EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ
「そうか、ここの学生じゃないんだ。それなのに今日来てるの?」
「そうなんです。だから逃げてるんです」
「じゃ話は別だな。なんか怖いね。何してる人?」
「建築業してる人です」
「これまた・・・大工か何か?」
「いいえ、本人は建築家だって言ってました」
「建築家って何? 何歳の人?」
「22歳です」
「22で建築家? ひょっとしてやんちゃなタイプ?」
「かなり」
「どんな車乗ってる?」
「音のうるさいでっかいミニバン」
「無理だな。説得」
「ええ? どうしよう?」
「隠れ続けても、根本的には解決しないですよね。やっぱり新しい人が出来たって、言ってやるしかないな」
「・・・う、・・・うー、・うへー・・・」
「どうしたの? 心配な事とか、もっと困ることとか、何か有るの?」
「・・・実は、お金返したら、別れてもいいって言われてて」
「お金借りてたの? それは返さないとダメでしょ」
「そうじゃないんです。今まで私に使ったお金、全部返さないと別れないって言うんです」
「また身勝手な条件突き付けてくるな。一体いくらくらいなの?」
「20万くらい。付き合って半年だから、半年で返せって。もう7万円払いました」
「それ、川崎さん(恵美莉)とかは知ってる?」
「はい、相談しました」
「彼女はどう言ってた?」
「あぽたん」
「プ・フフッ」
桧垣は恵美莉の性格を考えて、不謹慎にも思わず吹き出してしまった。
「でも、少し助けてくれました。毎週少しずつ、2万円貸してくれてるんで」
「・・・そうか。それじゃ友達関係にキズが付く可能性があるな。何とかしなくちゃ」
作品名:EMIRI 6 取り敢えず気になるアイツ 作家名:亨利(ヘンリー)