EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ
エピローグ
いつも恵美莉が休憩しているテーブルが空いていた。今日はそこにポーリーと向かい合わせに座った。ポーリーはいつも通りお腹にリュックを抱えていたが、そのままそれを膝の上に載せて座った。
「さっきの日本刀、びっくりしたよ。それ本物?」
「本物デス」
「えええ? どこで買ったの? それヤバイよ」
ポーリーはリュックのファスナーを開けて、再び脇差を取り出した。全長50センチ程の小型の日本刀の鞘には、赤く立派な装飾が施されており、かなり高価な品のようだった。
「ジョーダンデス。コレハ、オ土産ニ買ッタ、健康グッズナノデス」
「健康グッズ?」
恵美莉には、それのどこが健康グッズなのか見当も付かない。
「本物ダト思ッタラ、コンナデシタ」
ポーリーがその立派な脇差しの鞘を抜くと、刀の先端が孫の手になっていた。
「なによそれ? ハハハハハハハ。めっちゃ、おかしいじゃん」
「メッチャオカシイ? オ店ノ一番人気。クールデ便利デス」
「一番人気?(絶対騙されてる)もう、お土産買ってんの?」
「ハイ」
「来週帰国シマス」
「え!? なんで? まだ11月だよ」
「始メカラ、ソノ予定デス」
「そうか、帰っちゃうのかぁ・・・」
「名残惜シイデスガ、致シ方ゴザラヌ」
「でもどうしてそんなに早く?」
「3ヶ月ダケノ短期留学デシタ。モット日本語勉強シタカッタデス」
「それで一所懸命に日本語使ってたのかぁ」
「エミリーハ、トテモ親切デス。沢山日本語教エテモラッタ。アリガトウ」
「ううん、エラそうにしててゴメン。また来る?」
「モウ来ル時間ハ、アマリナイデショウ。仕事ガアリマス。私ニトッテ仕事ハ、取リ敢エズデス」
「・・・? まじめに仕事しなさいよ」
「真面目ニ仕事シテイマス」
「今、取り敢えずって、言ったでしょ。本気じゃないってことよ」
「エ!? ソウデスカ? 取リ敢エズハ、一番大事ナ意味デハナイデスカ?
「まあ、一番って言うのは当たってるけど、よく考えないで適当って意味よ」
作品名:EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ 作家名:亨利(ヘンリー)