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端数報告3

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宣言の前と後とで何が変わったか。変わっていない。なのに減る。だが減少に転じると言ってもそれまで1000・1600・2447と幾何級数に増えてたのだから1月8日に3200くらいになり、9日に3800くらいになって、4200・4500・4800・4700となって初めて4500・4200・3800……という具合にカーブを描いて減り出すのが自然な流れというものじゃないのか。
 
画像:グラフ4
 
そうだろう。だが実際はこんな具合だ。紫の線が実際の推移で、不自然なこと極まりない。
 
このラインはどう見てもおかしい。だから前から言ってるように、去年12月くらいから実は消滅に向かっていた。これは消防署の方から来た人の数を数えるグラフ。1月7日に緊急事態宣言が出ることは、何日も前から予告されていてわかっている。だから1月5日に2万人、6日に3万人を検査して1000・1600と出し、当日7日に頑張って、頑張って頑張って頑張って4万5千人もを捕まえて鼻の穴に綿棒突っ込み、2447という数字を無理矢理出した。いや実際に何人を検査したのかおれは知らんがたぶんこのくらいだろう。しかしそこまでが限界で、翌8日から以降は毎日3万人。
 
それが厚労省の〈陽性作戦〉でできる限界であり、実は減っているがゆえにゆるやかな下降を見せる。今では一日の〈妖精〉、つまり新たな確認数は300に満たず、3万人の鼻の穴に綿棒突っこんで300以下なら割合は1パーセント以下になる。
 
そんなもんだろう。実はとっくに別の風邪ウイルスが生まれて広がりコロナは消えつつあるんだよ。そうに決まってる。というわけで、今回はグリ森でなくコロナウイルスの話なのだが、そうだな、おれがコロナの〈禍〉についていつから疑いを持ってたと言えば、まあ最初から持っていた。と言うより無関心で、外国で人が死んでる話を聞いても「ふうん」としか思わない。
 
それが変わるのが3月初め、図書館が閉鎖になったときだ。帝銀事件のブログを始めた矢先だったから慌てたね。確かあのとき、「インターネットは一切参照せずに書く」と既に宣言していなかったっけ。
 
その方針を変える気はなかった。おかげでしばらく手持ちの資料だけでやんなきゃならなかったが、結果かえって良かった気が今はするな。とにかく、図書館が閉鎖になったのを知った日に初めて、
 
「一体なんだと言うんだ。一万人も死んでるのか」
 
と思ってニュースを見て、2月の死者が400人だったと知る。
 
そのくらいに無関心だった。と言うより頭の中が帝銀事件で一杯だったわけだけれど、
 
「400人? また、微妙な数字だな。これ、本当に多いのか」
 
というのが感想だった。〈多いのか〉というのは〈例年と較べて〉だ。例年と較べて多いのか。多いとしてどの程度? と、最初に思ったのがそれだ。肺炎で死ぬ人間が去年ゼロ人だったってことはないだろう。去年だってその前だって、毎年2月に400くらい普通に死ぬもんなんじゃないのか。
 
そう考えた。しかしニュースは例年の平均死者数を言ってくれず、較べて多いかどうかわからぬ。まるで平成の30年間にひとりも死んでいないのが先月400だったようにわめき立てるのを聞かされるだけ。
 
そこでまず引っかかったが、おれも例年の平均を知るわけじゃないからなんとも言えない。が、ゼロ人はないだろう。100人なら4倍だが、300ならばちょい増しに過ぎない。こういうもんは例年との比較で考えるべきことで、今年の2月だけ見せられて〈禍〉だと言われても困る。100なら4倍、300ならちょい増しだ。違うか? 違わないよな、という感慨しか生まれない。例年の平均が100で4倍が死んだとしても、まあ大変なことかもしれぬが、しかし〈禍〉と呼ぶほどの大量死なのかどうなのか。それもかなり疑わしい。
 
「今年の風邪はどうやらほんとにタチが悪いんだってねえ。毎年百人くらいのものが四百だってさ。気をつけな」
 
とひとこと言っておしまいの程度じゃないのか。そう思った。いやそれどころか毎年500も死んでたりして、今年はむしろ少なかったなんて後から言い出さんだろうな。
 
そんなふうにさえ思った。おれには400人というのはそのくらいに微妙な数字としか思えなかった。今も結局例年の平均死者数を知らぬままなので疑ったままだが、おれが知らないだけですか。あなたはただの一度でも、テレビのコロナ番組がそれを言うのを聞いたことがありますか。
 
月に400。交通事故や火事で死ぬ人間の10分の1だ。
 
自殺で死ぬ人間は年に3万人という。その多くが老人で、一ヶ月に2500。400はその6分の1だ。
 
おれにはそうとしか思えぬ数字。だがニュースは400ですよ、400ですよ、400なんですと泣きながら言う。400なんて! 400なんて! ああ、400! 恐ろしい! これがどんなに途轍もない数字かわかりになるでしょう! そうです。この世の終わりです! この世の終わりが来てしまったということなんです。もうダメだ! 我々はこのウイルスにひとり残らず殺されるしかないのでしょうか。400なんて! 400なんて、そんな。そんなあ。うわあああ! うわあああああっ!!
 
とわめき立てる。その割には世間は落ち着いたもののようだが、なんだかなあ。そして「危惧されるのは第2波」と言い、「なんだ」と思いながらに聞くと、海外にはいま日本にいるのより毒性の強い型がいて、それが入って広がるのを心配しているらしい。
 
「ははあ、なるほど」
 
とこれには思った。そうなりゃ一万死ぬこともあるのか。それはわかる。そういう話ならわかる。けれども、だったら図書館を閉めるのになんの意味があると言うのか。
 
関係ねーだろ、どう見ても。としか思わぬ3月だった。おれとしては帝銀事件のブログを書くのが何より大事だったのである。
 
で、志村けんが死んだ日にちょうど米を切らしてしまって、買いに行くと米がない! 「えーっ?」と思いながらに麦買って、炊いて食べたよ。いや驚いた。その後たぶんすぐくらいに、ニュースが、
 
「昨日は東京で千人を検査し80人だったから8パーセント。もし10パーになってしまったら第2波が……」
 
とか言うのを聞いて「バカか」と思った話は再三してきたね。そしてそのとき、実は既に、
 
「感染が拡大すると第2波が起こる? なんだそりゃ?」
 
と思っていた。このあいだまで、海外からより毒性の強いコロナが入って広がるのが第2波と言ってなかったか。話が変わってねえか、と思ったのだ。外から日本により強い型のウイルスが入ってくれば一万人が死ぬことになりかねないと言うのはわかる。
 
そういうことになればそいつは〈波〉だと言える。だから心配するのはわかる。
 
が、
 
 
   感染が拡大すると第2波が起こる
 
 
これはわからん。まったくわからん。意味不明だ。おれにはこれは、再三書いてきたように、
 
 
   風が吹くと桶屋が儲かる
 
 
こう言ってるのと同じにしか聞こえない。なぜそうなるかの説明が何もないからだ。風が吹くと何がどうなることによって桶屋が儲かることになるのか。
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之