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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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青い絆創膏(後編)

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「…仲が良かったかどうか、わからないくらいに、何度かしか会っていないんです…」

私は、あえて同情してもらえなさそうなことから話した。なぜそうしたのかはわからない。津田さんは少し驚いたけど、もう一度神妙な顔に戻って頷いた。

「でも、彼にだけ、本当のことが話せると思いました…私に、とても優しい人でした…私が落ち込んでいることもすぐにわかってくれて、私に逃げ道が必要だとも、思ってくれました…!」

私の手はぶるぶると震え、それを押さえつけるために着ていた服をぎゅっと握りしめた。目の前が滲んでいくと、そこにたかやす君の笑顔が浮かぶ。それを私は失くしたくない。

「でも…でも、彼は自分のことは何も…苦しいとも言わずに…ある日突然、自分からいなくなってしまったんです…!」

津田さんは一言も口を挟まずに、私の話を聴いていた。だから私は、いつの間にかその存在を忘れて、叫んだ。

「どうしてなの?私には分からないけど、悲しむことしか出来ないなんて、ひどい!何も言わないで…!…何も言わないでいっちゃったなんて…!」

わけもわからなくなって、とにかく私はそうわめき散らした後で、わっと泣いてしまった。この時私は、“この涙はきっと枯れない”と知った。






私が落ち着いてから、津田さんはもう一杯りんごジュースを汲んできて、また私と少し話をした。私はまず、津田さんに謝った。

「ごめんなさい…「一緒に死にませんか?」ってメールについてきたのに…私、いろいろあって、ちょっと落ち込んでただけなんです…なんだかよく分からなくなっちゃってるけど、すごく悲しくて、それで逃げたくて…ごめんなさい…」

「大丈夫ですよ。それは普通のことです」

「えっ?」

津田さんの返事は、私が謝ったことに対する返事ではないように思えた。それから津田さんは少し斜めの下、ゴミだらけの畳に目を落として、こう話し出す。

「あなたは今、目まぐるしく変化して、悲しいことばかり起きる中にいます。だから混乱して、自分を守るのに必死なんです。でも…時間は掛かりますが、しっかり休めば、必ず良くなりますよ」

私はそれを聞いて、なんだか「自殺掲示板」のチャットに居た人達が喋っていたことを思い出した。

「そ、そうなんですか…?」

“だって、現実に起きた悲しいことは拭えないのよ。それでどうやって悲しみが消えるって言うのよ…”

なんだか私はそう思って、拗ねてしまいたかった。

「はい。きっと良くなります」

なぜかそう言い切る津田さんに、私は少し薄気味悪さを感じたままだった。でも、次に津田さんが話始めたことで、それはどこかに行ってしまったのだ。


「少し、これは私の話ですが、聴いてください…参考になるかもしれませんし…」


そう言って津田さんは、テーブルの上のりんごジュースをじっと見つめ、ため息を吐いた。





作品名:青い絆創膏(後編) 作家名:桐生甘太郎