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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ

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声をかけたのは小峠だった。彼は竹刀を担いでいる。これらか剣道部の道場へ行く途中なのだろう。
「あ、別に、ちょっと講義に遅刻したから、サボってただけだ」
「恵美ちゃんは?」
「今、バイト」
「終わるの待ってるのか?」
「いや、そうじゃない。ここにいたら、佐々木が来るかなって思ってたんだけど」
「あいつ今日は午後休むって、言ってたぞ」
「そうだったのか。でも学校休んで何してんだろ?」
「さあ、新しい彼女できたんじゃないかな」
「みのりちゃんとか?」
「・・・え? 河辺?」
「うん。彼女も新しい彼氏できたって言ってるそうだよ」
「そ、そうか、知らなかった」
小峠は意外そうに笑った。その後、特に話すこともなかったので、道場に向かおうとすると、
「タノモー!」
と、声をかける者がいた。ポーリーである。
「エミリーノ、ボーイフレンドト、剣道ノ達人ハ、友達デスカ?」
「ああ、ポーリーさん。こんにちは」
小峠が挨拶をした。
「ええ、俺ら知り合いです」
春樹もニッコリ笑って言った。
「達人ハ、日本刀持ッテマスカ?」
「いいえ、本物は持ってませんけど、実家の床の間に模造刀なら」
「モゾート?」
「イミテーションです」
「偽物デスカ。本物デ戦ワナイ?」
「ないない! 本物を持ち出したらみんな逃げますよ」
「ソウカ。ヤッパリ日本刀ハ、スバラシイ」

 そうした会話の最中、小峠はある人物が気になった。小峠は直感的に部外者だと思った。一面ガラス張りの窓から中庭が見えるのだが、その中に大学生とは思えない、工事用のニッカポッカ姿の男がうろちょろしていた。その男がロビーに入って来たのだった。そして、周囲をキョロキョロ不審な動きをしている。