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端数報告3

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《犯人グループが要求した現金10億円は高さ9.5メートルで重量は130kg、これに加えて金塊100kgでは運搬が困難であり、合同捜査本部ではどこまで犯人グループが本気で要求していたのかいぶかる声もあったが、要求に従ってグリコはそれらを用意した。社長の母や社長夫人が犯人に対して「お金なら出します」と言ったにもかかわらず「金はいらん」と犯人が答えたこと、身代金誘拐が目的なら抵抗される可能性が少ない7歳の社長長女を誘拐するほうがリスクが少ないのにわざわざ成人男性である江崎を誘拐していることなどが身代金目的の誘拐としては不可解》
 
と書いてあることだ。マジかよ。こんな話初めて知ったぞ。
 
これらの点が不可解なのが怨恨説の根拠ともある。が、しかし弱いだろう。あと、10億が重さ130キロになるって? だろうな。おれが〈楽天コボ〉で売ってる、
 
クラップ・ゲーム・フェノミナン
https://books.rakuten.co.jp/rk/c4c936f145e636b5b3a9d0fee0752ce7/?l-id=item-c-seriesitem
 
これに《一億入りのキャリーバッグは15キロの重さになる》と書いていると以前書いた。憶えてますか。一億円が12、3キロにバッグが2、3キロの計15キロだ。聖徳太子の一万円札は今の諭吉よりちょい大きかった。だから10倍で130キロ。
 
でもって、何より攫ったのが子供でなくて大人の社長。《抵抗される可能性が少ない7歳の社長長女を誘拐するほうがリスクが少ない》とあるが、その他にも凶悪犯なら子供を攫っていきそうだろう。
 
が、NHK制作の『未解決事件File.01 グリコ・森永事件 劇場型犯罪の衝撃』という番組はこの点に何も触れていない。当時に高校生だったおれがニュースで見た憶えもない。
 
おれが忘れっぽいだけか? まあそうかもしれないし、実のところ発生当時は特に関心を持つこともなく『装甲騎兵ボトムズ』に出てくる〈ストライクドッグ〉なんてロボットのプラモを作ってたりして、ニュースを見ても「ふうん」という調子だったと確か思うが、その後にも、《そのとき社長は風呂にふたりの子供と入っていたが、犯人達は》なんて聞いた憶えはない。
 
見たのに憶えてないだけだろうか。そもそも着目する者が滅多にいないのじゃないのか。だからおれが知ることがなかった。おれとしては三十何年も経った今、今回これを書くためにウィキを見て初めて知ったのである。
 
再現ドラマの上川隆也は自分が書いた記事が載った新聞を眺め、
 
   *
 
「よーし。犯人の具体的な要求、ウチがいちばん詳しいで」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
  
と笑う。事件発生が3月18日21時で、脅迫状が届いたのが翌19日深夜1時。18日25時とも言えるな。上川演じるミスグリは事件が起こると例の〈ボックス〉というところに呼ばれて、
 
   *
 
記者E「おう。久しぶりの休みに悪いな」
加藤譲「蔵(ぞう)さん、勘弁してくださいよ。ひと月ぶりやったんですから」
記者E「悪い悪い。(ジリリリリン、と電話の音)おう電話電話」
加藤「ああ、空気悪い」(室内はタバコの煙が充満している)
記者D「やっぱ事件の加藤やな。事件の方が休ませてくれんのや」
加藤「事件に愛されてもうた男て呼んでくれる?」
記者D「(笑)長いな」
加藤「なあ、グリコの社長が拉致されたって、確かなんか」
記者C「ええ。自宅の風呂場からハダカのまんま拉致されたらしいですわ」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
なんてやり取りを仲間と交わす。再現ドラマはそんなようすをまず描く(前回《彼らの長である者が、部下の独断専行を咎めぬ人間だということじゃないのか》と書いたが、あらためて見るに加藤譲がキャップ、つまり長であり、「蔵さん」と呼ぶ人物がサブキャップ。ただし年長なので敬語を使っているらしい)が、しかしこのとき現場には他紙の記者が押し寄せて、
 
   *
 
「どうなってるんですか」
「他の家族は無事なんですか」
「銃は本物やったんですか」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
なんて質問を警察に浴びせていたらしい。記者同士でも、
 
   *
 
「なんか取れたか」
「いや、まだなんも説明が」
「あほ。十三版に間に合わんやないか。間取りや家族の人数確認してこい」
「はい」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
なんて言って取材してるようすが描かれている。ひょっとして読売はこのとき出遅れていて、そこに脅迫状が来たのでその話を取ることができ、結果的にそれだけ詳しくなったんではないのか。
 
見ていてそんな気がしなくもないところである。再現ドラマは東京の本社らしきところに「すぐ記事を送る」と電話で話すようすを描き、翌朝の全国紙にもうどの新聞も一面トップ。その中で、
 
   *
 
加藤「よーし。犯人の具体的な要求、ウチがいちばん詳しいで」
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組タイトル
 
なわけだが、それより家族は縛られただけで全員無事ということの方が大切なんじゃないのか。
 
三人の子と勝久の母親。これらに危害は加えなかったということの方が大切じゃないのか。攫うなら次女か長女が良さようなのにそれをしなかったこと。それをこの番組は全部で3時間半の長さがあるのにひとことも触れない。
 
そしておれはウィキを読んでこんな話は初めて知った。これをどう見るべきだろう。事件を凶悪極まるものとしたい者達が事件を語り、その者達に都合の悪い部分はなかったことにされてる。
 
そう見ることはできないだろうか。が、さて身代金を取りに現れなかった謎については、カネを盗る気がなかった見込みがあると考えていいのはわかるね。それはおれのイタズラ説か、ミスグリ加藤の怨恨説その他なのかはとりあえずよかろう。
 
次だ。『NHKスペシャル 未解決事件File.01 グリコ・森永事件 劇場型犯罪の衝撃』という番組は社長の自力脱出と保護をこの通り、
 
画像:社長誘拐から四日
 
《誘拐から四日》と書いて、ナレーションは「四日目」と言う。四日? 四日目? おれはこれを見て、それが何日かわからなかった。18日に攫われて、19、20、21、22で22日なのかなと思ったが、わからない。発生日時はこの通り、
 
画像:再現映像の事件発生時刻・18日9時30分
 
ちゃんと出して見せているので生還日時もはっきりさせてほしいのだけど、「四日」「四日目」だけなのでこれ見ただけじゃわからないのだ。これではなんだか、
 
アフェリエイト:96時間
 
この映画のように社長の命はあとわずかなのが決まっていて、脱出できねば確実に殺されていた、とでも言いたげな感じ。
 
おれには見てそう感じる。ナレーションは、
 
   *
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之