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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ

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第1章 印鑑



「みのりがね、お金借りようとするからさ、困ってんのよ」
 恵美莉が自転車の後部座席で、少し大きめの声で話している。
「みのりって自宅通学じゃないか。家族に借りればいいだろ」
その自転車を運転する春樹も、やや後ろを振り返りながら大きめの声。
「別れた元カレのせいよ」
交通量の多い大通りに出ると、恵美莉は自転車から跳び降りた。春樹はブレーキをかけて、歩道に上り、自転車を押して歩いた。
「新しい男と付き合い始めたんじゃなかったっけ?」
「そうよ。それはそれで楽しんでるみたい」
「それでお金が要るってのか?」
「違うのよ、この前別れた彼氏がセコイ奴でさ、みのりに使ったお金、全部返したら、別れてやってもいいって言うんだって」
「無視しろよそんな奴」
「でしょ。でも、みのりには無理なんだな」
顔がにやける恵美莉。意味深に黙った。
「なんで?」
「ふふふふ、あの子結構、その元カレにいいように奢らせてたから、すんなり行くわけないって分かってんのよ」
「自業自得だな」
「そうなんだけど、あたしに金借りに来んなっての!」
「はははは、親友でしょ。何とかしてやりな」
「無理! あたしだって今日お小遣い下ろしたら、もうないよ」

 二人は大学の手前にある銀行に着いた。春樹は自転車にチェーンロックを掛けているが、恵美莉はそれを待たずにATMコーナーへ入って行った。
ATMの前には数人の客が並んでいる。恵美莉は「ふう」と一回ため息をついて、列の後ろに並んだ。

「・・・ドウイウ意味デスカ? オ金ノカード、作レナイ?」
 あの聞き覚えのある特徴的な声。
(ポーリーね)
恵美莉はそう思って、店舗の奥のフロアーを覗いた。そこには緑色Tシャツ姿で、黒いリュックをお腹側にかけて、銀行員と口論するポーリーがいた。彼はまた眉を寄せて話しているが、銀行員は怒らせないように、柔和な表情で対応している。