少年と燃える青年
異形の者たち
木のボートに揺られることおよそ10分、船頭はボートを川岸に寄せた。
「はい、終点です。あそこに見える建物で、裁きを受けてね」
ほの暗いトーンで話す船頭が示す先には、レンガとも石とも分からない材質でできた城のような建物が見えた。
「…分かりました。ありがとうございました」
少年は、「裁き」という言葉を聞いてわずかに心が震えたが、終点まで無事に送ってくれた船頭にお礼を言って、軽くおじぎをした。
船頭が言及した建物まではそう遠くなく、10分足らずでたどり着くことができた。しかし、その門番が何とも異形だった。向かって左に居る者はとげ付きの金棒を持ち、頭部が馬のそれだった。そして向かって右に居る者は三又の矛を持ち、頭部が牛のそれだったのだ。彼らは、門の前に立っている少年に向かって、声をそろえて言った。
「よく来たな亡者よ」
「ひえっ」
門番たちの声の太さにビビった少年は、思わず裏返った声で叫んだ。
(何か知らないけどヤバそう…)
物騒で不気味な生き物を見て、その後に起こることも大体予想がついた。
「何をぼさっとしている。さっさと通れ!」
「え、あ、はい!」
牛頭の門番にせかされ、少年は足早に門を通った。