端数報告2
これは全部遠藤さんの創作なんじゃないかなとさえ
遠藤「(略)警視庁は、真犯人まで突き止めておった」
大槻「えーと、細菌兵器の生体実験を第二次世界大戦の時に行なったといわれる七三一石井部隊の……」
遠藤「諏訪中佐です」
大槻「ボクそこまで読んだ時ね、これは全部遠藤さんの創作なんじゃないかなとさえ思いましたよ」
アフェリエイト:のほほん人間革命
と、オーケンが言った遠藤の本のページが次に見せますこれでございます。まあ御用とお急ぎのない方は見ていってやっておくんなさい。
画像:帝銀事件と平沢貞通氏50-51ページ
画像:帝銀事件と平沢貞通氏表紙
ここがp.50-51.このページそのものは、我らが秘密捜査官・成智英雄が雑誌にこう書いているというだけの理由で、
《このように、犯人の名前まで分っておりながら、》
なんて言ってるというだけのものだが、オーケンは別にこの点だけを指して、「これは全部遠藤さんの創作なんじゃないかなとさえ思いましたよ」と言ってるわけじゃなかろう。ここに至るまでにさんざん、「これは創作なんじゃないか」「これは創作なんじゃないか」と思いながらに読み進め、そしてここまで来たところで、遂にとうとう、この本は全部遠藤の創作じゃないのかと考えたものと思われる。最初に「うん!?」とまず思い始めたのがp.28だから、22ページの間ずっと、「これは創作じゃないのか」と思いっぱなしだったはずだ。
けれども次のp.52-53が、次の章が〈米軍が擁護した満七三一部隊〉となっているのでわかると思うがGHQがその戦犯行為を不問にした話であり、こればっかりは事実だった。で、その次のp.54-55が遠藤美佐雄が藤田二郎からの電話を受ける話となってて、金井喜一の『毒殺 小説・帝銀事件』のようにオーケンもまたそのことの
「意味が漠然と理解でき」
たつもりになってしまう。
画像:毒殺 小説・帝銀事件表紙
デイヴィッド・ピースの『占領都市』のように
「色々なことに説明がつくというものだろう?」
という気になってしまう。
画像:占領都市表紙
GHQの実験なのだ。そればっかりは確かなのだ。遠藤美佐雄が藤田二郎に、
「権威筋からの命令でね。この埋め合わせは他でするよ」
と言われたのだから! これがそういう意味でなくてなんだ!
というふうに思い込んでしまう。実に愚かで短絡的な勘違いもいいとこなのだが。
なのに居木井と八兵衛が、《軽い詐欺事件みたいの》をしたというだけの平沢を捕まえ拷問にかけてしまった! そして検事が調書を取るが、なんとそれがデッチ上げ!
それを弁護士が明らかにするも、検事側は認めない! 科学的に証明されたことなのに!
それがp.66で、オーケンはちょっとゾーッとする。寒気がしたのは寒気がしたわけでなく、遠藤誠ウイルスで脳神経がマヒしたからだが、本人にその自覚はできない。
もうその後は本のページを駆け抜けるだけだ。立ち止まってよくよく見れば全部遠藤の創作だとわかる話に疑いを持つことがない。p.86-87.前回書いた《恥ずかしながら春画うんぬん》も、訂正しよう、「どうなんだろ」とおれは書いたが、オーケンは、あの文章の一字一句を信じて読んだに違いない。
そこまで読んだ時にはもう、完全なラビドリードッグになっていたのだ。そしてp.99で、《五聖閣の占い》を読む。
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その結果、「この中の平沢貞通という者が有力なホシである」と言われ、以来、居木井は、熱心な平沢犯人説になってしまったのである。そして、平沢さんを逮捕してから三十四日後にニセの自白をさせるや、居木井はその「五聖閣」に「明鑑を感謝す」という礼状を出した(森川哲郎氏「獄中一万日」・同「遺書・帝銀事件」・当時の新聞より)。
画像:帝銀事件と平沢貞通氏表紙
こんなことがあっていいのか! オーケンは『元祖高木ブー伝説』のサビのメロディーをBGMに叫ぶのだ。こんなことがあっていいのか!! こんなことがあっていいのか!!!
ねえ。おれも騙されたよ。《礼状》ってのが曲者だった。礼状という書き方だと礼状を出したように読めるから、
「ほんとに礼状出したのか。そんなバカな」
と思ってしまって、これはきっと成智か甲斐が、
「あの居木井ってのはなあ、占い師に見てもらって礼状まで出してたんだぞ!」
とフカシてまわったか、礼状はまあガセだとしても、ほんとに易者に見てもらって東北か北海道かを決めでもしたんだろうかなんて考えちまった。おれとしたことが。
しかしそいつの元の話が《名刺の裏に一筆》と知ったら、1+1の計算みたいに答は決まってるじゃんか。「そんなもんは」と気づけないやつはおかしいよ。
だがオーケンは洗脳された。もうオーケンの顔をしててもオーケンじゃない。遠藤誠ウイルスにDNAを書き替えられた別人であり、何より平沢が犯人とされた最大の根拠、《事件直後に手にしていた出所不明の大金》を知らない。
遠藤誠はこのポイントをまるきり嘘で置き換えている。平沢はカネに困っていなかった。《貞通さんの画は、よく売れた。したがって、その生活もまた楽になった。》ということにされている。
平沢は事件直後に八萬圓を銀行に預けている。それは遠藤も書いているが、本では検事が無根拠に帝銀事件で強奪したカネと決めつけたものとしている。その口座がその八萬を預けるために偽名を使って新規に開いたものなどという事実に触れることはない。
だからオーケンにはわからない。そして《春画で得たカネ》というおとぎ話を真実とされてしまうのだから、もう「創作じゃないのか」と思うことがなくなっているオーケンの正気は戻らない。
いくらなんでも春画一枚が拾萬圓。今の一千万なんて。
それを一年忘れていたのを、ちょうどその日に見つけるなんて。
あるわけねーだろそんなことがと考えるマトモな頭を失くしてしまう。人は洗脳されてしまうと。
あなたの家族の脱洗脳、そして洗脳の予防のために、こんな話はいかがですか。
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というわけで宣伝、いやいや、前置きが長くなったが前回の続きだ。えーと、
画像:未解決事件の戦後史表紙
この本だったね。あらためてスキャンしたのを見せると、
画像:未解決事件の戦後史20-21ページ
こう。宣伝、いや前置きが長くなったから簡単にいくか。
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