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のかねえ。戸締り用心、火の用心。一日一善。お父さんお母さんを大切にしよう。月に一度は大掃除。コロナの禍の中にあっても食べ物屋さんがお店の前で売ってる料理は買って食べても大丈夫です。八紘一宇の精神ですと、シンタローの後を受け継ぎ都知事になった小池は言う。適当なことを言ってるだけだ。グリ森事件の犯人は最後の手紙で政治家どもに、
 
   あんたら わすれっぽいな
 
と書いた。
 
かんせんのかくにんしゃがいちにち80にんくらいのときに、このよのおわりみたいなことをいってたのはなんやねん。
 
ひにせんにんをけんさして80にんやから8パーセント。あのころそんなこといっときながら、いまは2447にんてなんやねん。その後さらに検査態勢を強化したと言うのなら、今は一体、日に何万の鼻の穴に綿棒突っ込んどるわけなんや。綿棒なんか安いから、日に十万本つこうても綿棒代だけなら壱萬圓なのか。
 
やろうな。確認された者は、自殺するしかなくなるのに。一体全体何人が、首を吊って死んどるんやろうな。叩き上げの山本は男らしうに死によった。自分が生きていたのでは世間に申し訳ないと、遺して死んでしまいよった。焼身自殺やて。アホやな。他に悪い人間が、たくさんいてはるはずやのに。
 
十万人に突っ込んでも今は〈陽性〉と出る者は日に900、800、700……と減っていってるのんちゃうのんか。十万のうち千人ならば1パーセントやで。900は0.9パーセントやで。800は0.8で、700ならば0.7パー。
 
感染者の割合なんて、実は今はそのくらいになっとったりせんのやろうな、ええ? だから二十万に突っ込めば、日の確認者が1400人になって「倍増した」とテレビで言える。やらなければなりませんと言ってやろうとしてるようだがどこまでやる気や。最後は東京都民全員、1300万を一斉検査し、一万人くらいを見つけて、
 
「やっぱり感染は拡大していた。一万人! 一万ですよ、日に一万! 1月7日の4倍だ! 減ったように見せかけて、4倍に拡大してたわけなのです! コロナというのはこのように狡猾なウイルスだったわけなのですよ。『油断してはいけない』と言っていたのがこれでおわかりになるでしょう!」
 
とでもやろうというわけなのか。それで首を吊るやつが千人出るかもしれないけれど、いくらなんでもそれまでのどこかで、この算数の計算が最初からおかしいことに多くの人が気づくんじゃないのか。
 
〈最初から〉とは志村けんが死んだ日からということだ。1300万人の鼻の穴に綿棒突っ込み、一万人が〈陽性〉ならばその割合は0.07パーセントである。千人のうちの0.7人。〈一日80〉の頃の115分の1。しかし大阪市立大学とか、大阪教育大学とかの学者は最後までこの計算ができないだろう。「感染の大大大大大爆発」だと言う。学者なんて実はいちばんバカな人種で、9割9分までがそうだ。政治家になるとひとり残らず全員だし、マスコミ人種もまた同じ。危機が! 時間が! 早く! 誰かが! 志村けんが死んだ日に〈一日80〉だったのが今は一万! 125倍の増大です! 今度こそ第3波が起こること間違いなしの数字です!
 
画像:加藤譲
 
全員でそう叫ぶだろう。分母を隠して分子だけを見る分数の算数はそうなる。というわけでこの男だが、1984年。日本で起きていたことがちゃんと見えていたのだろうか。
 
画像:時効成立時の加藤譲の署名記事
  
前に見せた事件の時効成立時にこいつが書いた署名記事だが、赤で囲ったようにこれには、
 
    *
 
事件の始まりだけを見ても、謎ばかりだ。なぜ犯人らは警察に通報しないよう社長夫人に強く口止めしなかっ(たのか。)
 
   *
 
とある。番組では続きが読めぬがたぶん「たのか。」と続くのだろう。犯人達はグリコ社長の宅に押し入り、入浴中の勝久氏をハダカのまま連れ去った。数時間後に「警察に報せると殺す」と書いた手紙を寄越したが、その時にはとっくに警察が呼ばれていた。
 
〈ミスター・グリコ 加藤譲〉はこれがどうにも解せないらしい。脅迫状の要求額は十億円プラス金(きん)100キログラム。しかしそれが欲しいなら、どうして夫人に警察へ報せないよう釘を刺さなかったのか。
 
もっともな疑問であるが、しかしおそらくこのポイントは、事件について語る者で重視するのは少ないだろう。おれには答が出せると思うが、詳しくは、
 
ヤマト航海日誌
https://novelist.jp/71614.html
 
これに載せてる『小説:グリコ・森永』に書いてる。犯人達は実はこのときカネを盗る気がなかった。拉致はイタズラでやったことで、目的は、
 
画像:グリコのネオンを見上げる上川
 
このネオン看板を○○にして○○すること。ために攫うのは江崎グリコ社長でなければならなかった。十億円が本当に用意されるとは思っておらず、だから受け取り場所として指定した所にやって来なかった。そして勝久氏が自力で逃げられるようにして姿を消した。
 
それがおれの考えだ。これが当たりならミスグリが「謎ばかり」と書いた事件の始まりの謎が消えることになる。おれの考えではね。詳しくは上のリンクから『小説:グリコ・森永』を探してお読みください。さてしかし、
 
画像:NHKスペシャル『グリコ・森永』番組表
 
この番組は、
 
   *
 
(上川のナレーション)江崎グリコ社長が脱出したとき、正直これで事件も解決すると思うた。せやけど実際は、ここからが事件のほんまの始まりやった。ちょうど同じ頃、大阪でもうひとつ、別の誘拐事件が起こった。わが読売新聞は、そのとき報道についての取り決めを破ったとして、無期限のボックス閉鎖という厳しい制裁を受けることになった。この事件に関しては出だしからツキがなかった。
 
画像:読売ボックス閉鎖
 
と言って大阪府警本部への出入り禁止がされるところが描かれ、ライバル紙・毎日新聞の記者を演じる池内博之に、
 
   *
 
「おー、ええ気味やん」
 
   *
 
と言われるのだが、何をやったんだ? 番組はそれを明らかにしない。もちろん、別の事件での報道でやったことなら直接の関係はないと言えるだろうが、やはり独断専行をやったということじゃないのか。
 
画像:加藤譲
 
こいつが。こいつじゃないとしても、読売・大阪記者隊の誰かが。そして彼らの長である者が、部下の独断専行を咎めぬ人間だということじゃないのか。
 
読売新聞と言えば帝銀事件の遠藤美佐雄も、どうやら「自分は刑事だ」と身を偽って取材をする記者だったフシがある、なんてなことを前に書いたが、このグリ森の再現ドラマは事件発生翌日に、上川演じる加藤譲が新聞各紙をこうして並べて、
 
画像:読売新聞事件発生翌日の一面
 
「よーし。犯人の具体的な要求、ウチがいちばん詳しいで」
 
   *
 
と言って仲間と笑い合うところを描く。そしてボックス閉鎖で池内博之演じる毎日の記者に「おー、ええ気味やん」と言われたときも、
 
   *
 
加藤譲(上川)「ぐっさん、聞こえてんで」
作品名:端数報告3 作家名:島田信之