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端数報告3

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キャリーオーバー継続中


 
前回は本当にあれ一回きりのつもりでいたんだけど、どうもやっぱり一度書くと次を書かずにいられなくなるな。てわけで同じ話だが、おれは前回、
 
 
「コロナの話はテレビに映るどの学者もどの学者も言うことが、まるで週刊誌の
『今週のロト6はこの数字が当たります!』
っていう予想のページに書いてあることそのまんまみたいだな、とあなたは思ったことないですか」
 
 
という話をしたんだった。おれは毎回思ってるけど、と。
 
週刊誌のナンバーくじ予想のページ。『今週のロト6はこの番号が当たります。ナンバーズはこの数字が当たります』という、あれをその昔、最初に見たときおれはおれの頭の中で、『ツァラなんとかかんとかはかんとか』のイントロが鳴り響くのを聞いたように思った。『2001年宇宙の旅』のあのメロディーだ。パーパーパー、パパー! パーパーパー、パパー! なんだなんだなんだこりゃあ。こんなもんを書くやつがいて、こんなもんを読むやつがいるのか?
 
どうもそういうことらしい。毎週毎週、これが書かれて読まれている。どの週刊誌にもどの週刊誌にもこのページがあるものであり、これがない雑誌はたぶん売上が落ちるのだ。そうとわかってなんだかいよいよ、狂ったコンピュータに制御されるあぶなっかしい宇宙船に乗ってるような気にさせられた。きっとたびたび見せてきた、
 
画像:もしくは勝手に開けて食べられたらえらいことやしね
 
このおっさんなんかもやはり、ナンバーくじ予想ページの熱心な読者なのに違いない。
 
と思うんだが、さてとにかく、コロナの話は全部が全部、宝くじの話のようだ。宝くじに狂ったやつらが当たる当たる今度こそとわめきたてているかのようだ。とあなたは一年間、感じてきていませんか。心のどこかでそう感じずにいられないから禍だ禍だ禍だとどんなにテレビが言うのを聞いてもピンとこないでいられない。マスクを着けて歩きながらも「なんだかなあ」と思わないでいられない。そんな毎日送ってきたりしていたのじゃありませんか。
 
としたら、あなたは正常です。狂ってるのはテレビに映るやつらの方です。おれが見るとこ、〈コロナの禍〉とは、宝くじ以外のなんでもない。頭がからっぽな人間達が、一等の玉が入っていない福引の車箱をガラガラと毎日まわして「今日こそは、今日こそは」とわめき散らしているだけなのです。テレビに映る人間達は、厚労省が挙げる数字をそれがいくつかに関係なく「この数字こそ、この数字こそ」とわめきたてる。ロト6はキャリーオーバー継続中! 〈75〉〈32〉〈90〉〈26〉。これです! この数字です! ワタシが予想した数字と、これは三つしか違わないし、これは十の桁がふたつに一の桁が七つしか違わん! 惜しい! もうほとんど当たったのも同然だった!
 
〈コロナの禍〉とはテレビに映る人間だけが買うことのできる宝くじだ。テレビ局のニュース・スタジオは数寄屋橋の歩道であり、池上彰を師として仰ぎ、池上彰が弟子と認める者だけが入れる。くじを買う列に並ぶ権利を得ることができるのだ。それは一億の人間を救った者に自分がなれる、というくじであり、スタジオ外の一般社会にそのおこぼれにあずかろうとする者も少しは出るが大々多数の95パーはマスクを着けて歩きながらも慌てず落ち着いて生活している。人が見てないところで外してタバコを喫いながら「けっ」とか思ったりしている。
 
「いいよな、テレビに映るやつらは。この〈禍〉のおかげで一億を救う人間になれるんだから。そりゃああれだけ早口にまくしたてる気にもなるよな」
 
とか思ったりしている。そうじゃないですか。おれは以前にこのブログで、
 
「コロナなんかどうせ一年で消えて別の風邪ウイルスに入れ替わるもんと決まってるんだから、食塩水でも『完璧なワクチンが出来ました』と言って国民全員に射てばいいんじゃないのか。そうはいかないのかな」
 
なんて書いたことがあったけれど、よく考えたらもちろんそんなわけにいかない。日本で〈効果100パーセント・副作用なし〉なんてワクチンが出来たとなったら、外国から、
「そのワクチンを売ってくれ。作り方を教えてくれ」
という話になっちゃうもんな。おれはいつか、このブログで狂犬病とジステンパーの話を書いた後くらいに、テレビが、
「ヨーロッパの禍は一段落しましたが、アメリカやインドで人が死に続けています」
と言うのを聞いて、すぐさま、
 
「そりゃ毎年のことじゃねえの」
 
と思ったものだった。アメリカやインドで人が何万も肺炎で死ぬのは当たり前だろう。2018も19年も、ニュースが言うのと同じくらいの数が普通に死んできているんじゃないのか。
 
そう思った。アメリカは〈病める大国〉だ。新谷かおるの『エリア88』にゲイリー・マックバンというキャラがいる。これはアメリカの〈病み〉を象徴しているような男なのだが、ちょっとスキャンして見せよう。
 
画像:エリア88文庫版第7巻185ページ
画像:エリア88文庫版第7巻186ページ
画像:エリア88文庫版第7巻188ページ
画像:エリア88文庫版第7巻197ページ
アフェリエイト:エリア88文庫版第7巻
 
こうだ。スラム街があり、貧困にあえぐ人々がいる。そしてさまざまな理由から人が麻薬に逃げ道を求める。
 
長く続いたトランプ政権は間違いなくこれを悪化させている。ちょっとタチの悪い風邪がアメリカの病んだ部分を襲えば、肺炎で死ぬ人間が大勢出るのは当たり前だ。
 
としかおれには思えない。つまりコロナが殺したのでなく、人が殺した。トランプが殺したということなのだとしか思えない。「アメリカで何万も」と聞いた途端に「毎年同じ数死んでんじゃねえの」としかおれは思わなかったのだった。
 
そんなことは前にも書いたな。インドではカースト制度のために同じことが起こるのだ、とも。今度はSF小説の伊藤計劃・著『虐殺器官』からちょっと引用してみよう。
 
〈第四部 3〉にこんな記述がある。
 
   *
 
 ヒンドゥー原理主義。戦前からインドはカーストによる差別を法律で禁じていた。とはいうものの、紙とインクで一朝一夕に消えてなくなるほど、差別のほうはヤワではない。差別はとりもなおさず歴史そのものだ。インドに限らず、どこの国、どこの土地にあっても、差別というのは血肉をそなえた存在で、人間の脳と歴史との密やかな共犯関係だ。ヒンドゥー・インディアが生き残る余地も、その歴史の中にある。
 川岸に出てみれば、そこには一大バラック群がある。それらを見下ろす場所から眺めれば、河を囲むトタンの屋根が波うち列をなし、河という血管を囲む血管壁のようにも見えてくる。そこに住んでいるのは河を職場とする人々、いわゆる洗濯カーストというやつだ。不可触賤民のなかにも、職業によりさらに細かなカーストが存在する。掃除カーストに生まれた人間は一生掃除をして過ごす。他の職業につくことはなかなか難しい。
作品名:端数報告3 作家名:島田信之