EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ
第5章 日本刀
「川崎さん。今日はもう相談室は閉めるよ。河辺さんの相手と話し合った方がいいので、探しに行きましょう」
恵美莉は学生相談室のドアに『受付終了』の札をかけて鍵をかけた。
みのりのスマホに表示された元カレの現在地は、大学のキャンパス内になっていた。その距離は徐々に近付いて来ている。
「ああ、ダメだ。もうそこにいるぅ~」
「ああ、ホントですねぇ。どうしましょうか」
「恵美莉にスマホ預けて逃げたいですぅ」
「嫌よ、あたし」
「逃げても解決しませんよ」
「でも、返すお金ないし」
「折角、大学まで来てくれたんだから、それをちゃんと話しましょうよ」
桧垣は余裕の表情をしていた。
「先生がいるから大丈夫だって、イザとなったら、あたしもガツンと言ってやるから」
「でも、そんなんで言うこと聞く人じゃないからぁ」
廊下を恵美莉がみのりを先導して歩いている。その後ろには桧垣助教授も付いて来ていた。
「二人だけになったら、向こうの思うツボだから、ここだったら周囲の目もあるし、冷静に話が出来るんじゃない? それに先生もいてくれる時の方が、絶対にいいって」
今にも取り乱しそうなみのりに、言い聞かせるように恵美莉は話した。
春樹が正門の見えるロビーのベンチに一人で座っている。佐々木とみのりが一緒にやってこないか探っていたのだ。スマホに目を落としながら時々、外を確認していた。しかし、もう4時限目が始まって1時間ほど経つが、二人は現れなかった。
(ふう。勘が外れたか。佐々木にLINEしてみようかな?・・・いや、用もないのに変だな)
春樹は4時限目の講義をサボっていた。今更、講堂に行くのも気が引けて、自分の不毛な行いを後悔していろところだった。するとそこへ、
「菅生、何してんだ?」
作品名:EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ 作家名:亨利(ヘンリー)