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端数報告3

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これはこの番組をどうにかして見て確認していただくしかないのだが、そうなのだ。おれが思うにこの記者は記者にあるまじきことをしている。警察の刑事部長に警察幹部としてでなく個人の感触を聞いているのだ。放火事件はいま起きたばかりであって、調べはこれから。まだなんにもわからなくて当たり前だとわからなければならないはずの段階なのに。
 
それを既に同一犯の犯行だと決めつけていて、そうだと言えと強要している。これはそう見るしかあるまい。そしてまた、「これまでかなり、そのう、脅迫文でえ、そういうことについてですねえ」などと言うけれど、このときはまだ数通の脅迫文に犯人はどんなことを書いてきたと言うのか。
 
この放火二日前の手紙では、
 
警察のアホどもへ
お前らアホか
人数たくさんおって何してるねん
プロやったらわしら捕まえてみ
これだけ教えてもろて捕まえれんかったら
お前ら税金ドロボーや
県警の本部長でも攫たろか
 
という調子で警察の愚弄に終始し、グリコについては何も書いてないではないか。放火の何がこれに輪をかけたものだと言うのか。
 
放火なら交番に火炎瓶でも投げ込んだらいい。そういう事件は昭和の時代に多く起きたが、一体、どちらが標的なのだ。《県けいの 本部長でも さらたろか》と書いておきながらグリコに放火。
 
妙と言えば妙だろう。県警の本部長を誘拐なんて、とても本気とは思えない。が、ともかく刑事部長は茶色の記者に、
「あー、全くわかりませんがぁ、その線もぉ、捨てられないということですよね? どれも推定の範囲を出ませんがぁ、その線もぉ、捨てるわけにはいかんというゴニョゴニョゴニョ……」
と言ってしまった。言わされてしまったのだ。そのように見える。この映像を見る限りでは。ビデオに撮られて何十年も残るかたちで言質を取られてしまっているように見える。
 
彼の言葉は警察幹部のものでなく、彼個人の己の感触のものとして茶色の記者に言わされたものだ。だがその部分が隠されて、警察幹部が警察を代表して、
「その線が濃厚だ」
と言ったように話が作られてしまっている。おれにはこれはそのように見える。
 
この〈茶色〉だが、おれにはこれが、
 
画像:中沢健と著作本
 
この人と同じ人のように見える。髪型はまるで違うが口元がやっぱりちょっと似ているような。って、いやいや、ネッシーだのツチノコだのの研究家にして「ゴジラVSビオランテが大好きだ!!!!!!!」と言う、動く待ち合わせ場所。事件があればせっかちな緊急検証をやらかして、
 
「怪獣ゴジラが出現した。それが日本にやってくる。その原因を作ったのは江崎グリコという一企業であるらしい……」
 
なんて話を作って世に広めたがる。これは、そういう人だ。この〈茶色〉だが、中沢健、いややっぱりミスグリ加藤譲なのだろうか。
 
まあそれはいいとして、いずれにしても刑事部長は決してこう言うべきでなかった。
「今の段階では何もはっきりしたことは言えません。何もわかっていることはありません」
とだけ繰り返し、間違っても、
「その線も捨てるわけにはいかない」
などと言うべきでない。中沢健、いや〈茶色〉のような記者が言うことに対しては、
「そのような質問には答えられません」
の一点張りで返さねばならない。その点でこの人は、警察幹部としてやってはならないミスを犯していると言う他ないだろうな。
 
――で、さてナレーションは、
 
《捜査本部はその後、社長の誘拐と一連の放火は同一犯によるものと断定》
 
と続けるが、何を根拠に同一犯と断定したと言うのだろうか。
 
この番組はそれを言わない。犯人から「あれはもちろんわしらがやったことや」という手紙でも来たのだろうか。ならばともかく、ウィキにも、
 
   *
 
出火の直後には、帽子を被った不審な男がバッグを抱えて逃げるのが目撃されている。
 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%BB%E6%A3%AE%E6%B0%B8%E4%BA%8B%E4%BB%B6
 
とあるぐらいで、同一犯の根拠と言えるようなものはない。では何を根拠にして断定されたというのだろうか。
 
まあもちろん、番組が言わず、ウィキに書いてないだけで、充分な根拠があるのかもしれない。が、そうではないのじゃないのか。
 
大阪府警本部長・四方修が同一犯だと言ったから断定されただけじゃないのか。
 
画像:四方修(いやそんなのないよ)
 
そうか? 合同捜査体制自体は社長誘拐直後からあり、合同捜査本部も出来た。が、〈兵庫・大阪〉の順で、主体は兵庫県警にある。江崎グリコ社長の宅が兵庫県西宮にあり、事件はそこで始まったからだ。
 
そして犯人が新聞社に送ってきた手紙には、
《県けいの 本部長でも さらたろか》
と書かれていた。「県警」と言うからには兵庫県警のことであり、大阪府警本部長のことではない。
 
四方にはそれが気に入らない。他の県警本部長でなく、自分が犯人に攫われたい。じゃなくて、捜査の主導権が兵庫にあるのが気に入らない。
 
画像:四方修(そんなバカなことあるわけない)
 
嘘つけ。しかし、放火は大阪で起きたのだ。だから大阪府警の事件だ。監禁の場所も大阪だったのだから、最初からみんな大阪の事件なのだ。
 
よって解決したならば手柄は自分のものである、という、ただそれだけの考えで放火は同一犯によるものだと断定した。だろう。そうに決まっている。
 
画像:四方修(そんなの全然ダメだ)
 
へーえ、そうですか。しかしおれとしても、この放火に関しては帰納法的アプローチを取るしかないことを告白しよう。これからおれがここに書くのは帰納的推理である。蓋然的な確かさしかもたない。おれ個人の感触でゴニョゴニョ言うしかないことをゴニョゴニョと言うだけである。
 
それを断ったうえで書くけど、この放火は一連の事件と無関係なアカウマ、つまり放火魔の仕業なのではないだろうか。よく道端のゴミなんかに灯油などをかけて火をつけたりする、その手合いだ。それが4月8日の脅迫状のニュースなど見て、これに刺激を受けてグリコに放火した。
 
というのはあくまでも、おれの帰納的推理である。つまり推理などではない。けれども番組が映す実際の映像の刑事部長も、〈茶色〉の記者に訊かれる前には、『たぶんその線じゃないか』と思っているように見える。
 
いや、おれにはそのように見えるというだけだけどね。放火ってのは大体が、そういうやつのする犯罪で、一連の事件の中でこれだけ浮いてるような気がするのだ。もちろん感触で言うだけで、帰納的推理なんだけど。
 
おれが〈楽天コボ〉で売ってる、
 
バレずに済めばいいことだもの
https://books.rakuten.co.jp/rk/ade0b7a819f03460bf1691f3d0809461/?l-id=search-c-item-img-09
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之