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端数報告3

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陽性作戦 ラスト・レター


 
グリ森事件が起きたのはおれが高一・高二のときで1984-85年。同じ頃に世に出た本に〈笹本祐一『妖精作戦』全四巻〉というのがあった。これの三巻目『カーニバル・ナイト』に、ヒロインの少女が風邪を引きつつ外を出歩く場面がある。
 
これはかなり知られた作だし、スキャンして見せなくても話を疑う者はなかろう。当該の場面、〈ACT7(第7章)国立ランデブー〉からセリフだけを抜き出してみると、
 
   *
 
「はっくしょん!」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫――はっくしょん、くちゅん、くしゃん、っくしょん」
「ほんっとーに、大丈夫か?」
「くちゅん」
「今年の風邪は性質(たち)悪いってよー。大丈夫かい?」
「あんまり大丈夫くない……」
「熱、ある?」「熱っぽいのは確かだけど……帰って寝てた方がいいんじゃ……」
「大丈夫、わたし健康!」「くしょん」
「言葉に説得力とゆーものがまったくないんだけど」
「絶対帰んないんだからあ」
 
アフェリエイト:妖精作戦カーニバル・ナイト
 
こんな感じ。このシリーズの世界では1984年秋に突如として東京湾にゴジラが出現し阿蘇からラドンが飛び立ち、スターウォーズがうる星やつらして時を駆ける少女してしまい、日本中がわやくちゃになる。なんのことかわからぬ人は買って読むこと。作中にはこの三作目のとき、新宿の歌舞伎町が風営法でどうとかいった記述があり、その改正・施行がされた前後が話の時間設定なのは疑いがない。
 
1985年2月だ。が、さてここで男は「今年の風邪はたち悪いってよー」と言うが、この年の風邪はタチが悪かったろうか。
 
わからんな。風営法のことはなんとなく憶えているが、この年の風邪の記憶がおれにはない。「今年の風邪はタチ悪いってよ」「今年の風邪はタチ悪いってよ」というのは本当にそうかどうかに関わりなく毎年言われる言葉のようにしか思えない。
 
そして毎年必ず言われる。「ただの風邪と思って甘く見るんじゃない。風邪は本当は怖い病気だ。肺炎になって死ぬ人がたくさんいるんだぞ」と。そんな話をここで再三してきたけれど、1985年の風邪が本当にタチ悪かったなら、それはこの年の1月に例年を大きく超える肺炎の死者が出たということじゃないのか。
 
だから2月になって「今年はタチが悪いってよ」と言う。そういうことなんじゃないのか。だからヒロイン・小牧ノブは大丈夫でも、この少女が出歩くことでバタバタと人が死ぬ。それが広がり何百・何千・何万人。〈禍〉だ! これは〈禍〉だ!! 一体誰がこの災厄を引き起こしていると言うんだ――っ!!!
 
ということになることに、今この令和に学者や政治家やマスコミが言う理屈でならんのだろうか。
 
ならなかったらおかしいよな。
 
コロナと例年の風邪は違う? そうか? コロナでは感染者が一度外を出歩くたびに千万人が確実に死んでくように喧伝(けんでん)されるが、実際は、人はたいして死んでないじゃん。人が死なんならそれは〈禍〉でなく、人が言うほどタチが悪いのかどうかもわからない風邪が流行してるだけだろう。去年の2月・3月には確かに死者が多く出たようでもあるが、あれだってかなり微妙な数字だよな。志村けんが死ぬまでは、半信半疑で聞いていた人の方が多かったんじゃないか。今におれがここに書いているものも、半信半疑で読んでいる人がほとんどじゃないかと思うが。
 
まあいずれ、おれが正しいことがわかるさ。おれは『小説:グリコ・森永』で、グリ森事件の犯人グループのことを、
 
   *
 
彼らは極悪デスラーでなく、どこか気のいい海賊キャプテン・ハーロックだった。
 
ヤマト航海日誌
https://novelist.jp/71614.html
 
と書いた。笹本祐一の『妖精作戦PART IV ラスト・レター』では、同じふたりがまたセリフだけ抜き出すが、
 
   *
 
「……笑うなよ。ガキのころ、宇宙海賊になるのが夢だった」
「うちゅうかいぞくー?」
「だからガキの頃の話。超光速宇宙船で星から星へ、なんて、もうとっくにあきらめたよ」
「どうして?」「素敵な夢じゃない」
「先が見えてきたからねえ。現代技術じゃ、超光速宇宙船なんて相当先のことになりそうだし」
 
アフェリエイト:妖精作戦ラスト・レター
 
こんなことを話す。〈コロナの禍〉とやらいうのもどうやら先が見えてきたようなので、今回は、前回の続きを書く予定を変えてその話をすることにしましょう。
 
〈コロナの禍〉は先が見えた。1月7日に東京で2447人だった〈妖精〉の数が今や日に300足らず。一ヶ月で一割に。
 
有り得ねえよな。それまで幾何級数に増えてたのがさ。先月の10日くらいにこんなことテレビの中で予測した〈専門家〉はただのひとりもなかったはずだ。全員が、
「一時的な減少でしょう。また増え出して4000にもなるに違いありません」
とか、
 
画像:グラフ3
 
「こんなふうに波打ちながら減っていくことでしょう」
なんてなことを言ったのばかり。まあ専門家らしいと言えばらしい見方ではあるよな。だから、もっともらしい。そして国民全員にワクチンを射つことなしの終息は絶対にない、というのが完全に一致の意見だったはずだ。間に合わなければ結局は、地球人類滅亡・絶滅。
 
第3波は東京で起こる。コロナは発生したときから、日本を狙っていたのだから。油断させながら近づいて、感染を広げる策略だったのだから。それは日本が地球の表半球に位置する島国だからであり、皇居のある経度が中心線だからだ。
 
画像:『ヤマト』エンドクレジット・企画構成西崎義展
 
そうだ。これだ。これなのだ。だからコロナは第3波を東京で起こす考えで、〈波〉が起きたとき日本人の全員が死んで世界に広がり、全人類が死んで地球はもちろんのこと、宇宙全体が消滅する――という、学者・政治家・マスコミ人種の頭にあるのがこの八紘一宇思想なのは、彼らが自分で意識はしてないだけでそうであることがテレビを見ていてわからねばいけない。
 
なぜなら、彼らはおっさんであり、おっさんの頭は必ずこのように働くからだ。1997年・神戸の酒鬼薔薇事件のときがそうだった。ひとりのバカな中学生のために国がわやくちゃになったけれど、真の犯人はおっさんどもだ。
 
画像:四方修(そんなバカなことありえない)
 
画像:もしくは勝手に開けて食べられたらえらいことやしね
 
これだ。これがおっさんだ。で、今年のコロナだが、あらゆるテレビ専門家の予測と違って実際は、実に奇妙な推移を示した。幾何級数に数を増してた〈妖精〉の数は緊急事態宣言の翌日にもうガクンと落ちて、その翌日からゆ〜るやか〜に減っていく。
 
妙だ。宣言が出たからと言って、人々の暮らしに特に変わりがあったわけではない。それ以前から人は出歩くことができず、正月にも親とも会えず初詣にも行けなかった。
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之