EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ
第6章 取り敢えず
「君、取り敢えず、それくらいにしておいたらどうだ!」
このタイミングで桧垣が声をかけた。
「すでに君は不法侵入者だ。守衛を呼ぼうか?」
「なんだと? お前には関係ないだろ!」
「先生ニ、“オ前”ハ失礼、“貴様”ト言エ」
(ポーリーは黙ってて)と恵美莉は思った。
「すでに私は河辺さんから正式に相談を受けて、調書を取っています」
「相談?」
「私は学生相談を受けて、あらゆる手段を用いて、問題解決する義務があります」
「そんなこと知ったことか」
「借金でもないのに、彼女にお金の返済を要求しているそうですね」
「それは二人の間のことだ。貴様には関係ねえだろ!」
「ソウ、貴様ダ・・・」
「調書を警察に提出することも検討しています」
「・・・・・・」
「すでに7万円も巻き上げられていると聞きましたよ。十分犯罪です」
「うるせえ!」
「では、不法侵入に加えて、恐喝容疑で警察を呼びます」
桧垣はこの状況をうまく利用して、みのりの元カレにプレッシャーを与えて言った。
「そんな刀を振り回したら、その方が犯罪じゃねか!」
「私ハ知ッテイマス。日本ノ法律ハ、“取リ敢エズ”デス」
「・・・と、取り敢えずって、お前・・・」
元カレは、一歩後退りした。
「・・・法律ぐらい解ってるだろ・」
「拙者ハ、ソレハ取リ敢エズト言ッテイル」
全く表情を変えず睨み付けるポーリーと小峠の迫力に、元カレは怯んだ。
この時、ポーリーが言う法律とは、不法侵入や恐喝についてだったが、元カレは銃刀法違反のことを指して話していた。それを取り敢えずとしか認識していない、変な外人にビビるのは当然である。さすがの恵美莉も、ポーリーがどういう意図で言っているのか理解できなかった。
作品名:EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ 作家名:亨利(ヘンリー)