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加害者のない事件

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 どうやらこの事件は、表に現れた事実から解明するよりも、鎌倉先生のように深層心理を研究することで、見つかった事実を裏付けることになり、
「点を線で結び付けることができる」
 という理屈に繋がってくる一つの例だったのかも知れない。
 深溝には薬物に関しての罪、瑞穂には障害の罪、安川には殺人未遂と、それぞれに罪の代償があったが、それほど大きな罪でもないので、情状酌量により、執行猶予などがついたりして、実刑ということはなかった。
 鎌倉探偵はそのことに安堵はしていたが、何か煮え切らない気持ちになっていたのは事実であった。
「人間というのは、喉元過ぎれば熱さも忘れますからね」
 と門倉刑事に話したのは、三人の刑が確定してから少ししてのことで、二人はそう言いながらやはりやり切れないと言った表情でため息を吐いたのは、言うまでもないことであった……。

                  (  完  )



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作品名:加害者のない事件 作家名:森本晃次