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端数報告3

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「東京都で一昨日に986人を検査して59人だったので6パーセント。昨日は1025人を検査し72人だったので7パーセント。一日に1パーセントの増加です」
 
とか。数字まではっきり憶えているわけではないが確かにこのように言いました。私は聞いて、
 
「ふうん。一日千人前後を検査し割合を出しているのか」
 
と思いました。
 
それがこないだの緊急事態宣言の日には、
 
「東京都で本日新たに2447人の感染を確認。過去最高を大幅に更新」
 
とニュースは言った。今度の《2447》はテレビの画面をカメラで撮った確かな数字ですが、変ですね。
 
〈2447〉とは何人を検査した結果の数字で何パーセントなのでしょう。テレビはそれを言いません。千人を検査したうちの2447人なら、244.7パーセントの人間が感染してるということでしょうか。東京都民1300万人のうち、3181万1000人がコロナの感染者なのかな。
 
〈一日千人前後〉のまま検査態勢を強化したことがないならそうなりますね。〈2447〉の前日が何人だったか憶えてないけど、確か1600人くらいでした。一日で1.5倍。凄い増加のようですが、何人を検査しての結果なのか。
 
テレビはそれを言いません。言うのは〈新たな確認数〉だけ。けれどもそれは、検査態勢を強化すれば必然的に増える数字じゃないでしょうか。
 
東京都民1300万。うち10パーの130万が感染者であるとします。最初の日に千人検査し100人確認。次の日に1500人、次の日2250人、と検査人数を1.5倍にしていけば、
 
 
  第1日目。1000人検査し100人確認。
  第2日目。1500人検査し150人確認。
  第3日目。2250人検査し225人確認。
  第4日目。3375人検査し337人確認。
  第5日目。5062人検査し506人確認。
  第6日目。7593人検査し759人確認。
  第7日目。11390人検査し1139人確認。
  第8日目。17085人検査し1708人確認。
  第9日目。25628人検査し2568人確認。
 
 
こうなって、9日目に2568人を〈新たに確認〉することができる。実際の感染者はひとりも増えてないんですがね。検査態勢を強化しながらそれを明らかにしないのならば、拡大していないものを拡大してるように見せかけられる。
 
のではないでしょうか。私は政府はこれをやってると思います。今でも日に千人を検査しているのであれば〈2447〉は有り得ない。2447ならば1300万人のうち何パーセントの推定何万が感染してることになるのか。
 
そのような発表の仕方はしない。そしてこの日に何人が死んだかという発表もない。
 
おかしいとは思いませんか。検査態勢を強化するのにどんな意味・どんな必要があるのでしょう。千人検査して二百人が〈陽性〉ならば20パー。「都民1300万人のうち260万人が推定」と言えるはずです。二千人を検査して四百人なら20パーで、「都民1300万人のうち260万人が推定」なのは同じなので態勢を強化することの意味も必要もあるはずがない。
 
なのに首相や東京都知事は「さらなる検査態勢の強化が必要」と言って野党の議員達もそうだそうだと賛同している。〈パーセント〉や〈推定数〉を出すための検査でなくて〈新たな確認数〉を増やすのが目的の検査なのか。
 
それはおかしい。私はコロナの感染報道は、
 
「本日は1234人を検査し、98人が陽性と出ました。感染者の割合は都市部で12パーセント、平均8パーセント。一万人あたり800人がコロナに感染している見込みです。首都圏で推定三百万人、日本全体で一千万人……」
 
と、このようにやらねばならない。これが正しいやり方だと考えます。こうでなければ感染の状況を正しく伝えるものにならない。
 
だから今の報道の仕方は正しくない。本当に増えているなら割合を言う。
 
「感染の推定割合49.8パーセント。49.9。50。50.1……ああっ、半数を超えてしまいました!」
 
というふうに言う。これでなければどのように増えているかがわからない。
 
「本日新たに1139人の感染を確認。過去最高を更新」
「本日新たに1708人の感染を確認。過去最高をまた更新」
「本日新たに2568人の感染を確認。過去最高をまたまたまたまた大幅に更新」
 
これは物凄い勢いで拡大してるように見えますけれどどのように拡大してるかわからないでしょう。なぜ割合で言わないのか。
 
言えないのじゃないでしょうか。実は今、厚労省の中では、
 
「感染の推定割合10.2パーセント。10.1。10。9.9……ああっ、一割を切ってしまった!」
 
なんて言ってるなんてことはないんだろうな。
 
日々のニュースを見ていて私はそんな気がします。増えるどころか、減っている。12月の初めあたりから減り始め、今や何パーセントもない。コロナは自然消滅しつつあるということなんじゃないのか。
 
厚労省はそれを掴んでいるのだけれどそれでは困る。自分達のワクチンで国を救ったということに彼らはしたい。できなければ、彼らの立場がないからです。だから収束しつつあるのを、拡大してるよう見せかけている。
 
だからさらなる検査態勢の強化を、と政治家どもに言い、おっさんという生き物はおっさんだから何もわからず厚労省に言われるままに三遍回ってワンワン吠えて尻尾を振ってる。おっさんどもも彼らの力で国を救ったということにしたいから。
 
私は日々のニュースを見ていてそんな気がするがどうでしょう。コロナの〈禍〉など全部が全部厚労省の嘘じゃないのか。
 
私は最初の頃からそんな疑いを持っていましたが確信したのは去年の10月のことです。その前の8月後半に、死者・重症者が一時的に増えたことがありましたね。あのときにテレビのニュースは、それが始まった3日目に、
 
「3日前から一日の死者・重症者が先週の3倍になっています。第2波だ。これは第2波です!」
 
と叫び立てましたが、私は、
 
「いや、ここ3日ほど、熱帯夜が続いてるからそのせいだろ。クーラーかけてハダカで寝たようなやつらが発症したのさ」
 
とだけ思って聞きました。去年の夏は8月の半ばを過ぎてやたらと暑くなり、夜になっても気温が下がらない日々が2週間も続いたのを思い出してください。熱帯夜がやっと終わった翌日、テレビが、
 
「死者・重症者が急にピタリと元の数字に戻りました。不思議です。ウイルスは何を企んでいるのでしょう」
 
と言うのを私は「バカ」とだけ思いました。
 
それからひと月が過ぎた10月初め、テレビをつけたら池上彰が、
 
「8月のあれが第2波だったかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれています」
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之