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戦闘員のお兄さん、教えてください。ショッカーは何故、


 
アフェリエイト:バイオニック・ジェミー
 
ジェミー・ソマーズは改造人間である。スカイダイビング中の事故で瀕死の重傷を負った彼女は、体の一部を機械に置き換える手術を施され、〈バイオニック・ウーマン〉として生まれ変わった。彼女は世界征服を企む闇の結社〈ショッカー〉の繰り出す怪人達と戦うのだ。
 
……違う。そういう話じゃない。そういう話じゃないけれども、まあ似たようなものとも言える。往年の海外ドラマ『バイオニック・ジェミー』はおれがガキの頃、お気に入りの番組だった。
 
主演のリンゼイ・ワグナーがいい。美人だけどあんまり007映画のボンド・ガールみたいにバタ臭い感じじゃなく、日本人の眼で見てかわいい。別にロリでもないが。大体おれは昭和の頃には『秘密のデカちゃん』の大場久美子とか、『お笑いマンガ道場』の川島なお美とか、『江戸を斬る』の松坂慶子、『熱中時代』の志穂美悦子なんてなところが好きでテレビにかじりついて見ておりまして、『奥様は18歳』とか『時をかける少女』とか『セーラー服と機関銃』みたいな少女路線には
 
やり直し。『バイオニック・ジェミー』じゃなくて、『仮面ライダー』の〈ショッカー〉ですよ。怪人がなんかやたらに悪いことして、世を恐怖に陥れる。とは言っても、おれの手元に中島らも・著『ますます明るい悩み相談室』(1991・朝日新聞社)という本があって、これには、
 
画像:ますます明るい悩み相談室26-27ページ
画像:ますます明るい悩み相談室28-29ページ
画像:ますます明るい悩み相談室表紙
 
こんなことが書いてある。てわけでまたグリ森事件の〈かい人21面相〉だ。彼らは愉快犯であり、事件は劇場型犯罪だった。それは確かだ。しかし今の世の中だって、劇場と言えば劇場だろう。世界全体が悪の組織で、恐怖支配を行っている。「1月7日に緊急事態宣言を出すが、一ヶ月後に解除します」なんてなことを12月から予告している。
 
それってほんとに緊急事態の宣言なのか。
 
「緊急事態を宣言します」
 
と言ってみたいだけなんじゃないのか。「ミゾウユウの危機です」とか、「オレはコカ・コーラよりペプシを選ぶ男だぜ」とか、言ってみたくて言うのだけれど、ただ言うだけじゃつまらないからタメを作る。おれがこの、
 
ゴルディオンの結び目
http://2.novelist.jp/73396.html
 
書いて出してる話の中で主人公に「俺は」と言わす。そのためさんざんタメを作ったみたいにして予告を出し、
 
「首相! 1月7日に緊急事態宣言を出すというのは本当ですか!」
「出します! そして一ヶ月で解除します!」
「これはそれほどの状況と考えてよろしいのですね!」
「そうです! そして一ヶ月で解除します!」
「予定に変更はないのですね?」
「ありません! そして一ヶ月で解除します!」
 
なんてやってるのを歳末におれはあきれて見ていたのだが、ああいうのが本当に緊急事態なんかしらん。
 
緊急事態宣言ごっこをやっているだけなのと違うか。
 
で、結局解除するにも、解除する理由をつけられないもんだから続けるしかない。仔猫が木に登ったが降りられなくなったようなもん。大体もとから何が緊急事態なのかの基準や根拠というものがなく、今になってルービックキューブを解けると言っておきながら解けない人間のようにオタオタしてる。
 
だけじゃないのか、あれは。ちなみに、おれはルービックキューブを自力で解いて解き方もちゃんと自分で見つけました。かなり時間がかかったけどね。
 
1月7日に政府は緊急事態宣言を出した。けれどもあれは、
 
「緊急事態宣言をします。一ヶ月で解除します」
 
と言いたかっただけではないのか。言って見せねばならなくなったものだから言って見せただけのことで、具体的に何をしたかと言えば、してない。何ひとつ。緊急事態宣言を出しただけの緊急事態宣言。
 
去年の歳末あたりから、前々からそうであった政治家や学者の顔がますます、
 
画像:大阪府警刑事部長
 
この人みたいになってきて、マスコミが、
 
「これまでかなり、そのう、コロナ禍でえ、そういうことについてですねえ、今度はまあ、それに輪をかけたもんであるかという、そこらへんの感触は、先生個人としては……」
 
なんて訊くのを眼を泳がせながら「うん」「うん」と頷いて聞き、明らかにほんとはなんにもわかってないのにわかったフリして、
 
「あー、○○○○ませんがぁ、○○もぉ、○○○○○○ということですよね? どれも推定の範囲を出ませんがぁ、○○もぉ、○○○○○○というゴニョゴニョゴニョ……」
 
なんて言う。画面下のテロップに頼らず、その眼と口調に注意しながらよく聞けば、与党議員だの学者だのがひとり残らずそうであり、質問に応えながらも、
 
『俺、間違ったこと言ってないよな? みんなが大体こんなこと言っているからこれで正しいんだよな?』
 
と自分に言い聞かせている。そんな彼らの心の声がダダ漏れに流れ出てるのがおれには骨伝導というのか何か、よく聞こえてくるのだけれど皆さんの耳はどうですか。
 
画像:刑事部長(今度はそれに輪をかけた)
 
去年からずっと、マスコミは1984年のこれとそっくり同じ感じで政治家や学者に詰め寄るが、受ける〈先生〉達の眼はそのとき必ず泳いでいる。『やめてくれ。そんなことを訊かないでくれ。俺が知るわけないだろう。わからないんだ。訊かれても、俺には全くわからないんだ。他の学者が言ってることが、俺にはひとつもわからないんだよう』という顔を専門家のはずの者らが必ずしているのだが、それでも専門家なのだから応えて何かを言わねばならない。
 
 
「ショッカーは何故、悪いことばっかりするの?」
 
 
中島らもの『ますます明るい悩み相談室』で、このページに挿絵を寄せたみうらじゅんの大学時代の友人がライダーショーで戦闘員のバイトをしていて子供にこう質問されたときのように。おれが白く塗り消したところに何が書いてあるかはこの本をどうか手に入れてみてほしいが、
 
   *
 
「あー、全くわかりませんがぁ、その線もぉ、捨てられないということですよね? どれも推定の範囲を出ませんがぁ、その線もぉ、捨てるわけにはいかんというゴニョゴニョゴニョ……」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
まあわかるだろう。大体のところこれと同じだ。1984年4月10日。大阪府警の刑事部長は〈ミスター・グリコ 加藤譲〉らしく見える記者の問いにこう応えた。つい応えてしまったのだ。結果として、
 
「グリコ社長誘拐と同一犯の線が濃厚」
 
ということになってしまい、少しは追ってみるべきだった無関係なアカウマの線が捨てられた。
 
捨てられてしまったのではないか、という話を前々回に書きました。そうしてさらに、根拠と言える根拠もなしに同一犯の犯行だと断定された。それはこの、
 
画像:四方修(いやそんなことはないよ)
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之