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端数報告2

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「もし台風が、毎秒50メートル辺に発達した場合、複合した波の高さは最大30メートルに達します。年に二度は起こりうる規模の台風で、この船を呑み込むほどの大波が発生するのです。そしてこの計画案では、これほどの大波に対して、船体に働く剪断力の想定が甘い!」
 
と言って、
 
「(略)最悪の場合、沈没します!」
 
アフェリエイト:アルキメデスの大戦
 
と言う。オー人事オー人事。これを録画し、文に起こして検証すると、彼の言うことは正しいとわかる。
 
貨客船を造る場合は。けれども船は用途に応じた設計をせねばならないものであり、軍艦やイカ釣り漁船を造る場合にこれがナンセンスでリディキュラスなのは素人が見ても明らかだ。
 
 
「大波への想定が甘い」
 
 
と聞いて、おれが思い起こすのが2011年3月11日。東日本大震災で、その福島の原発事故。原発前の堤防の高さは10メートルだった。それ以上の高さの波が来ることはないと想定されていた、と当時にニュースで聞いた。
 
『アルキメデス』と話が違うようでもあるが、〈風速50で高さ30〉というのは遠い沖での話なのだろう。近海では波高が10を超えることはないと考えられていたのだ。
 
〈大和〉は本来、遠い沖に行く船でないと考えられてたはずだ。〈昭和遊撃艦隊〉の旗艦として提唱されたはずだった。〈三笠〉がそうであったように、日本の周りを〈回遊〉していて敵が来たとき迎え討つ。普段は国民に姿を見せて、
「どーだ、この船がある限り、何が来ても大丈夫だゾ」
と言うためにある船だった。
 
だから波が高くなるところへなんか決して行かない。ある程度の時化に耐えられればそれでいい――それが設計者・平賀譲造船中将(こう書くと酒を造る人みたいだな)の考えだったはずなのだが、山崎貴、いやこれからは〈ザキマコ〉と呼ぼう、ザキマコは、その名前を平山と変えて〈大和〉を【秘密兵器・海を越えて異国の街を無差別砲撃するための船】として設計したということにする。
 
で、結末はあの通りだ。いやいや、出来上がったものは〈ホテルやまと〉だろう。豪華客船じゃないか、という話は置くとして、福島。地震の津波は想定を超える高さでやって来た。
 
ために最悪の事態となるのを防げなかったと最初は聞いたが、その後になんだか話が変わったのも皆さんご記憶でしょう。実は外部電源が切れる状況になっても〈最悪〉を防ぐ備えとなるものがあった。正式な名は忘れたが〈ブタの鼻〉と呼ばれるもので、そのスイッチを入れさえすれば事がああなることはなかった。〈最悪〉は回避できたはずだったのだ。
 
なのに、なんと専門家が千人いながら誰もそれを使わなかった。「使おう」と言う者さえいなかった。事が明らかになったときに「なんで」と聞かれて全員が、ゴニョゴニョゴニョゴニョ言い訳にならぬ言い訳をするばかり。
 
2号機以降の炉にはその〈鼻〉というやつが最初から備え付けもされてなかった。1号炉を造った者が「絶対に必要」と言っていたはずなのに。
 
どうやらそのスイッチを入れる者はターミネーター(最終的解決者)なのであるけどしかし人類の救済者でなく悪の化身呼ばわりされることになる雰囲気でもあったようだが、愚かにも程がある。『アルキメデスの大戦』の歩目死男は「何百回何千回に一回に備えるのが設計者の責務」と言った。貨客船を造る場合にそれは正しい。素人でもわかる。
 
そして原発を建てる場合は〈鼻〉を備えるのが設計者の責務だ。常に点検・整備を欠かさずしておくのがそこで働く者の務めだ。素人でもわかる。
 
なのにそんな簡単なことを、何百人何千人と学者がいてひとりでもわかる者がいなかった。
 
もしそのスイッチを入れる者がいたらそいつはターミネーターということにして意味を取り違えた。
 
だからだ、という。ボンクラだ。おれはアマチュアは大嫌いだ。フォン・ブラウンは「月へ行く。人類が来た証拠の旗を立て、石を拾って帰ってくる。ただそのために1兆ドル」とトルーマンに向かって言った。米国民はそれを知り、「ふざけるな」と怒鳴り立てた。「あの男に『〈宇宙へ〉と二度と言わぬ』と誓わすべきだ」とアインシュタインもまた言った。
 
が、それから20年して、ブラウンがそれをやり遂げたときに誰もが讃えた。ボンクラ学者が何万人いたところで用を為さない。ひとりひとりがどれだけ優秀であろうとも関係ない。
 
ひとりの天才がいなきゃ話にならないのだ。結局のところそういうことだ。コロナについての説は入り乱れており、学者の言うこと学者の言うことひとつひとつがまるきり違う。
 
ということは、要するに、誰も正解を出してないわけだ。学者が日本に一万人。世界に百万人もいながら。
 
――と、ちゃんと眼を開けてよく見れば、実はそうだとわかりそうなもんである。これは読書ブログだから、少しは本の話もしようか。たとえば有名なSFに、
 
アフェリエイト:星を継ぐもの
 
というのがある。ボンクラ学者が一万人いて、誰も解けなかった謎に、ひとりの天才が答を出すのだ。
 
「えええええっ!!」
 
と読んだとき驚いたね。誰もあれには驚くでしょう。そういう本だが、『アルキメデスの大戦』の歩目死男はこれと比べてボンクラだ。天才でなく、ただ数学ができるだけの数学バカだ。それはマンガの原作者とザキマコの頭が悪いわけだから、天才になるわけがない。ただ勉強ができるだけで頭が悪い人間を、戦後の言葉で〈インテリゲンチャ〉と言った。
 
「どうかワタシの支持者以外、全部コロナで殺してください! せっかく減った人口です。ワタシとワタシを讃える優秀な人間だけの新しい社会を作らせてください!」
 
とかいうことを叫ぶような人間のことだ。騙されやすく、イカレたことを信じやすく、学者が急にこちらを向いて、
 
「最悪の場合、○○します」
 
と言うとすぐ、
 
「そんなことが起こったら、オー人事だ、オー人事だ!」
 
とうれしそうに叫ぶ。そのとき自分と自分に従う者も死ぬとはまったく考えないから。
 
 
風邪にはビタミンCだ。
 
 
――と、唐突に話が変わるが、誰でも知っているだろう。風邪にはビタミンCだ。ビタミンCと言えばみかんだ。きっと〈スペイン風邪〉のときも、世界の豊かな人々は日本のみかんを食べただろう。風邪にはこれがいい、感染しても発症の率を抑えることができる、と言って。
 
日本のみかんを食っておけば、無症状でいられるのだ。
 
アフェリエイト:ザ・コクピット3
 
日本のみかんが缶詰になり世界で売られていたことは、この本の中の『消滅線雷撃』という話で知ることができるが、風邪にはビタミンC。誰でも知ってるはずだろう。みかんを食っときゃ風邪のウイルスに感染しても、無症状でいることができる。
 
とは限らんが、実際にその率が高くなるのは昔から言われる。先人の知恵だ。風邪にはみかん。だから新型コロナウイルスに対してもみかん。
 
作品名:端数報告2 作家名:島田信之