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フリーソウルズ Gゼロ ~さまよう絆~

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天根  「アメリカでは、あるかどうかもわからない素粒子の発見に、1千億もかけてばかでかい加速器を造って研究を進めているというのに‥」

助手の大学院生、佐伯亮太は天根の表情から事情を汲み取る。

佐伯  「そうですか‥。今年も見送りですか・・・」

傍らで小猿の世話をしている女子学生・政岡エミリーに目配せする佐伯。
政岡は小猿を人間の赤ちゃんのようにあやしている。
研究室の中に特殊金属で囲われた小部屋がふたつある。
小部屋の扉の隙間から白いリクライニングチェアと、頭の部分に円筒形の機器。
もうひとつ小部屋も扉が半開きだが機器分のスペースがぽっかり空いている。



コンサートホール
オペラを観劇する佐原昭吉、佐原彰、彰の妻里可子と彰の娘優里。
優里の祖父昭吉以外は皆、退屈している様子。



佐原彰宅(夜)
無人の邸宅。
邸宅母屋に隣接したガレージの一枚扉があがっていく。
闇にまぎれて配電盤を細工する小森友也。
ガレージの傍で身を潜める唐津誠と日垣健介。
ガレージの扉が開き、リビングに通じる勝手口の硬質なドアノブが見える。



コンサートホール
拍手の波が静まるとともに、舞台の幕がおりきる。
席を立つ者、着席したままの者、まばらな観客席。
幕間である。
ロビーに流れ、休憩をとる観客たち。
ロビーで帰り支度をする彰、里可子、優里。
和田からリボンのついた紙包みを受け取る昭吉。
優里を呼び寄せ紙包みを渡す昭吉。
満面の笑みで昭吉に礼を言う優里。
中座することを昭吉に詫びる彰、里可子。
ひとり客席に戻ってオペラ歌手に拍手を送る昭吉。



佐原彰宅
書斎の壁面に印象派の絵画。
額縁が蝶番で開く。
壁面埋め込み式の金庫が、唐津の懐中電灯によって照らしだされる。



高速道路(夜)
運転する彰。
後部座席でプレゼントを開く優里。
バレエのトゥシューズである。
喜ぶ優里と里可子。



佐原彰宅
ヘッドライトが一瞬、屋敷の壁面に大きく反射する。
書斎の金庫の扉は開いている。
金庫の下で、金塊をナップサックに詰めていた唐津が腕時計を見る。
腕時計の針は8時27分をさす。
日垣がカーテン越しに外の様子を窺う。

唐津  「ハンガーか ?」
日垣  「違う、家の奴らだ」

車中の優里が、カーテンが揺れたことに気づく。

優里  「誰か家の中にいる・・・」
里可子 「きっとマロンよ。ケージから抜け出したのかも」

彰の運転する車がガレージに入る。

彰   「車の中で待っていなさい」

ガレージのクローゼットを開く彰。
クローゼットには猟銃が四丁、並んでいる。



コンサートホール
オペラ歌手の熱唱に喝采を送る昭吉。



コインパーキング
カーラジオからアナウンサーの声。

ラジオ 「”‥‥時刻はまもなく八時三十分です。続いてのリクエストは、あの鐘を鳴らすのはあなた‥‥”」

イントロが流れ出す。
腕時計の文字盤を見る小森友也。
文字盤は八時三十分を示す。
ラジオを切る友也。
おもむろに暗がりのコインパーキングから動きだす黒塗りの乗用車。



佐原彰宅リビング(闇)
照明の消えたリビングルーム。
暗闇の中を猟銃の銃先が動く。
カーテンの影に日垣の足。
日垣の顔に汗。
猟銃の銃口を向ける彰。

彰   「誰だ。出て来い!」

リビングの反対側、勝手口付近で物音。

里可子 「(不安げに)あなた‥‥」

振り向いた彰に背後から日垣が襲いかかる。
もみ合う彰と日垣。
猟銃が暴発する。
勝手口ドア付近で人が倒れる音。
猟銃を彰から奪いとる日垣。

彰   「里可子。里可子‥‥」

倒れた里可子に駆け寄る彰。
里可子を抱きあげた彰の両手が血まみれ。

彰   「救急車。救急車を呼んでくれ。里可子」

彰の耳に「パパ‥」と呼ぶ娘の声が聞こえる。
彰が顔をあげるとそこに娘の優里が立っている。
優里は両手を後ろで縛られ、顔にはコンビニ袋が被せられている。
優里の背後に立つ黒い影は唐津。


佐原彰宅正面車寄せ
友也の運転する乗用車が停まる。
屋敷内から銃声。
車を降りてそろりと窓から室内を覗く友也。
目を凝らして見る友也。
血まみれの床に女性がふたり折り重なって倒れている。
ソファには、目を見開いて天井を見上げたまま絶命している彰。
肩に黒いナップサックを担いで屋敷ガレージから出てくる唐津と日垣。
唐津は片手に猟銃を持っている。

唐津  「ハンガー。行くぞ」
友也  「殺したのか? なんで?」
日垣  「いいから、早く車に乗れ 」



佐原彰宅
パトカーのヘッドライトに照らされる建物。
救急車やパトカーなどが続々と屋敷に到着する。
交錯する警察無線。 
警察官Aの制止を聞かず屋敷に進入する高級乗用車。


敷地内の救急車
優里が救命士によって蘇生術を施されている。

昭吉  「優里。優里」

救命士の作業を急き立てる昭吉を救急隊員が抑えている。
昭吉の秘書、和田が昭吉のもとにやってくる。

和田  「会長、山本院長に電話がつながりました(携帯を昭吉に手渡す)」
昭吉  「院長、わしや、佐原や。助けてくれ。優里を助けてやってくれ」
救命士 「心拍戻りました。血圧上昇」

よかったと安堵する救急隊員。

昭吉  「助かったのか?」
救命士 「(瞳孔を診て)意識はまだ戻っていません。とりあえず病院へ」
昭吉  「セントヘレナ、セントヘレナ病院へ行ってくれ」

戸惑いながら昭吉に随う救急隊員。



山中(夜)
森に囲まれた廃屋のある空き地。
車を降りる日垣、唐津、友也。

友也  「なんで?(車の屋根をたたく)」
日垣  「だから、成り行きだって言ってるだろ。なんべん同じこと言わせりゃ気がすむんだ」      
友也  「まだ、子供だったろうに(日垣に詰め寄る)」
唐津  「やめとけ、ハンガー。今さら言っても仕方ない」
日垣  「お前まさか、警察に垂れこもうってんじゃねえだろうな」

言葉を呑みこむ友也

唐津  「お宝は頂いた。現金に換えて一ヶ月後にここで分配する」

納得する日垣。
ふてくされる友也。

唐津  「ハンガー、お前には九年前の借りがある。これで帳消しだ」
友也  「・・・バカヤロウ・・・(天を仰ぐ)」
日垣  「ハンガー、てめぇ人の話、聞いてるのか・・・」
唐津  「(日垣を抑えて友也に囁くように)あの親子があんなに早く帰宅することは予定外だった。だが、それに気づかなかった見張り役のお前にもミスがある。起きてしまったことは仕方ない。三人で考えてやったことだ。罪の重さは、三人とも同じだ。いいな(声を戻して)なに、アリバイ工作は完璧だ。証拠はない。心配するな、ハンガー」

小屋に隠した別の車に乗りこむ唐津と日垣。
地面を蹴りあげる友也。



佐原彰邸宅
白々と夜が明ける。
中庭に警察車両と、現場検証する鑑識、刑事、警官の姿。
青いビニールの包まれた遺体が運び出される。
室内で壁面に飛び散った血しぶきを渋い表情で眺める湊伸二刑事。
床に落ちていた血のついたコンビニ袋をペンで持ちあげ、顔をしかめる湊。
車庫には黄色のテープが張られる。
門柱の前にそれぞれ門番のように警官が立っている。