです。市民から信頼される警察になったと自負しております。どうぞご存分にお調べいただいて、いい報告書あげてください」
遠藤  「はい」
永井  「何かありましたら、私か総務のほうに」
遠藤  「あの・・・」
永井  「何か?」
遠藤  「湊伸二刑事は、今どちらの部署に?」
永井  「湊?」

側近が永井に耳打ちする。

永井  「湊伸二警部は今、摩耶署ですね。お会いに行かれますか?」
遠藤  「できれば」

永井たちが廊下に出ると、鈴木淳刑事が一課から飛び出してくる。

永井  「鈴木くん、ちょうどよかった」

本部長に呼び止められてビクっとする鈴木。

永井  「ひとり乗せていってもらえないか」



兵庫県警摩耶警察署
玄関前に鈴木と遠藤を乗せた車が到着する。
署の玄関前で待ち構えている湊。
車から降りる鈴木。

湊   「よっ、一課のエースのお出まし」

遠藤が車から降りる。

湊   「お久しぶりです、遠藤さん」
遠藤  「ご無沙汰しております。湊刑事」
湊   「(鈴木に向かって)奥さん、どう。元気?」
鈴木  「ええ、まあ」
湊   「(遠藤に向かって)こいつもうすぐパパになるんですよ」
遠藤  「えっ、そうなんですか。それはおめでとうございます」
鈴木  「ありがとうございます。照れるなぁ」
湊   「なんだ、やっぱり言ってなかったのか。こいつね、いわゆるやっちゃった婚でね」
鈴木  「今は授かり婚ていうんです。それにやっちゃった婚じゃなくて、できちゃった婚・・・」
湊   「どっちでもいいや。鈴木くん、着いて早々悪いんだけど、現場行って周辺の防犯カメラのテープ回収してきてくれる? 悪いね」
鈴木  「了解。全然悪いなんて思ってないくせに・・・」
湊   「さすが、エースは勘がいいね」



うどん屋
割り箸を割る湊。

湊   「九年経ちますか」
遠藤  「ええ。事件から十年。収監から九年」

うどんが運ばれてくる。

湊   「すみません、朝から何も喰ってないもので」
遠藤  「こっちこそ忙しいときに・・・」
湊   「大丈夫、大丈夫。弟さん、確か小森・・・」
遠藤  「友也です」
湊   「友也くん、小森友也くん(言いながらうどんを掻きこむ)」
遠藤  「友也って、呼び捨てでかまいませんよ。なにせあいつは・・・」
湊   「いや、罪は償われた。もう一般人です」
遠藤  「その節は大変お世話になりました」
湊   「いや、頭を下げるのはこっちのほうです」

鉢を持ち汁をすする湊。

湊   「しかし変わった顛末の事件でしたね。犯行グループのひとりが現場で気絶し、警備員が逃走した車の後を徒歩で追った。しかも、最後には犯人のアジトまでつきとめた」
遠藤  「はじめはその警備員さんも仲間じゃないかと疑われたんでしたよね」
湊   「そうそう。相手は車だからとうに見失っているはずなのに、どうやってたどり着いたのか、憶えてないって言い出したもんだから・・・。友也くんは現場で気を失っていたし、今もって謎のまんまです」
遠藤  「警備員さんはほんと気の毒でした。手掛かりを追ってくれた人なのに。でその後進展は?」
湊   「ダメでした。アジトの遺留品から足のつくものは出なかった。仲間とは符牒でやりとりしてたらしく、友也くんも仲間の素性を知らされてなかったようで・・・」
遠藤  「そうですか・・・」