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端数報告3

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そしてもちろん、買ったんだから、もう当たったつもりになる。オレが世界を救ったのだ。〈禍〉が終わったときに皆が、オレを讃えることになるのだ。『ありがとう、ありがとう、あなたが「マスク着用」と。「密を避けて」と言ってくださらなかったら、ワタシ達はみんな死んでいました!』と一億の人々が、泣いて喜んで言うだろう、だってそれが事実だからな。
 
と思うけどよく考えたら、このくらいじゃダメとも気づく。くじを三枚買ったくらいじゃダメだ。「マスク着用・密を避けて」と言うくらいのことじゃダメだ。
 
だからどんどん早口にすごい勢いでまくしたてだす。これです! この数字です! この数字こそが! この数字こそが! しかし世間はどういうわけか、何を言っても落ち着いている。池上彰はウンウンと頷いてるが一般の95パーはオレの言うことを聞かなければ死ぬということがわからぬらしい。バカか? この数字を見れば、このオレだけが一億を救えるのが瞭然だろうに!
 
と思うからますます早く、猛烈な勢いでしゃべり散らす。池上彰がウンウンと横で頷いてるんだからオレだ。一億人を救った権利を決して誰にも渡すものか。テレビに映る何百という専門家の中でオレが、オレひとりだけが、厚労省が挙げる数字の意味がわかる! だって他の学者はみんな、言うことがてんでバラバラで、しかもまるきりトンチンカンなことを言ってる! まるで〈禍〉が終わったときに、自分が一億救ったことになる気でいるみたいな顔で!
 
バカどもめ、それはオレだ! というような勘違いをするのが〈宝くじを買う人〉です。テレビに映る〈コロナウイルスの専門家〉は全員がそれだというのがわかりましたか。
 
今回は急にこんなことがちょっと言いたくなっただけです。それではまた。
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之