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端数報告3

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画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
この番組だ。ナレーションはイントロダクションでこの男の写真を見せて、
 
   *
 
画像:加藤譲
 
(略)ドラマは、実在の人物が登場する。事件発生から取材を続け、ミスター・グリコと呼ばれた加藤譲記者。ドラマはこのひとりの記者の目を通して事件の深い闇を描いていく。
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
と述べる。再現ドラマはなんだかんだ言いながら見応えのあるものである。ぜひ観賞をお勧めたい。
 
というわけで前回の続きだ。と言うより前々回の続きかな。最初の事件がひとまず終わって、
 
   *
 
(上川のナレーション)江崎グリコ社長が脱出したとき、正直これで事件も解決すると思うた。せやけど実際は、ここからが事件のほんまの始まりやった。ちょうど同じ頃、大阪でもうひとつ、別の誘拐事件が起こった。わが読売新聞は、そのとき報道についての取り決めを破ったとして、無期限のボックス閉鎖という厳しい制裁を受けることになった。この事件に関しては出だしからツキがなかった。
 
毎日新聞記者・吉山「おー、ええ気味やん」
その後輩らしき者「言い過ぎですよ」
加藤譲「ぐっさん、聞こえてんで」
吉山「気にすんなや。心の声や」
記者C「ちっ。会見もレクも出られへんのでしょう。どないすればええんですか!」
加藤「倍の時間かけて取材したったらええねん」
記者D「絶対に抜きまくりましょう」
加藤「うん」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
となった読売・大阪。そこに事件から三週間後、ここはウィキから引用するが、
 
   *
 
4月8日には、犯人グループから大阪の毎日新聞とサンケイ新聞へ手紙が届く。マスコミ宛に世間一般への公開を前提とした初めての挑戦状だった。手紙には無署名で封筒の差出人名は江崎の名前を使っていた。
 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%BB%E6%A3%AE%E6%B0%B8%E4%BA%8B%E4%BB%B6
  
となってその文面はこう。
 
   *
 
けいさつの あほども え
 
おまえら あほか
人数 たくさん おって なにしてるねん
プロ やったら わしら つかまえてみ
ハンデー ありすぎ やから ヒント おしえたる
 江崎の みうちに ナカマは おらん
 西宮けいさつ には ナカマは おらん
 水ぼう組あいに ナカマはおらん
 つこうた 車は グレーや
 たべもんは ダイエーで こうた
まだ おしえて ほしければ 新ぶんで たのめ
これだけ おしえて もろて つかまえれん かったら
おまえら ぜい金ドロボー や
県けいの 本部長でも さらたろか
 
   *
 
しかし、これが届いたのは毎日新聞とサンケイ新聞の二社であり、読売の仮ボックスには来なかった。上層部から電話。
 
   *
 
加藤「はい加藤」
相手「挑戦状のこと聞いたか」
加藤「いま聞きました」
相手「そっちには来てるか」
加藤「こっちには来てませんよ」
相手「なんでウチには来(け)−へんねん!」
加藤「そんな知りませんわ!」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
となる。その二日後、4月10日だ。加藤達が夕食を取ってるところに連絡があり、
 
   *
 
「グリコが燃えとる」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
グリコの施設が放火される事件が起きた! ウィキによるとその日の夜9時10分前、
 
   *
 
(ナレーション)大阪市内にあるグリコ本社の一画が放火され、ひと棟が全焼。その直後(ウィキによると9時20分)、3キロ離れた子会社でも会社のクルマが放火された。
 
事件現場らしきところで記者団のうち一名が、「誘拐犯との関係をちょっといろいろ解説して……」
大阪府警刑事部長、「全くわかりません。それは全くですね」
別の記者、「これまでかなり、そのう、脅迫文でえ、そういうことについてですねえ、今度はまあ、それに輪をかけたもんであるかという、そこらへんの感触は、部長個人としては……」
刑事部長、「あー、全くわかりませんがぁ、その線もぉ、捨てられないということですよね? どれも推定の範囲を出ませんがぁ、その線もぉ、捨てるわけにはいかんというゴニョゴニョゴニョ……」
 
(ナレーション)捜査本部はその後、社長の誘拐と一連の放火は同一犯によるものと断定。カネ目当てに加え、恨みという線でも捜査を始めた。事態を重く見た警察庁は一連の事件を広域重要一一四号事件に指定した。
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
となって兵庫・大阪の合同捜査本部設置。しかし、おれはこれを見て、
 
「うーん」
 
とならざるを得ない。
 
そして思う。この放火は、本当に誘拐と同一犯の仕業だろうか。
 
番組が映す当時の実際の映像の中で、大阪府警刑事部長は最初は詰め寄る記者達にタジタジという感じになりながらも、
『まあまあまあ。そう結論を急がずに』
という顔をして聞いている。で、
「全くわかりません。それは全くですね」
と応えるが、先を続けようとしたところで横から別の記者が割り込んでくる。で、そいつが、
「これまでかなり、そのう、脅迫文でえ、そういうことについてですねえ」
と言うのを、
 
画像:刑事部長アップ
 
こういう顔して聞く。「うん」「うん」と相槌を打ちながらに聞くのだが、
 
画像:刑事部長ロング
 
画面はズームアウトしてロングに。記者は、
「今度はまあ、それに輪をかけたもんであるかという、そこらへんの感触は、部長個人としては……」
と続けるが、それが画面右にいる茶色の服にネクタイの男。しかしこいつ、
 
   加藤譲じゃないのか?
 
と思った。口元が似てる気がするし、髪型が再現ドラマの上川と同じだ。当時はまだ顎髭生やしてなかったらしい。
 
だからこれこそ、ミスグリ加藤譲のような気がする。違っていたらごめんなさいだが、刑事部長が他の記者の質問に応えているのに横から割り込みこんな質問を浴びせる男。
 
で、刑事部長はこれに、
「あー、全くわかりませんがぁ、その線もぉ、捨てられないということですよね?」
 
画像:刑事部長(全くわかりませんが)
 
と応える。テロップと微妙に違うが本当はこう言っているのだ。茶色の記者がこういう聞き方するものだからこのように応えるしかなくなった感じ。
 
で、気づいてほしいのだが、茶色の記者は「今度はまあ、それに輪をかけたもんであるかという」に続けて、
 
「そこらへんの感触は、部長個人としては……」
 
と聞いている。しかしそれはテロップの文としては表示されない。
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之