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カルビとロースはどっちがうまいか、馬場・猪木もし戦わば


 
カルビとロースはどっちがうまいか。馬場・猪木もし戦わば。そしてグリコと森永はどちらのキャラメルがよりおいしいか。
 
興味深い問題である。確かグリ森事件の頃に、ペプシが別の会社のコーラと自社のコーラを一般人に飲み比べさせて「どっちが」とやったCMがあったが、しかしコーラやキャラメルなんてどこのもんでもみな同じだろう。世界は一家、人類はみな兄弟じゃないのか。
 
などと言ったらそこで話が終わってしまう。世の中何が原因で人の恨みを買うかもしれず、こちらが忘れてなかったことにしているものも相手は憶えていることもある。このブログのずいぶんずいぶんずいぶん前に、〈「銀行強盗」成功のための傾向と対策〉なんて話をおれは書いたが憶えてますか。
 
浅田次郎・著『初等ヤクザの犯罪学教室』(幻冬舎アウトロー文庫 1998・単行本1993)という本を紹介したもので、その本にその話は書かれる。銀行強盗は絶対に成功しない犯罪のように一般に思われているところがあるが間違いで、成功例は実は多い。営利誘拐も「必ず捕まる」とよく言われるが、グリ森事件の犯人達は捕まっていない。
 
マスコミの嘘に騙されてはいけない。その場その時の思いつきで適当なことを言うだけで、連中は忘れっぽいのだ。おれもここに書いてきたこと全部憶えてるわけではないが、帝銀事件の話の第二回目でその本を引用したのは憶えている。〈楽天コボ〉でおれが売ってる、
 
銀行強盗のしかた教えます
https://books.rakuten.co.jp/rk/94423311ab9c31ce9d6fe924d0dd760c/?l-id=search-c-item-img-03
 
これもそこからネタをずいぶんいただいてるのだが、あらためて紹介しよう。『初等ヤクザの犯罪学教室』の〈「銀行強盗」成功のための傾向と対策〉と題する章は、
 
画像:初等ヤクザの犯罪学教室76-77ページ
画像:初等ヤクザの犯罪学教室表紙
 
こう始まっている。ご覧の通り、
《犯罪を飯の種にしている常習犯罪者というものは、ふつうの人間に比べてむしろ陽気でノリのいい人種》
と書かれ、余計なところは消したけれどもその者達が留置場の中などで、
《「カルビとロースはどっちがうまいか」「馬場・猪木もし戦わば」》
などという程度の低い話をしている。そして彼らが最も憧れる犯罪が銀行強盗で、一生に一度でいいから手を染めてみたいと思う。ブタ箱では三日に一度は真剣に、
《「銀行強盗」成功のための傾向と対策》
という議題が討議されている、というお話だ。もしこの本を古本屋で見つけたら、迷わずお買い求めなさい。決して損にならないことをおれが保証致しましょう。
 
とにかくこのお話のためになることと言ったら、もう。たとえばおれはもうひとつ書いて出してるブログに、
 
   *
 
だから、やっぱり、誘拐よりも銀行強盗かな。拳銃が一挺あれば簡単にできる。覆面をして店に入れば、警備員がすぐさま君に向かってくるだろう。
 
それをズドンとやればいい。女子行員を脅してもダメだ。カウンターを飛び越えて、奥にいる男子行員のなかでいちばん偉そうなやつに煙を吹いている熱い銃口を押し付けろ。で、
 
「俺に出てってほしかったらカネを出せ。警察が来たらいつまでも俺はここにいることになるぞ。わかるよな」
 
と言う。相手が「わかりました」と言えば、
 
「いいや、わかってない」ズドン!
 
次の男に同じことをやる。そいつが「わかりました」と言えば、
 
「いいや、わかってない」ズドン!
 
そうやってふたり殺せば三人目のやつが、「ヒ――ッ!」と泣いて小便を漏らし、「お金を持ってきます」と叫んで金庫室に走ってくれる。カネを掴んで店を出るまで全部で二分とかからない。
 
もしたまたますぐ近くに警官のひとりやふたりいたとしても大丈夫だ。ズドンとやれば逃げられる。
 
太平洋戦争中、米軍兵士の八割方は、銃剣を手に突っ込んでくる日本兵に対して銃を撃てなかったと言われている。撃たなければ自分が死ぬとわかっている状況なのにだ。ガダルカナルや沖縄や硫黄島でさえそうだったのだから、今の日本の警察で、君に対して銃を抜き撃てる者なんかいるわけがない。
   
ヤマト航海日誌
https://novelist.jp/71614.html
 
こんなことを書いたけれどもこういうのは、
 
画像:初等ヤクザの犯罪学教室84-85ページ
画像:初等ヤクザの犯罪学教室表紙
  
こう書かれる。赤の線で囲ったとこだが、おっしゃる通り。おれもこういうのは勧めません。
 
でもってその後、青の枠で囲った話をしているのだが、これが以前、帝銀事件の二回目でおれが引用したものだ。で、それから、
 
画像:初等ヤクザの犯罪学教室82-83ページ
画像:初等ヤクザの犯罪学教室表紙
 
こんな話をしていたりする。昭和63年と言えば西暦1988年だが、たぶん同じ話と思うのが銀行員が書いた本で1992年に単行本が出たものに、
 
画像:横田濱夫はみ出し銀行マンの乱闘日記174-175ページ
画像:横田濱夫はみ出し銀行マンの乱闘日記表紙
 
こう書かれる。これを読んで「おや」と思った、そのときに、
 
銀行強盗のしかた教えます
https://books.rakuten.co.jp/rk/94423311ab9c31ce9d6fe924d0dd760c/?l-id=search-c-item-img-03
 
この話のアイデアが生まれた。おれがこれを書いたのは2007年のことでずいぶん前になるが、確かその頃コンビニだかの強盗を店員が追いかけ、刺されて死ぬ事件が起きたばかりだった。コンビニなどでは強盗には逆らわずにカネを出し、決して追いかけたりするなという指導がされているはずである。それをその店員は破った。
 
結果死んだ。いちばん悪いのは強盗としても、やってはいけないことをやるから死んだ。そう言われても仕方がない。けれど銀行というところは、その逆を〈当たり前〉としているのか。まあ銀行はそうかもしれんが、しかし包丁突きつけられるのは男じゃなくて女子行員ではないのか。
 
女子行員が刺されたらどうする。殺されなくても、顔に傷をつけられたら? そう思ったとき生まれたのが、
 
銀行強盗のしかた教えます
https://books.rakuten.co.jp/rk/94423311ab9c31ce9d6fe924d0dd760c/?l-id=search-c-item-img-03
 
この小説のアイデアで、書いたのが2007年3月。ちょうど応募の締め切りがあった創元社の新人賞に送ってみたけど一次選考も通らなかった。
 
そのちょい後かな。どこかの税務署の署員がノイローゼになって銀行を襲い、女子行員を羽交い締めにして頸に包丁の刃を押し付けた事件が起きた。警察が呼ばれて取り囲み、「逃げられると思ってるのか」「逃げられるのと思ってるのか」と二時間怒鳴りつけたという。男は観念して包丁を下ろし、「銀行と警察の適切な対応により……」とニュースは報じていた。
 
しかしおれは、「適切な対応ね」と思った。
 
作品名:端数報告3 作家名:島田信之