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端数報告3

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〈新たな感染の確認数〉は〈分数の分子〉であり、〈分母なしには意味を為さない数字〉なので〈消防署の方から来た人の数〉。詐欺師が使う数字なのだとおれは繰り返し書いてきた。検査人数を増やすことでいくらでも作れる数字であり、厚労省にはそれをやれる力がある。だからやってんだ。騙されるなと。
 
おれはそう書いてきた。書いてきたけど、厚労省も無限の力を持ってはいない。それまで10の検査チームでやっていたのを明日に15チーム、あさって22、しあさって33、49、73、109チームと毎日1.5倍の級数で増やしたいのはヤマヤマだろうが現実には、それだけの人を集めることはできない。
 
当然だろう。73の次が109。一日に36もチームを増やす。ついこないだまで10チームの態勢だったのに、というのは厚労省でも無理だ。
 
それに、おのずと限界がある。11月まで10チームだったのを15、22、33と増やしていく。1チームを10人編成とすると、
 
   12月1日 15チーム150人
   12月2日 22チーム220人
   12月3日 33チーム330人
   12月4日 49チーム490人
   12月5日 73チーム730人
   12月6日 109チーム1090人
   12月7日 163チーム1630人
   12月8日 244チーム2440人
   12月9日 366チーム3660人
   12月10日 549チーム5490人
   12月11日 823チーム8230人
   12月12日 1234チーム12340人
   12月13日 1851チーム18510人
   12月14日 2776チーム27760人
   12月15日 4164チーム41640人
   12月16日 6246チーム62460人
   12月17日 9369チーム93690人
   12月18日 14053チーム140530人
   12月19日 21079チーム210790人
   12月20日 31618チーム316180人
   12月21日 47427チーム474270人
   12月22日 71140チーム711400人
 
となって12月22日に71万1400人の態勢で臨むことになり、1チームが東京都民をそれぞれ200人ずつ検査するものとすると、合計が1422万8千人となって人口の1300万人を超える。
 
が、感染が〈確認済〉となってる者を〈新たに確認〉はできない。ここに至る何日も前に東京都の感染者は全員見つけられて外出や他人との接触が禁じられてるだろう。だから71万1400人でやった12月22日の全都民検査で〈新たに確認〉される感染者の数はゼロということになる。
 
のだけれどもああ疲れた。書くの疲れたがおわかりですか。ちゃんとわからなくてもいいが、要するに〈毎日1.5倍〉というのは実行不能なのだ。こないだの緊急事態宣言の前三日間だけは頑張って1000、1600、2447人と数字を作って日に1.5倍の割で増えてるように見せかけたのだろうけど、厚労省と言えどもそれが限界だった。去年の4月には日に1000人を検査してたのが少しずつ、目立たないように増やして増やして11月には一日3000人ほどを検査する態勢としながらそれを隠していたのだろうが、〈12月から毎日1.5倍〉というのはしたくてもできん。
 
そのために何日かおきに1.5倍、ということになり、
 
「今日は500人。過去最高を大きく更新!」
「今日は480人。歴代2番目の数字です」
「今日は700人。過去最高を大きく更新!」
「今日は680人。歴代2番目の数字です」
「今日は900人。過去最高を大きく更新!」
「今日は880人。歴代2番目の数字です」
 
という按配になったわけ。〈過去最高を大きく更新〉と〈歴代2番目〉を繰り返す。これがおれの眼で見て何より「本当は減ってるだろ」と感じるポイントというわけなのだ。1.5倍で更新する日の方ばかり見る人はコロナに増えてほしいからその翌日にちょっと下がるのを無視するが、疑いの眼を持つおれは脳内でグラフを描いて不自然な推移の線の意味を探る。
 
画像:グラフ1
 
これね。12月1日に東京都民1300万人のうち10パーセントの130万が感染者だったとしよう。検査から導き出される推定実数。これが翌日に129万、128、127……と落ちていく。これはめでたいことなのに、厚労省にはめでたくない。
 
自分達の働きで民を救ったことにしなければならぬのに、コロナの方で自然消滅。それでは自分らは〈要らん人間〉ということになる。〈要らん人間〉達が「禍だ」と言うものだから、スーパーはえらいカネかけて無人支払機なんてものをレジに据え、図書館は無人貸出システムなんてのを導入した。そのため何万冊という本の全部に電子チップのシールを貼り、データの書き込み作業をした。
 
一冊一冊。もんのすごい手間をかけてだ。コロナが自然消滅すればそのすべてが無駄・無意味。事前におれに相談してくれたならそれを教えてやれたんだけど、どうせおれの言うことなんか誰も聞かなかったろうな。少子化が加速して、女が子供を産めなくなり、ウイルスよりもそっちで国が滅ぶところであったかもしれない。悪いのは誰だ。厚労省だ。池上彰も政治家どもも、自分達のしてきたことを棚に上げて厚労省を責めるだろう。心に棚をつくれ。心を広く最大限に活用するのだ。狭く考えるな。大人になれ。これは正義だ。正義なのだ。
 
という理屈で自分は悪くないことにしてしまえるのがおっさんという厚顔無恥な生き物だ。インパールの牟田口廉也。厚労省のトップにいるのも、
 
画像:四方修(何の対応することも)
 
こんな牟田口廉也だろうから、ここに至って〈インパール作戦〉をおっぱじめる。さらなる検査態勢の強化だ。今は毎日3万人を検査しているところを4万5千に増やす。そして67500に増やし、さらに101250に増やす。10万1250人を検査したなら、たとえそのとき感染者の割合が3パーセント、東京都民1300万人中39万にまで落ち込んでいたとしても3037人の感染者をその日新たに確認することができるであろう。
 
画像:四方修(地元の警察が動くような犯罪捜査力を)
 
という考えなのをまだ今のところ、政治家の先生どもは気づいてないから「よきにはからえ」と言っちゃってるわけだけれども、そう言えば〈グリコ・森永〉と八紘一宇の話の続きをやると言いながらほったらかしにしているな。このおっさんの顔で急に思い出したぞ。
 
画像:四方修(本当?)
 
うん本当……忘れていたわけではないけど、もうほとんど忘れちゃった。いかん、ついうっかり。あれはどこまで書いていて、どう続ける気でいたんだっけ。えーとえーと……。
 
ダメだ。本当に思い出せん。いやそのいつか、稿を改めて書く気でいるけど、今日のところはこれでおしまい。それではまた。
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之